「食をめぐる環境論」
植物バイオテクノロジーによる新規作物(食品)

独立行政法人 農業生物資源研究所 圃場見学
平成23年9月2日


 「食をめぐる環境論」の田中教授の食品の遺伝子組み換え技術に関する授業の一環として、遺伝子組み換え食品の開発現場の実際を知るために、農業生物資源研究所の圃場見学を実施した。

【見学内容】 1)閉鎖系温室 2)隔離圃場 3)展示圃場
 

1)閉鎖系温室
 安全性評価のための施設で、窓が完全に閉め切られ、湿度は空調で制御された温室となっている。ここでまず環境安全性が確認された後、非閉鎖系温室、隔離圃場へと移して、安全性が確認される。


2)隔離圃場
 周囲がフェンスで囲まれた開放系の圃場。周囲への影響を調べるために、スギ花粉症緩和イネが栽培されていた。ネットが張り巡らされ、外部侵入者を感知する赤外線検知器などが設置されていた。

 「スギ花粉症治療イネについて」
 スギ花粉症治療イネは、イネに医薬品の機能を付加した農作物で、環境安全性の確認のために隔離圃場にて栽培されていた。スギ花粉症治療イネは、スギ花粉のアレルギー原因のたんぱく質の一部が米の中にできるように遺伝子組み換えられたもので、この米を一定期間食べ続けることにより、減感作療法と同じような効果があると期待されている。すでに、マウスではその効果が認められている。また、米は日本の農業の根幹をなす作物であり、日常的に摂取可能なところから、農林水産省では特に力を入れて開発を進めている。見学した品種はコシヒカリで、見た目は普通のイネと全く変わらなかった。


3)展示圃場
 展示圃場では、遺伝子組み換え作物と非遺伝子組み換え作物を比較栽培しており、その効果を見学者が実際に目で確認することによって遺伝子組み換え作物への理解を深めることができる。展示圃場は、研究所内で栽培されている試験ダイズや近隣農家への影響を避けるために、試験ダイズから約10m、農家の畑からは約550m離れた場所に設置されている。

「除草剤耐性ダイズについて」
 除草剤「ラウンドアップ」耐性をもたせた遺伝子組み換えダイズと非遺伝子組み換えダイズの比較栽培の様子を見学した。播種時期に、遺伝子組み換えダイズと非組み換えダイズに同じようにラウンドアップを使用したところ、遺伝子組み換えダイズでは、ラウンドアップ使用後もダイズは枯れずに元気に生育している。一方の非遺伝子組み換えダイズでは枯れてしまい生育しない。慣行除草でも、ある程度の除草はできダイズは生育しているが、遺伝子組み換えダイズを使用すると、雑草防除に最も効果のある播種時期にラウンドアップを使用することができ、その後の除草剤の散布回数を減らすことができる。遺伝子組み換えダイズにより、労働力とコストが軽減される一方で、生産性の向上がはかれるということが分かった。無除草では、どれがダイズかわからないくらいに、雑草が生い茂っていた。


「害虫抵抗性トウモロコシについて」
 トウモロコシの害虫「アワノメイガ」に効果のある殺虫成分をトウモロコシの体内でつくるように遺伝子組み換えされたトウモロコシと非遺伝子組み換えトウモロコシの比較栽培の様子を見学した。遺伝子組み換えトウモロコシの導入により、害虫被害はほとんど抑えられていた。ダイズ同様、遺伝子組み換えにより、労働力・コストの軽減、生産性の向上につながるということがわかった。