「古代の技術を科学しよう」

お茶の水女子大学 生活科学部 近藤 恵先生

「ドングリ団子を作ってみよう」

縄文時代の人々は、どんなものを食べて暮らしていたのでしょうか。遺跡からはドングリなどの木の実がたくさん発見されています。ドングリでどんな食べ物が作られるのか、団子を作って試してみましょう。調理するとどんな利点があるのかな。調理するのにどんな苦労があったのかな。昔の人々は、どんな工夫をしたのか現代の科学の目でさぐってみました。

実験
まずは、フライパンで煎ったドングリを殻からとりだします。 なかなか、堅くてペンチを使っても大変でした。
石ころで作業していた昔の人はもっと大変だったんでしょうね。
みんなで、一生懸命に割っています。
ドングリを大きな木の板の間に挟んで、押しながら板を前後に動かすと、一度にたくさんのドングリを剥くことができました。
今回、使ったドングリはマテバシイの実でした。
あく抜きをしないと食べられません。
たくさん剥けました。 さて、レクチャーの始まりです!まず、われわれ人間が生きていく上で必要な3大栄養素、炭水化物・タンパク質・脂肪がどのような食べ物に含まれているか習いました。
そして私たちの食生活、古代の人たちの食生活の違いをしりました。
縄文時代の人たちは、総摂取カロリーの半分をも「木の実」でとっていたそうです。
ドングリは、私たちの先祖が生き延びていく上で大事な食べ物だったんですね。
↑しかし、生のままではドングリはおいしくなーい!!

木の実や穀物に含まれるデンプン質は火を通して「α化」しないと、おいしくなりません。そしてさめると「β化」してもとのパサパサになっちゃいます。(だから、冷めたご飯はおいしくないんですね〜。)
あっためたご飯はおいしいです。 レクチャーの間にしていた「あく抜き」がずいぶん進んだようです。あくがお湯に溶けだして、茶色くなっています。
あく抜きがすんだら、粉にしましょう。けっこう力がいります。昔のひとは食べるものを手に入れるのは容易じゃなかったんですね。 丸めたドングリ団子です。これを蒸したら出来上がります。
いい色に蒸し上がりました! ドングリクッキーも作りました。生地を混ぜて伸ばしているところです。
オーブンで焼きました。生地がふくらんでおいしそうです。 お味はどうだったでしょうー。結果は秘密です。
気になる方は、レシピを下につけますので自分で作ってみましょうー。
自分でドングリ団子・ドングリクッキーを作ってみたい人へ。
○ドングリ粉(団子とクッキーの元)の作り方
@ドングリを殻のまま水に入れて、下に沈むものだけを選ぶ(実の入りが悪いのを除きます)
Aフライパンで殻が割れるまで煎ります。焦がさない様に注意。
Bドングリの殻を石やペンチで取り除きます。
Bあく抜きをするために、茹でます。あくがドングリから出てくるとお湯の色が茶色くなってきます。時間が有れば何度かお湯を交換して、実にあくが残らないようにします。
C暖かいうちにドングリをすり鉢で擦ります。有れば、フードプロセッサーで細かくすると簡単です。
   これでドングリ粉の完成です!
○ドングリ団子の作り方
@ドングリ粉とつなぎ(ここでは上新粉{お米の粉}を使います)を合わせます。つなぎが少ない方がドングリ団子本来の味がします。
A水を加えて練ります。注意:水は一度に入れず少しずつ加えること。堅さは耳たぶくらい。
B団子状に丸めて、かたちを整えます。上の写真にもあるように真ん中を少しへこますと早く蒸し上がります。
C蒸し器に並べて蒸します。
    これでドングリ団子の出来上がり!
○ドングリクッキーの作り方
@バター120gを室温に置き、クリーム状に練る。
A粉砂糖80gと卵黄1個を@に加える。
Bドングリ粉100gと、ふるった小麦粉100g、ベーキングパウダー少々加え、切るように混ぜる(練らないようにね。)
C全体が合わさってから、よく練ります。
D乾いたまな板の上に、1センチくらいの厚さで均一にのばします。
E型抜きします。
F予熱したオーブンで150℃、7−8分焼きます。(焼き時間は様子を見て加減してください。)
    はい、これでドングリクッキーの出来上がりです。
  現代の材料を出来るだけ使わない、素朴なレシピも試してみてね。
発展学習(文化財科学の視点で)
【食性解析】
昔の人が何を食べていたか、どうすればわかるでしょう?
それを調べる重要な手段の一つが古代人の骨に隠されています。
骨にはコラーゲンというタンパク質が含まれています。タンパク質は炭素と窒素という元素を含んでいます。この炭素と窒素には「同位体」という特殊な元素があり、食べ物の種類によって割合が違っています。
ですので、骨に含まれるコラーゲン中の炭素と窒素の「同位体」の割合を調べれば、生前なにを食べて生活していたか分かるのです。
たとえば、海産物には重い同位体が多いので、重い同位体をたくさん含むコラーゲンを持った骨の持ち主は、生きていた時、海の近くで海産物中心の食生活を送っていたことが分かります。