平成20年度 現代GP開講講座
サイエンス・ライティング入門 課題エッセイ:Part 2

平成20年後期開講講座 『サイエンス・ライティング入門』(担当:青山 聖子先生)では、広く公開されることを前提としたエッセイを書いて行く中で 文章力・表現力を研鑽しています。
第1回のテーマは、『バイオエタノール』、
第2回のテーマは、『「健康食品」や「サプリ」の広告の特徴とそれに対する人々の反応』 をテーマとした課題エッセイを掲載いたします。疑問を持たずに聞き入れてしまいそうなことを、改めて考え直してみました。

それでは 受講生の作品をお読みください。



平成20年度 サイエンス・ライティング入門課題エッセイ
第2回テーマ

『「健康食品」や「サプリ」の広告の特徴とそれに対する人々の反応』

(800字程度)

ダイエッターよ、目を覚ませ!:原田 朋美( 理学部 化学科 3年 )
欲しいのは「健康」ですか?:三ツ木 礼子( 理学部 化学科 3年 )







『ダイエッターよ、目を覚ませ!』
原田 朋美 (理学部 化学科 3年)


ヤセたい ― そう願う女性は多い。スリムな身体を手に入れるためには、栄養バランスの取れた適量の食事と、継続的な運動が不可欠であるのは言うまでもないのだが、ラクしてヤセられるなら、誰だってそっちのほうがいいだろう。そんな願いを叶えるかのように登場したのが「ダイエットサプリメント」だ。その名の通り、ダイエット効果を謳ったこの栄養補助食品、はやり始めたのは比較的最近にも関わらず、あっという間にヒット商品となった。「飲めばヤセる」 ― そう明記されているわけではないのだが、「愛用者の体験談」や写真・映像などから、この手の商品に対してそういったイメージをもっている人は多いだろう。しかし、現実はそう甘くない。広告をよくよく見ると、いったい何の成分がダイエットに効果的なのか、肝心な情報が見当たらないことに気づく。気になって調べてみたところ、こんなことが分かった。

運動による脂肪の燃焼というのは、すぐには起こらないと言われている。準備段階として「脂肪の分解」が必要だからだ。これこそが「運動は20〜30分続けないと意味がない」と言われる所以である。どうやら、ダイエットサプリに含まれるアミノ酸が、この時間を短縮するはたらきをするらしい。

やはりサプリメントはあくまでも補助食品。他の成分にしても、「便通を改善するオリゴ糖」や「糖の代謝をよくするαリポ酸」など、ダイエットをより 効果的にする( かもしれない )成分が含まれているだけなのだ。成功するかしないかは、結局のところ私たちの努力によるし、その成分を信じるか信じないかも自分次第なのだ。「サプリを飲んだから脂肪がいつもより燃焼しやすいはず、だから頑張って運動しよう!」と思えたもん勝ちとも言える。ダイエッターの意志は強くなくてはならない。「病は気から」と昔からいうが、健康もダイエットもまずは「気から」。信じて努力すれば、ただのサプリも「夢のダイエット食品」に化けるかもしれない。






『欲しいのは「健康」ですか?』
三ツ木 礼子 (理学部 化学科 3年)


母が青汁を飲んでいる。それも一日一杯のルールまで作っている。牛乳に混ぜて臭みを消したり、きな粉を混ぜたり。そんなに工夫しないと飲めない物なら、飲まなくてもいいのに、と娘としては思ってしまう。聞けば、青汁の粉末を人に大量にもらったという。どうやら青汁を飲む物好きは、母だけではないようだ。

青汁こそ最近は耳にすることが少なくなったが、新聞広告やテレビでは次から次に新しい「健康食品」が登場し、はじめは聞き慣れなかった胡麻や大豆の成分を含んだものももはや珍しくない。コラーゲンやCoQ10をはじめとする美容のためのサプリメントも年々増えている。

しかし、健康食品やサプリメントは、服用する人にとって本当に必要なものなのだろうか。健康食品に関して言えば、広告に数多くの体験談は記載されているものの、その効用はどこにも書かれていない。望む効果が得られる保証はないのだ。サプリメントだって、多くの人の場合、ほんとうにその成分がからだに不足しているとは限らない。たとえ不調を感じていても、栄養補助食品にすぎないサプリメントにそれを治す力は期待できない。

母は青汁を飲み続けていて、何か変わったとか、調子がよくなったという感じは特にないという。ただ、1日の食事の中で野菜を十分に食べられなかったときでも、青汁飲んだし、まあいいか」と思うそうだ。

飲み続けている本人も特別な効果を期待しているわけではないが、野菜不足に対して何かしらの対策をうっていることで満足するらしい。とすると、健康食品を好む人が求めているのは、より一層の「健康」より、飲んだから大丈夫という「安心」なのではないだろうか。なにもしないよりは、なにかしたほうがよい。その心はわからなくもないが、同じ努力で本物の「健康」を手に入れられれば、それが一番よいはずだ。「安心」を得るだけで満足せず、もう一工夫してみてはいかがだろう。