今回の実習では、酪農および園芸分野の様々な学習と貴重な体験を通して、「知識」の集積はもちろんのこと、「食」という分野の幅広さや奥深さ、五感を使って学習することの効果について改めて実感できたことと思います。

宇都宮大学農学部の居城幸夫先生、長尾慶和先生、実習にご協力くださった学生・大学院生の皆さま、ありがとうございました。
まず牛の生殖科学の講義を受け、体外受精による不妊治療などについて学習しました。その後、実験室に移動し、実際に牛の卵巣から卵子を取り出し、顕微鏡で観察を行いました。また、実際の人工受精に使用する精子の動きも観察しました。
園芸の概念、植物の分類、収穫の判定など、園芸の概論を学んだ後、実際に圃場へ出かけ、栽培作物を見学し、ナシの収穫を行いました。収穫実習では、収穫の方法や長持ちする保存方法など、実践的なお話をお聞きしました。圃場では甘味のある「幸水」と酸味のある「豊水」の2種が栽培されており、各自自宅で味の比較を行えるよう持ち帰らせていただきました。
6時30分の朝食から、一日の活動がスタート。2日目もたくさんの講義と実習、実験など多くの経験をし、大学に戻ってきたのは、夜の20時。濃密な2日間でした。
初産の牛の分娩介助をしました。ホルスタインの体は品種改良によって大きくされているため、初産の牛には子牛の大きさが負担になります。そこで、ホルスタインよりも体の小さい和牛と掛け合わせ、生まれる子牛の体を小さくするという工夫がなされていました。消毒を施された分娩室では、陣痛が始まった母牛が横たわっていたました。先生のご指示のもと、子牛が産道を通る角度に合わせ、参加学生が力を合わせて子牛の足を引っ張り、無事出産させることができました。しかし、母牛が羊水をなめてしまうと子牛への愛着が芽生えてしまうことから、産後すぐに子牛を母牛から引き離して別室に移動し、学生がわらを使って子牛の羊水を抜き取る作業を行いました。子牛にはその後ヒトと同様に、健康的な成長のため、栄養素と抗体が多く含まれる初乳を与えます。
お茶大から3名(食物2名、物理1名)、宇大から4名(酪農2名、園芸2名)の学生がそれぞれ自分の研究テーマについて発表し、意見交換を行いました。同じ食についての研究でも、検討方法や切り口、視点が異なり、お互いによい刺激になったようです。
乳牛の飼育の他に、ヒツジの毛刈りも体験しました。一体のヒツジを寝かせ、順番に学生がバリカンで毛を刈っていきます。体重の10%をも占める厚みのある毛を刈り一回り小さくなると、同じヒツジであっても、柵内の他のヒツジとの上下関係は崩れて弱い立場になるそうです。
牛の給餌の後、搾乳の時間です。一人一体ずつ搾乳作業を行いました。牛乳の品質保持と牛の乳腺炎防止のためにしっかりと衛生管理を行い、手で絞って乳の状態を確認した後、搾乳機をとりつけます。搾乳を終えると、自動的に機械が乳首から離れる仕組みになっており、搾乳された容量も計測されます。
まず、放牧されている柵内に入り、牛を身近に感じる体験から始めました。宇都宮大学の学生さんの説明を受けながら、直接牛に触れ、観察しました。
続いて、夕方の給餌体験です。各牛の体調や成長に合わせた配合が決められています。その配合に合わせて、給餌の準備を行いました。
酪農概論では、人と家畜との関係、家畜の命の役割について考えるお話がありました。午後の飼育実習に備え、乳牛と和牛の違い、乳牛の一生、雌牛と雄牛でも生き方が異なることなど、酪農の基本的な考え方を学びました。また、ヒツジの科学の時間には、再生医療への応用的発展として、ヒツジ胎子内でヒトiPS細胞を育てる研究など、細胞レベルに及ぶ科学的な講義を受けました。
模擬顕微受精をする様子
採取した卵子を観察する様子
ヒツジの毛刈りの様子
搾乳の様子
餌の配合をする様子
放牧中の牛の群れの中へ
2)園芸概論・ナシの収穫実習
1)乳牛の分娩介助と新生子管理実習
2日目:9月4日(火)
1日目:9月3日(月)
1)酪農概論・ヒツジの科学
830分に大学に集合し、貸切バスで宇都宮大学まで移動です。到着後、先生方のご挨拶、施設等のオリエンテーションがあり、講義、実習、学生交流会と盛りだくさんの一日を過ごしました。

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ナシ園ついて説明される
居城先生
新生子に初乳を与える様子
3)牛の生殖科学(講義・実験)
酪農概論、ヒツジの科学を講義される長尾先生
3)学生交流会
2)乳牛・ヒツジ飼養管理実習(乳牛の給餌・搾乳・ヒツジの毛刈り等)
宇都宮大学農学部附属農場において、1泊2日の食育フィールド実習に参加しました。食と農のつながりについて、また農学から医学まで多岐にわたる分野の実践や研究動向について学びました。
                                   

「エビデンス食教育論」食育フィールド実習
 居城 幸夫先生(宇都宮大学農学部教授・農場長)
 長尾 慶和先生(宇都宮大学農学部教授)
 平成24年9月3日(月)~4日(火)宇都宮大学農学部附属農場