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女性科学者が輝く時代へ − 猿橋賞を受けて −

2017年5月17日更新

溝口紀子
溝口 紀子さん
東京学芸大学
教育学部自然科学系准教授
1985年お茶の水女子大学理学部数学科卒業後、理学研究科に進学し、理学修士を取得。その後、東京工業大学大学院に進み、1900年理学博士。日本学術振興会特別研究員を経て、1993年東京学芸大学講師、1995年同助教授、2007年から現職。

自然科学分野で優れた業績を挙げた女性研究者に光を当て、その活動を奨励する「猿橋賞」。昨年(第31回)、本学理学部卒の溝口紀子さん(東京学芸大学准教授)が数学で4人目となる受賞の栄誉に輝いた。受賞理由は、微分方程式の解が急激に無限大になる「爆発」と呼ばれる現象後、状態が変化する「不完全爆発」を解明した功績による。お茶大理学部からは過去4名が受賞している。

ケセラセラな学生時代

「稀に見る数学的センスと強靭な計算力の持ち主」と研究仲間から畏怖される溝口さんだが、お会いしてみると、率直で気さくな数学者だ。「暗記モノや実験が嫌い」で、残ったのが数学だった。「数学は論理的に証明されて正しいか正しくないか、きっぱりしているところが好き」という。福岡県糸島市からお茶大理学部へ進学。慣れない東京の寮生活でホームシックにかかっているのではないかという家族の心配をよそに、「修学旅行のように楽しい日々」を過ごす。そのまま大学院に進んだのも、就職したくなかったからで、「特に研究者になりたい訳ではなかった」という。若者特有の漠とした不安はあるものの、親の仕送りを受けながら好きな研究を続け、余暇はスキーやテニスに興じるという「モラトリアム」時代を過ごしながら、「いざとなればお嫁にいけばよい」と思っていた。博士号を東工大で取得後、2年のポスドク期間を経て東京学芸大に職を得た。そんな溝口さんに研究人生最大の転機が訪れる。

偶然をチャンスに変える

科学者は時として全く偶然に、目に見えない力で引き寄せられるようにして、新しい研究テーマに遭遇することがあるという。溝口さんの場合は、研究会から帰国する機中でばったり会った顔見知りの先生が、「暇つぶしに」説明してくれた数学の問題がきっかけだった。自分の研究とは違う分野だったが興味を抱き、二人の共同研究が始まる。4年後、今度は単独で、関連領域で殆ど手付かずだったテーマに踏み込み、新しい手法を使って初の証明に成功。その成果が今回の受賞につながった。研究を始めた当初は文献も殆どなく、「ゼロからのスタートでアイディアだけが勝負」だったと振り返る。しかし、ここから溝口さんの真骨頂が発揮される。ハンディを逆手に、「ブルドーザーのようなパワーと集中力(研究仲間評)」をもって研究を続ける。幸い、数学は一人でも出来る学問で、しかも競争相手もいなかった。「理系は一番でも二番でもダメ。誰も考え付かないことを思いつく、常に新しいものにトライする」姿勢が大事だと語る。そうして得た溝口さんの研究業績は、その独創性で海外の学会でも高く評価されている。

ハンディと好奇心は研究生活のバネ

大学時代、テニスサークルの活動を通して仲間との絆の大切さを学んだ。最初の職場では、帰国子女たちに混じって慣れない英語漬けの環境のなか、職場内実地訓練(OJT)で、やったこともない仕事をいきなり割り振られてうろたえた。同期5人で互いに助け合いながらサバイバルし、成長した。その頃の同僚たちとは、今でもよく会う。「仕事をすることは、社会への貢献でもあると同時に、人生の大切な出会いを創ること」と、菅さんは言う。好きな言葉は「一期一会」だ。医者になって人を助けたいという夢は果たせなかったが、「人の育成」という天職に出会った。成長の機会を求めてキャリアを自分で切り拓きながら、一人ひとりとの出会いがいろいろなところで輪のように繋がっていると実感している。「優秀な女性はどこの会社でも欲しい。お茶大生なら、期待に応えられる筈。社会の状況にとらわれず自分のやりたいことを見つけ、それが実現できそうな企業に飛び込んで欲しい。何をやりたいのか、その思いをうまく伝えられれば、応募者のなかできらりと光る」とは、採用の現場で働く菅さんから、お茶大生へのアドバイスだ。
文責:坪田秀子(学長特命補佐)

わたしのオフタイム

幼い頃、母親が毎月のように展覧会に連れて行ってくれた影響で、絵に親しむように。外国に行くと美術館巡りをするのが無上の楽しみ。好きな作家はモジリアニ。リタイヤーしたら油絵を描いて過ごすのが夢だ。息抜きの読書は軽いミステリー小説で。

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