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研究概要


私たちの研究室では、『環状ホスファチジン酸』『ステリルグルコシド』という脂質メディエーターの生理機能やそのメカニズムの解明に向けた研究を行っています。



『環状ホスファチジン酸(cyclic phosphatidic acid, cPA)』


環状ホスファチジン酸は、私たちが1985年に真性(真正)粘菌 Physarum polycephalumから初めて単離し、構造や生理活性に関して1992年に論文発表した脂質メディエーターです。
環状ホスファチジン酸は、グリセロール骨格の sn-2位と sn-3位に環状リン酸基構造を持つ特徴的なリン脂質(図1)で、この環状リン酸基構造が種々の生理活性に不可欠であることが示されています。その後の研究によって、環状ホスファチジン酸が粘菌のような特殊な生物にのみ存在する物質ではなく、ヒトなどを含む多くの生物種に普遍的に存在する脂質メディエーターであることがわかってきました。
これまでに私たちは、環状ホスファチジン酸の作用として以下のことを明らかにしてきました。

① 細胞の増殖を抑制する。
② がんの浸潤・転移を抑制する。
③ 神経細胞の生存と分化を促進する。
④ 神経障害性疼痛や炎症性疼痛を抑制する。

これらの結果から、私たちは制がん剤や鎮痛薬として環状ホスファチジン酸やその誘導体を医療応用する可能性を考え、研究・開発を続けています。


                                     図1:リン脂質
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『ステリルグルコシド(steryl glucoside, SG)』


ステリルグルコシドは、ステロールにグルコースが β-グリコシド結合した糖脂質であり、様々な生物で その存在が確認されています(図2:コレステリルグルコシド)。
私たちは1997年に、ステリルグルコシドがストレス応答の鍵を握る分子であることを発見しました。
粘菌、ラット、ヒト培養細胞を用いたその後の研究によって、細胞が熱ストレスを受けるとステリルグルコシドが速やかに細胞膜上で合成され、それが、熱ストレスに対する防御機構の中心を担う分子である熱ショックタンパク質(HSP)の合成を誘導することが明らかになりました。また、ラットにステリルグルコシドを経口投与すると、ストレス誘導性の胃潰瘍が抑制されたことから、ステリルグルコシドが生物個体においても、ストレスに対する防御機構を制御する分子であることが考えられています。

私たちは、環状ホスファチジン酸やステリルグルコシドの生理活性やそのメカニズムを詳しく追究し、病気が起こるメカニズムやストレスに対して生物がどのように対応しているのかを明らかにしていくことを目的としています。さらに大きな目標として、ここで得られた成果を化粧品や医薬品へと応用し、人々のQOLの向上に貢献したいと考えています。







                                                                                                   図2:コレステリルグルコシド


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