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第1回IGIセミナー:開催報告

2022年6月29日更新

ジェンダード・イノベーションズとは?-性差を意識した研究と技術開発にむけて-

開催概要

開催日時

2022年5月25日(水曜日)9時半~10時半
講師 佐々木 成江(IGI 特任教授)
開催方法 Zoomミーティング(学内)
参加者数 39名

開催レポート

 2022年5月25日(水曜日)、第1回目となるジェンダード・イノベーション研究所セミナー(IGIセミナー)「ジェンダード・イノベーションズとは?性差を意識した研究と技術開発にむけて」が開催された。講師は研究所社会発信部門長の佐々木成江特任教授が務めた。学内限定のオンラインセミナーで開催案内期間も短かったが、参加者は約40名に上り、ジェンダード・イノベーションズに対する関心の高まりが見て取れた。

  • IGIセミナー(Zoomミーティングの様子:佐々木成江特任教授)

 佐々木特任教授による講義では、日本の女性活躍の状況と女性活躍の効果、ジェンダード・イノベーションズとは何か、海外におけるジェンダード・イノベーションズの推進状況、ジェンダード・イノベーションズの具体的事例が解説された。

 まず示されたのは、日本における女性活躍の進行状況が非常に緩やかであることである。他国と比較して日本のジェンダーギャップ指数の伸び幅は非常に小さい。女性研究者割合も低く、アメリカと同レベルに達するには50年もかかると予想されている。そして、なぜ、科学技術での女性活躍が必要なのかという問いに対しては、多様性の確保のために女性の参画は必要不可欠なものであるという回答が提示された。問題の発見と解決の現場に多様な経験と多様なアプローチが存在することで創造性が高まり、イノベーションを生み出すことができるのだ。ジェンダー多様性による効果の具体的事例として、日本の特許の取得件数のデータが示された。いかなる分野においても男性のみのチームより、男女混合チームの方が多くの特許を取得している。

 ジェンダード・イノベーションズは、アメリカのスタンフォード大学のロンダ・シービンガー教授が提唱した概念である。これまでは主に男性の研究者が中心になって男性のデータをもとに医療や製品の技術開発を進めてきた。これでは性差が商品やサービスに反映されにくい。その結果、女性にやさしくない社会になってしまう。そこで、生物学的差異(sex)および社会的差異(gender)を深く分析し、性差を積極的に研究・開発にいかしていこうというのがジェンダード・イノベーションズの考え方である。男性中心の場で「女性の数を増やそう」と言うと一歩引かれてしまうことが多い。しかし、「ジェンダード・イノベーションズ」あるいは「性差に基づいたイノベーションを起こそう」というと、違った反応が返ってくるという。ジェンダード・イノベーションズは女性だけでなく、男性も一緒になって進めていく必要がある。ジェンダード・イノベーションズは、特に意思決定の場にいる男性たちの心を動かすのに有効な概念であると説明された。

 ジェンダード・イノベーションズが進んでいる欧米では、研究の全ての過程でジェンダー要因の検討が義務化されている。また、医学雑誌の論文投稿においても性差分析の有無や方法についての説明が求められている。性差に基づいた研究・開発を行わないことは、最悪の場合、人の命にもかかわってくるからだ。

 講義の後半では、ジェンダード・イノベーションズの研究事例が紹介された。例えば、ゾルピデムという睡眠導入剤は、男女で排泄の速度が異なる。女性の場合は服用から8時間たっても薬の効果が継続することが多いため、服用後の居眠り運転の割合が男性3%に対し、女性が15%と高い水準になっている。このような性差分析の結果、成分が少ないものを女性用のパッケージにして販売するようになった。医薬品の薬効や副作用の性差は人命に関わることも多いため、開発の初期段階から性差分析を実施することの重要性が指摘されている。より日常的な例では、スマートフォンは女性の手には大きすぎて、長時間の使用によって炎症が起こる可能性が高いことが指摘された。また、性別とは無関係な存在であるはずのロボットやAIにも、開発者のジェンダーバイアスが反映されていることなど、様々な領域の事例が挙げられた。

 身の回りの多くのモノ・コト・サービスが男性を基準に作られてきたという事実は、開発者にも使用者にも、あまり認識されていない。このような性差の事例や知識を世間に広め、性差を意識した研究や技術開発の重要性を発信することは、ジェンダード・イノベーション研究所の重要な役割のひとつである。今後も同様のセミナー企画を継続し、情報発信を充実させる計画である。

記録担当:山本咲子(IGI 特任リサーチフェロー)

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