お茶の水女子大学
お茶の水女子大学-グローバル教育センター(留学受入)
お茶の水女子大学国際本部グローバル教育センター(留学受入)>第二言語習得を考える特別講演会・発表会

第二言語習得を考える特別講演会・発表会

【プログラム】
 研究発表1 13:00-13:35
   岡田美穂 「JFL環境、JSL環境における中国語を母語とする学習者の存在文のニ格の習得過程」
 研究発表2 13:35-14:10
 庄倩「中国人学習者日中同形類義語の習得 ―即応産出時の難易度とそれに関わる要因について―」
研究発表3 14:20-14:55
 岩下智彦「講義の進行に伴うノートテイキングの質的変化―物語文法の枠組みを用いて―」
研究発表4 14:55-15:30
 柴田アドリアーナ・高橋薫・佐藤朝美・山内祐平
「在日ブラジル人児童を対象としたデジタル日本語教材の開発」
講演会 15:40-17:00 (1時間講演、20分質疑)
 長友和彦「『多言語多文化同時学習支援論』とは…?」

  【研究発表1】
岡田美穂(九州大学比較社会文化学府 大学院生)
要旨:本研究は、「〜に...が3人いる」といったタイプの存在文に出現するデ格の誤用は、範囲限定のデ格との混同に起因することを示すと同時に、この誤用が学習環境の異なる中国語を母語とする日本語学習者に見られるのかを検証したものである。当該存在文は、範囲限定のデ格を伴う文との区別が困難であることから、この混同が引き起こされるものと考えられる。調査は、格助詞選択テストに基づくもので、JFL環境とJSL環境の学習者に対し実施した。 その結果、JFL、JSLの双方において当該存在文の二格と範囲限定のデ格の間には負の相関関係があることが分かった。これは、範囲限定のデ格の正答率が上昇すると存在文等のニ格の誤答率が上昇することを意味する。他方、存在文の二格と動作場所のデ格との間には相関関係がないことが明らかになった。このことは当該存在文に見られるデ格の誤用は、存在文の二格と範囲限定のデ格との区別がつかない習得過程を示すものと思われる。

【研究発表2】
庄 倩(早稲田大学日本語教育研究科外国人研究員・中国南京大学外国語学院 講師)
要旨:日中同形類義語は漢語の中で最も習得しにくく、特に中国人学習者が使用する時に誤用が多いとされる。その原因を探るために、本研究では目標語を使用する際の難易度が母語の転移とその語の難易度(日本語能力試験級数)、学習者日本語習熟度より影響されるとの仮説を立てた。 調査方法として、中国のある大学の日本語学科に在籍する学生35名を対象に、提示された中国語の文の意味を直ちに日本語で伝えさせる即応産出テストを実施した。分析方法としては、20個の同形類義語の難易度を調べ、統計的手法を用いて上記の仮設が成立するかどうかを検証した。 結果としては、中国人学習者が同形類義語を使用する時に母語の意味転移の影響が実在するが、それだけに左右されるものではないことが判った。意味対照タイプの違いと品詞の差異の有無、目標語の難易度、学習者日本語習熟度によって使用難易度が違ってくるとの仮説を証明した。

【研究発表3】
岩下智彦(桜美林大学大学院言語教育研究科修了生) 要旨:本研究は,講義の理解過程とノートテイキングの関係性を明らかにすることを目的とし,講義の進行に伴うノートテイキングの質的変化を分析したものである。調査協力者(NS4名,NNS9名)が講義DVDを視聴した際のノートを分析対象とし, 物語文法(Thorndyke 1977)に基づいて抽出した講義の主要な内容が,どの程度ノートに書かれているか分析した。その結果,以下の3点が明らかになった。1)講義の進展に伴い講義の主要な内容の記述率が減少した。2)講義序盤では,物語文法における上位情報,下位情報を問わず記述されている傾向が示された。一方,講義終盤では上位情報は記述され続けていたのに対し,下位情報の記述は減少した。 3)ノートの記述量が多い群と少ない群に分け分析したところ,この2つの傾向は特に記述量が少ない群に顕著であった。この結果,母語話者,非母語話者を問わず,講義の進展に伴い受講者のノートテイキングの質が変化するということが示唆された。

【研究発表4】
柴田アドリア―ナ(東京大学大学院学際情報学府 文化・人間情報コース 大学院生) 要旨:本研究では、在日ブラジル人児童(幼稚園年長から小学校1年生)向けの、インフォーマルラーニングのデジタル日本語教材を開発した。母語習得においても、幼児期のインフォーマルな学習が、小学校入学後の日本語学習に多大な影響を与えるが、対象児童に対するインフォーマルラーニングの支援は管見では見られない。 支援原理としては、社会的構成主義に基づくFifth Dimensionの理論を採用した。教材は、ブラジルと日本に馴染み深いバイリンガルの教授エージェントとの対話を通して、対象児童が一人でも日本語の学習を進められるようにデザインした。ユーザーテストの結果、対象児童が一人でも日本語の学習を進められることが確認された。 また、パペットパラダイムを用いて、事前・事後テストを実施したところ、事後テストでは、学習した日本語表現を自ら産出したり、正答には至らなくても教材から受けたインプットを理解し、インテイクが促進された様子が伺えた。

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