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ワークライフミックス ~「子連れ出勤」という働き方

2017年5月17日更新

光畑由佳
光畑 由佳さん
モーハウス代表 1987年 お茶の水女子大学 被服学科卒業
1987年 (株)パルコ入社
1992年 (株)パルコ退社 建築誌の編集に携わる
1997年 モーハウス設立
http://www.mo-house.net

著書に『働くママが日本を救う!~子連れ出勤という就業スタイル』

東日本大震災による節電の影響で、日本人の働き方が大きく変わろうとしている。これを契機に、多様な働き方を模索する機運が高まってきている。授乳服メーカー「モーハウス」代表、光畑由佳さんは、「子連れ出勤」という就業スタイルを自社で実践し、「ワークライフミックス」という、古くて新しい働き方の提唱者として、いま、話題の人だ。

モーハウスを起ち上げる

 倉敷出身の光畑さんが、お茶大被服学科に進んだのは、高校の家庭科の先生の影響が大きい。地方の名門女子大を卒業した先生は、凛として知的な存在だった。大学では、本人曰く「大人しくて地味な学生」だった光畑さんは、卒業後、株式会社パルコで念願の美術企画の仕事に就き、キャリアのスタートを切る。その後、建築に興味を持ち、建築書の編集者に転職。結婚を機につくば市に移住してからは、夫の建築会社の事務を手伝うかたわら、契約で書籍の編集も続け、2 人の子どもの育児に励んでいた。1997 年の夏、ある出来事が起こる。3 歳の長女と、生後1ヶ月の次女を連れて外出の車中で、お腹をすかせた次女が大声で泣き出した。以前授乳を我慢して母乳が出なくなった辛い経験がよみがえり、周囲の冷たい視線を浴びながらも、思い切って胸をはだけて授乳をした。普通の女性だったら、これに懲りて子連れの外出を控えたかもしれない。光畑さんは違った。「母乳育児は自然なことなのに、産後のお母さんは外出もままならないのか」。この閉ざされた不自由な思いが、光畑さんに「授乳服」を開発する決心をさせる。決心すると速い。パルコや編集の仕事で培った企画力や人脈を駆使して、翌年、「モーハウス」ブランドを起ち上げた。わずか5000 円出資の「ゆるい」起業だった。元々、実家は倉敷で食器の小売店を営んでいたこともあり、小さな商店や会社は身近な存在だった。「小さく働く」は、ミツハタ流儀だ。

「子連れ出勤」という試み

しかし、試行錯誤を繰り返して開発した授乳服は全くと言ってよいほど売れなかった。「一時だから我慢」「外出しなければ必要のない贅沢品」といった声が聞こえてきた。光畑さんは、お母さんたちの心のバリアーを解くために、オープンハウス、ワークショップ、授乳ショーなど、さまざまな意識啓発活動を展開する。仲間は、仕事を始めたときに手伝ってくれたお母さんたちだ。会社組織にしたときに、「子連れ出勤」でスタッフになってもらった。子連れ出勤というと、職場の託児所に子供を預けて働くケースを思い浮かべるが、モーハウスでは、赤ちゃんを隔離せず、お母さんと赤ちゃんはセットで働くのが基本。いわば、家庭に子どもがいるのと同じ状態を、会社に持ってきているのだ。ワークとライフを無理に分けず、一緒にして自然体で働くスタイル、「ワークライフミックス」だ。今まで10 年間で、150 人の母親が、ワークシェアをしながら働いた。現在、モーハウスでは、3 カ所で子連れ出勤を実施している。つくば市の本社と、青山のショップ、つくば市にあるショッピングハウス内の売り場だ。授乳服の販売も、子連れ出勤の話題性と共に順調に伸びている。

社会、人とのつながりを求めて

「売れない授乳服を作り続けたのは、産後のライフスタイルを変えたかったから」と光畑さんは言う。授乳服に込めたのは、「子どもと一緒にいたい」という思いと、「外に出て、社会と繋がっていたい」という願いは両立できるという、母親へのメッセージだ。「二兎を追うものは三兎を得る」というのが信条だ。「欲張るのは良いこと。自分も、仕事と生活を追っていくうちに、多くのつながりができ、思いがけない展開が拓けた」と光畑さんは言う。そして、いたるところで支えてくれたのが、お茶大ネットワークだ。「素晴らしい先輩たちの歩みが教えてくれたことは大きい。お茶大に入っていなければ、今の私はない」と振り返る光畑さんだが、しなやかで自由に人生を切り開く光畑さんの生き方は、今年、初夏の午後、「お茶の水女子大学論」を受講した満座の後輩たちを魅了していた。
文責:坪田秀子(学長特命補佐)

わたしのオフタイム

3児の母であり、モーハウスの活動に加えて、講演や取材の依頼が引きも切らない。講演は年に50回、取材も週に数本と多忙な毎日だ。都の研究所と共同で、ユニバーサル発想の下着の開発にも取り組んでいる。週末は、マッサージ、指圧、足揉みなど、人の手を借りてリラックスするのが楽しみ。

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