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人間ドック受診をお勧めします

2019年5月13日更新

人間ドック受診をお勧めします

2012年4月26日
保健管理センター長 産業医 本田善一郎

はじめに

悪性腫瘍をはじめ全ての疾患の予防、早期発見、早期介入が健康寿命を享受する鍵となります。推奨できる方法の一つは定期的に人間ドックを受診することです。しかし、費用(健康保険適用外)、時間的拘束、複雑なオプション選択が心理障壁となり、先延ばしになりがちです。

ところで、悪性腫瘍の発生頻度はどれ位なのでしょうか?

国立がん研究センターがん情報対策センターの提供するがん情報サービス(http://ganjoho.jp/public/statistics/pub/statistics01.html)によると、30才の女性が60才までにがんを発症する確率は9%です。70才まででは、16%と急激に上昇します。男性ではそれぞれ7%、19%で、ほぼ同等の数字です。お茶の水女子大学の教職員600人が全員女性で、30才から59才までの均一な年齢分布を持つと仮定すると、1人が30年を経るのと30 人が1年を過ごすのはほぼ同等ですから、1年間にがんに罹患する人数は計算上、30分の600X0.09=1.8人となります。定年延長で70才まで働けるとすると、3.2人の方が、がんを発症することになります。これらは決して小さい数字ではありません。

本項では、職員の皆様がよりスムーズに人間ドックを受診することができるよう、重要なオプション項目の解説と、お勧めできる組み合わせ例をお示しします。学術的な正確さを目指したものではなく、スピードと利便性を重視していますので、この点、どうかご了承下さい。この情報が受診の一助となることを期待しています。

人間ドックについて

人間ドックは症状が無い段階で疾患を発見し、精密検査へ、それが陽性であれば専門医療機関へと橋渡しをするものです。健康保険適用外ですが、国家公務員共済組合員、その被扶養配偶者はそれぞれ上限30,000円、25,000円の補助を受けることができます。本学でも先日(4月上旬)に人間ドック申し込み受付のアナウンスがされました。

人間ドックの構成

人間ドックは多くの場合、基本コース、各種オプションの二段階構成になっています。基本コースでは大学健康診断の項目(法定項目)の他、上部消化管検査(後述)、腫瘍マーカー、ウイルス肝炎抗原抗体、腹部超音波検査などが含まれます。日本はB型、C型肝炎ウィルスの感染率が高く、一度、ウイルス肝炎抗原抗体検査をしておくことは大切です。

オプションは多彩ですが、それらの内、1)子宮がん検診、2)乳房検診、3)下部消化管内視鏡検査の3つが重要です。基本コースを飛ばしてオプション検査を受けることは通常できない様です。基本コースの料金は、東京の主たる医療機関では、胃検査を含む日帰りドックで5万円から7万円程度です。信頼できる医療機関を選んで受診することをお勧めします。

上部消化管検査

食道、胃、十二指腸を検査します。上部消化管検査はバリウム検査、内視鏡のうち、内視鏡を選択すべきです。40才以上では年一回の胃内視鏡検査が推奨されます。各地方自治体で胃がん検診(40才以上、無料)が行われますが、バリウム検査であり、人間ドックが優れています。たとえば、指揮者の小澤征爾さんは検診により早期食道がんを発見され、治療を受けたと報道されましたが、早期食道がんはバリウム検査では発見できません。胃がんはピロリ菌感染(胃十二指腸潰瘍のある方はピロリ菌検査をお勧めします)、食道がんは喫煙が強力なリスク因子となりますので、除菌、禁煙の必要があります。飲酒も、ことにお酒に弱い方(アルコール脱水素酵素の遺伝子型によります)でリスクを上昇させます。

子宮がん検診

子宮頸がん、体がん、ことに子宮頸がんの早期発見を目的とします。子宮がんは若年者にも多く、女優の原千晶さんも罹患され、啓蒙活動を行っています。検査内容として、細胞診経膣超音波検査の二つが重要です。費用は7千円程度、子宮体がん検査を含め1万円程度の様です。自治体から、隔年、20才以上を対象に無料の子宮頸がん検診が提供されます。超音波検査が入っていませんが、費用の点からこちらを選択する方法もあります。子宮頸がんは性交渉で感染するヒトパピローマウイルス(HPV)の持続感染が原因となります。性交渉のある女性の80%に感染歴があるといわれますので、感染自体はやむを得ないことです。現在若年者を対象にワクチン接種が推奨され、性交渉前の感染予防が行われているのはご存じの通りです。自治体の検診対象が、20才より、と低年齢であるのも、性的活動が活発な低年齢に子宮がん発症が増えているためです。検査は2年に1度程度が適当です。

