プログラムの理念

科学の今を、教室へ、家庭へ、地域へ

科学技術と一般社会との架け橋となるサイエンスコミュニケータの必要性が、いま急務とされています。本プログラムは、現職の小・中学校教員と大学院生を対象として、地域社会から国際的にも活躍できるサイエンスコミュニケーション能力を持った教育指導者の養成を目標とします。

すなわち、理数と生活環境分野の実践的指導力と、児童だけでなく保護者・社会人をも納得させられる高度の専門性を持った修士レベルの人材養成を行います。

そのために、1)大学等の研究者、2)教育委員会、3)科学理解増進活動を行っている博物館やNPO等の実務者と緊密に連携し、カリキュラムを作成し、特色ある授業を実施します。

サイエンスコミュニケーションとは

サイエンスコミュニケーションとは、高度に専門化のすすむ科学技術と、児童・生徒を含む一般社会との間で意見の橋渡しをおこない、双方向的な情報の交流をはかることです。 これまでにも、様々なかたちで先端科学情報を一般の人々へ「伝達する」という普及型の教育は行われてきました。しかし、そのような従来の一方的な情報伝達だけでは相互に理解するに限界があります。一般社会からの応答が科学技術の専門家へ円滑にフィードバックがされず、情報や意見の交流が無いことが、科学技術への関心の低下や、結果的に科学そのものへ不信感を生みだしているのだと認識されています。

サイエンスコミュニケーターの役割は、両者の間に立って、専門家から情報を客観的に判断し、社会全体に伝え、社会の求める情報をフィードバックすることで、薄れがちな科学に対する関心や興味を人々の間に広めていくことにあります。

さらに、サイエンスコミュニケーションの目標は、人々の科学に対する興味関心を深めて行く過程の中で、科学技術が社会や家庭に浸透し、文化の一つとして根付かせる事にあります。

教育現場におけるサイエンスコミュニケーション

 子どもたちや一般の人々の科学に対する関心や興味が低下しているという傾向が、様々な報告によって示されています。日々進歩し続ける科学技術によって生活が快適に便利になっていく一方で、複雑化しブラックボックス化しつつある先端科学技術に対して、無関心さらには不信感が子どもたちや社会に広がりつつあります。また、科学技術の専門家同士の間でも、自分が属するのとは異なる分野に対しては無関心である風潮が広まりつつあります。

この状況の解決には、科学技術を単なる知識・情報として伝えるだけなく、科学における発見や技術の革新にともなう「感激」や「驚き」を伝えることが必要とされています。さらに、科学技術の専門家と一般の人々や児童・生徒との架け橋となり、双方向の交流を生み出す人材なくして、サイエンスコミュニケーションは成り立しえません。そこで、ゆたかな経験をもち、子どもたちや、地域社会に太いつながりを持っている現職の教員に、サイエンスコミュニケーターとして活躍していただくことが、大いに期待されています。

教員が社会のサイエンスコミュニケーションのハブとして機能するスキーム図