「食のサイエンス」は、様々な実験や実習を通じ、高度な食育に不可欠な、食情報におけるエビデンスの重要性への認識を深めることを目的とした科目です。よりよい食育を「行う」ためには、食育を「受ける」側としての体験も重要なものと言えるでしょう。今年度も、東京ガス(株)「Studio +G GINZA」にて、同社の食育講座を受講させていただきました。

Ⅰ.東京ガスの食育活動
 東京ガスの食育は、「環境に配慮した食の自立」と「五感の育成」という2つの柱を中心に据えています。「環境に配慮した食の自立」としては、ガスを上手に使って調理し、無駄のないように食べることを重視します。そして、食生活をより豊かなものにするために不可欠なのが、味わいや食べながら感じたことを表現できるための「五感の育成」です。
この「五感の育成」の方法として、東京ガスではフランスの味覚教育の創始者であるジャック・ピュイゼ氏が提唱する「ピュイゼ・メソッド」を取り入れています。これは、味わうことや調理を通じて味覚とその他の感覚を活用し、さらに感じたことを的確に他者に伝えられるように言葉で表現することを重視します。
 例えば今回体験させていただいた感覚のレッスンのひとつは、綿棒につけたある香りをかいで、何の香りだと思ったかを表現し、皆で共有する、というものでした。全員同じ香りをかいだものの、出された回答は「バニラエッセンス」「杏仁豆腐」といったものから、「初めて母とつくったお菓子」という個人的な思いを含んだもの、さらに「耳鼻科の薬品」というものまで様々でした。どんな答えが出てくるかは、性別や出身地といった属性や経験によってさらに異なってくるそうです。同じ香りでもその解釈は人それぞれ――したがってこのレッスンは、表現する力を育てるだけでなく、自分と他者との違いを気づかせ、理解を促すというコミュニケーション能力の育成にもつながるものとして注目されています。


洗練された雰囲気のスタジオ内            炎の美しさを活かしたディスプレイ          味覚のレッスン用の水溶液


Ⅱ.食育調理実習 ―la Cucina Espressa―
 講座の後半では、東京ガスが提唱する調理法「ラ・クチーナ・エスプレッサ(la Cucina Espressa)」による調理実習を行いました。
「ラ・クチーナ・エスプレッサ」は、おいしい料理を短時間で手早くつくるイタリアのお母さんをお手本とした、ガスコンロと調理器具の特性をフルに生かした効率的な調理法です。パスタをゆでてソースと和える、野菜を切って揚げる、鶏肉を焼いてスープもつくる…といった複数の調理プロセスも、3口コンロとグリルを駆使した同時調理なら、わずか20分で完成できます。また、熱伝導率の高い中華鍋でパスタと野菜を時間差でゆでれば時間とエネルギーを節約できるし、温度センサーとタイマーで「ついうっかり」を防ぎ、安全に調理を進められます。もうひとつ大切なのが、「五感を活かす」こと。素材を旬のものから選び、調理の過程でも音や色の変化に気を配り、盛り付けにも工夫することで、料理のおいしさはさらに引き立てられます。
学生たちは「ゴーヤのパスタ」「夏野菜の素揚げ」「豆のスープ」「鶏肉のグリル・味噌マヨネーズソース」の4品をつくり上げ、写真を撮ったり楽しく会話しながら、おいしそうに味わっていました。


まずはコンロの使い方を伺います             揚げ、ゆで、煮て、グリルで焼いて             盛りつけたらお楽しみの試食へ


今回の食育講座では、学生たちは新しい知識や体験を得られたことに加え、東京ガス(株)およびStudio +GINZAのスタッフの皆さまの丁寧なご指導を通じ、将来自らが食育を「行う」ときの心構えも学ばせていたと思います。ありがとうございました。
「食のサイエンス」企業の食育活動を体験する
平成26年6月4日(水)東京ガス㈱ Studio+G GINZA

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