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ヒトパピローマウイルスワクチン接種

2013年3月20日更新

2013年3月18日 ヒトパピローマウイルスワクチン接種の現状

ヒトパピローマウイルス(HPV)が子宮頚がん最大のリスクであり、子宮頚がんのほとんどがHPV感染に起因することには十分な科学的な根拠があります。HPV は100種を超える遺伝子型に分類され、これらのうち10数種が子宮頚がんからDNAが検出されるハイリスク型であり、ことにHPV16、HPV18の二種類が海外では70%程度の子宮頚がんに関わることが分かって来ました。日本ではHPV16、HPV18の検出頻度はこれよりもやや低い可能性があります。日本で認可されているワクチン(スミスクライン・ビーチャムの二価ワクチン、MSDの4価ワクチン)はいずれもハイリスク型のうちHPV16、HPV18のみをカバーしており、他の型に対する交差免疫誘導性は保証されていません。ワクチンは初回接種、2回目,3回目のブースター接種の計3回行われます。ワクチンは組み換えタンパク質を原料としており、生ワクチンでも、不活化ワクチンでもないので、それ自身による感染性はなく他のワクチンとの競合性(接種間隔を長くとる必要があるか)も少ないワクチンと言って良いでしょう。しかし、最近の報道では全身の疼痛、筋力低下、一過性の失神などの副反応が報告されており、医療機関では一定の注意が払われています。(注意:2013年6月14日、厚生労働省は、全身の慢性疼痛などワクチンの重い副作用などを重視した検討部会の報告を受け積極的に接種を呼びかけることを一次中止するよう自治体、学校に求めるという暫定的な措置をとることを決めました。今後の推移を見守る必要があります。)

日本では若年女性(39才以下)の子宮頚がん発症率がこの10年ほどで急激に上昇しており、これは主として性交渉の低年齢化のためと考えられています。このためにHPVワクチンの接種の必要性が公的に考慮され、2010年から数箇所の自治体が予防接種の公的補助を開始し、翌年の2011年からは厚生労働省ワクチン接種緊急促進事業の一環としてHPVワクチン接種の補助が市区町村に行われ多くの自治体で費用助成が受けられるようになりました。2011年の厚生労働省予防接種部会によってHPVワクチンは、B型肝炎、ヒトヘモフィルスインフルエンザB(HIB 髄膜炎起因菌)、小児用肺炎球菌(髄膜炎、肺炎起因菌)、水痘(水疱瘡)、流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)のワクチンとともに、任意接種から定期予防接種(第一類疾病)に移行する事になり、近い将来に定期接種がなされるはずです。現状では任意接種であり、本人保護者の意志により医師の判断のもとに行われることになります。(注意:2013年度からHPVワクチンは定期接種に移行しましたが、初回接種対象は小学校6年生から高校1年生相当の女子であり、大学生は任意接種であることに変わりはありません。)

現在(2012年3月18日)、自治体のHPVワクチン接種に対する公的補助には年齢制限があり、2012年度では初回接種は中学1年生から高校1年生まで(東京都中野区の例)など、ブースター接種は高校2年から大学1年(同様)など、となっています。これは、ワクチンの有効性を十分に発揮するには初回の性交渉を行う前に接種を行う必要があるためです。したがって、大学生で初回接種を希望する場合は公的補助を受けられないことになります。現在の大学生のHPVワクチン接種率は極めて低い(推定では10%未満)と考えられますので、この世代は、将来の子宮頚がん発症を防ぐことができない、端境期の年齢層になることが懸念されます。

以上のことから、大学生を対象とするHPVワクチン接種は、費用は自己負担とはなりますが、十分に推奨されます。(注意:2013年6月14日、厚労省は積極的にワクチン接種を呼びかけない、という暫定的な措置をとっています。今後の情報を注視する必要があります。)しかし、すでに性交渉よってHPV感染が生じている場合はワクチン接種の頚がん予防効果は極めて限られたものになりますので、接種の決定に関しては、個別に医学的な判断が望まれるかもしれません。これらは接種する専門医療機関で情報提供がなされると思います。また、この点が、コストベネフィットの観点から、全ての大学生に対して一律に接種を勧奨することをややためらう理由でもあります。

さらに、HPV感染はHIV感染、B型C型肝炎感染を含めた性感染症の一環として考えることが重要であり、例えワクチンを受けたとしても、これまで通り、多数の異性との性交渉、感染リスクが予想される相手との性交渉、外傷を招く危険な行為は厳に禁止する必要があります。 HPVワクチンを受けたという心理的バイアスによって却って性交渉の放縦化、あるいは子宮頸がん検診受診動機の低下が生ずると(子宮頸がん健診の受診率は、現在でも20%程度と他の先進国に比して際立って低い状況です)、HPVワクチンによる子宮頚がん抑制効果自体が大幅に低下するかもしれません。ワクチンはHPV16、HPV18のみを対象としたものであり、他の型による感染を防ぐものではないことを常に認識する必要があります。これらの点は健康管理者と学生が互いに教育、認識しあう必要があり、実際、HPVワクチンの有効性は10年、20年後以降に始めて検証できるものですから、日本でワクチン接種を推進する方針が決定した現在では、ワクチンの有効性を高めるために周辺状況を整えていくことが極めて重要です。

本学では入学時のオリエンテーションで性感染症にたいする強い注意喚起を行なっています。HPVワクチン接種に関する個別の問い合わせは2012年度10件弱程度あり、専門医療機関に紹介、受診としています。子宮頸がんを総合的に知り、ワクチンの意義を認識してもらうために、保健管理センター入り口に啓蒙的なパンフレットを準備しており、自由に持ち帰ることができます。これからの数年間は、公的補助による接種が普及し定期接種に移行するまでの端境期となりますので、さらに積極的な接種勧奨をする必要があるかもしれません。

お茶の水女子大学

保健管理センター

本田善一郎

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