乳房検診

乳房検診では、視診触診乳房X線検査(マンモグラフィー)あるいは超音波検査が重要です。マンモグラフィーと超音波検査の両方を施行する施設もあり、検出感度が上がる可能性があります。費用は両方を施行する施設で1万円程度の様です。自治体から、隔年、40才以上の女性を対象に、視診触診、マンモグラフィーが無料で提供されており、費用の点からこちらを利用するのも良いと思います。マンモグラフィーによる被爆は、ことに40才以上では、問題にならない程度です。乳がん、卵巣がんには一定の遺伝性があり、血縁の親族にこれらのがん発症がある方は、より注意深く検診を受けることが望まれます。

大腸がん検診

ジャーナリストの鳥越俊太郎さんは下血から大腸がんと診断されましたが、肺転移を適切にコントロールされ活動を続けています。検診項目では、便潜血検査(大学健診にオプションで含まれます)、下部内視鏡検査が重要です。40才以上の方は便潜血検査を毎年施行すべきですし、便潜血陰性でも、一度、下部内視鏡検査を受けられたら良いと思います。下部内視鏡検査は、初年度に異常がなければ毎年行う必要はなく、3年程度間をおいて施行して良いとする意見が多いようです。費用は2万円程度の様です。大腸がんには一定の遺伝的傾向があり、血縁に大腸がんの集積がある方はより注意が必要です。また、飲酒、ことにお酒に弱い方の飲酒、高脂肪食などが発症リスクとなります。

検診の組み立て

組み立ての一例を示します。(あくまで私見であることを申し添えます。)

  • 女性(40才以上)の場合
    • #上部消化管内視鏡を含む基本検査(5万円〜)、理想的には毎年の上部消化管内視鏡
    • #子宮がん検診(1万円)、2年に1回程度。自治体の検診でも可(自治体による子宮がんの検診は20才から行われています。積極的に利用してください。)
    • #乳房検診(1万円)、2年に1回程度。自治体の検診でも可。
    • #大腸がん検診(2万円)、3−4年に一度程度。
  • 男性(40才以上)の場合
    • #上部消化管内視鏡を含む基本検査(5万円〜)、理想的には毎年の上部消化管内視鏡(殊に喫煙、飲酒者は毎年検査。禁煙が必要です。)
    • #乳房検診(1万円)、2年に1回程度。自治体の検診でも可。
    • #大腸がん検診(2万円)、3−4年に一度程度。

遺伝的リスクのある方はさらに注意が必要です。

本項では肺がんに触れていません。肺がん検診は胸部Xp、喀痰細胞診、胸部CT(ヘリカルCT)によりますが、胸部Xpのみでは肺がん死亡を減らせないことが分かっています。もちろん、結核等の診断には極めて有用ですので、年1回の胸部Xpは必要です。胸部Xpと細胞診とを組み合わせることで、診断率を上げることができる可能性がありますが、上記の諸検査ほど安定したものではありません。CTはやや被爆量が多く、一次検診として毎年施行することは適当ではありません。ご存じのように、喫煙が肺ガンの強い発症リスクとなりますので、たばこを喫われる方は早急に禁煙指導を受けて下さい。保健管理センターから専門外来への紹介もできます。

おわりに

本記載は、昨年、本学教職員の方が続けて悪性腫瘍に倒れられたことから、急遽掲載したものです。人間ドックの申し込みアナウンスと期を一にして注意喚起を行うため、正確さは有る程度犠牲にして、スピードと解りやすさを重視しました。この点、どうかご了承下さい。

本記載は、すでに症状のある方、検査値異常の有る方、診断が明らかな方には当てはまりません。あくまで、一次検診(症状、所見のない、あるいは明らかでない方)についての記載です。症状等がある方は適切な専門医療機関での診断治療が必要です。保健センターでは、東大病院をはじめとして信頼できる医療機関への紹介を行っていますので、どうぞご利用下さい。

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