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IGIキックオフシンポジウム:開催報告

2022年7月29日更新

ジェンダード・イノベーション研究所設立記念キックオフシンポジウム―新たな産官学連携の創生に向けて―

開催概要

開催日時

2022年6月17日(金曜日)14時半~17時半
開催方法 対面とオンラインのハイブリット方式
参加者数 534名(会場:141名、オンライン:393名)

開催レポート

2022年6月17日、「ジェンダード・イノベーション研究所設立記念キックオフシンポジウム:新たな産官学連携の創生に向けて」が開催された。本シンポジウムの目的は、今年4月に設立したジェンダード・イノベーション研究所の周知および、ジェンダード・イノベーション研究を産官学連携で推進し、社会で具体的な成果を上げる基盤づくりである。お茶の水女子大学講堂「徽音堂」とオンライン配信の参加者合計は500名を超え、ジェンダード・イノベーション研究への関心の高さがうかがえた。

本シンポジウムのプログラムの特徴は、産業界、官公庁、学術界から登壇者を招聘した点にあり、ジェンダード・イノベーションへの期待や可能性、イノベーション創生のための産官学連携の必要性についての共通認識を深めることを目指した。

石井クンツ昌子研究所長によるプレゼンテーション「ジェンダード・イノベーション研究所について」では、ジェンダード・イノベーションとは何か、ジェンダード・イノベーションに関する海外と日本の動向、研究所のミッションについて説明された。ジェンダード・イノベーションとはスタンフォード大学のロンダ・シービンガー教授が提唱した概念であり、その目的は積極的に性差解析を行い、研究・開発のデザインに組み入れることで「知の再編成」を促し、イノベーションを創出することである。「AIアシスタントの性別は?」「男女で薬の効き方が違う?」等の問いを示し、性差が見過ごされてきた研究・開発の実例が挙げられた。それらを性差の視点から再検討することで、新たなサービス、ビジネスチャンス、持続可能性の強化、DEI(ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン)推進、女性のエンパワメントにつながる可能性が示された。研究所のミッションは、産官学のハブ組織として多様性と包括性を備えた多様な幸せを実現できる社会の構築に寄与することであると説明された。

林伴子内閣府男女共同参画局長による基調講演「ジェンダード・イノベーション研究への期待」では、科学技術分野における女性活躍の現状と内閣府の調査結果が解説された。日本は諸外国と比較して、女性研究者割合が低く、理系分野の進学する女子学生が少ない。女子中学生の進路選択は母親の影響を顕著に受け、母親が理系出身の場合、その娘は理系を選択する割合が高まる、女子は男子よりも理系の進路選択に関するアンコンシャス・バイアスの影響を受けやすい、という調査結果が紹介された。女性の理系分野への進路選択を促進するには、理系学部で学習、研究することの具体的なイメージが持てるように情報提供することや、体験型イベントや実験教室等に幼少期から参加することを通して、理系分野への興味を深める機会を創出することが有効であると指摘された。

続いての登壇者は、富士通株式会社執行役員の梶原ゆみ子氏である。梶原氏は内閣府総合科学技術・イノベーション会議議員としても、ジェンダード・イノベーションの推進に尽力されている。梶原氏の基調講演「ジェンダード・イノベーション研究への産業界の期待」では、COVID-19、ウクライナ情勢、エネルギー不足等、世界を取り巻く環境が劇的に変化する時代において、地球規模での課題はイノベーションで解決していく必要があるというマクロ視点の指摘と、一人ひとりのwell-beingの実現のためにはジェンダード・イノベーションを社会実装していく必要があるというミクロ視点の指摘がなされた。日本にはジェンダー・ギャップの改善をコストと捉えている企業が多いが、ギャップを埋めることはコストではなくビジネスチャンスであり、企業のマインドセットの変革が必要であると強調した。研究所に対しては、優れた女性研究者やリーダーの育成、産学連携による社会実装の追求、日本のジェンダード・イノベーションの発展をグローバルなコミュニティの中核となって牽引していくことを期待していると述べられた。

  • プレゼン基調講演

続いて、「ジェンダード・イノベーションが開く新たな産業への期待」と題したパネルディスカッションが行われた。パネリストは東北大学副学長の大隅典子氏、文部科学省科学技術・学術政策局産業連携・地域復興課長の井上睦子氏、株式会社Lily MedTech代表取締役CEOの東志保氏、本研究所の斎藤悦子教授の4名である。パネリストの方々にこれまで行ってきたジェンダー研究の内容やジェンダード・イノベーションとの関わりについてお話いただいた。

生物学、神経科学の研究者である大隅氏からは、2013年に細胞レベルでの性差の存在を指摘する研究が発表されたことを発端に、生物学での性差研究が進んできたという研究動向が紹介された。従来のジェンダー研究やフェミニズムに加えて、生物学的知見も取り入れることで産官学連携やジェンダード・イノベーションの推進につながると指摘された。

科学技術・イノベーション政策推進に携わっている文部科学省の井上氏は、近年の技術革新によってこれまで解明されてこなかった社会課題の最適解の発見が可能になり、よりよいサービス・製品を提供できる世の中になってきたと述べた。そして、技術革新の進歩によって多くの人がジェンダード・イノベーションに共感できる土壌が形成されつつある良いタイミングで本研究所が設立されたと期待を示した。女性だけでなく男性も参画し、連携によってよりよい社会をつくっていく必要があるという見解も示された。

痛みのない乳がん検査装置というフェムテック製品の開発を実現した東氏は、産官学連携によりこれまでスポットライトが当たらなかった研究シーズにイノベーションが起こることで、新たな市場が創生され経済が活発になると指摘した。加えて、自身のキャリア経験を踏まえ、ジェンダード・イノベーションによってもっとも恩恵を受けるのは女子学生なのではないかと述べた。自分の適性を発見、発揮できることは、個人の幸福につながるという。ジェンダード・イノベーションによって若い世代が自分の適性を知り、選択肢を広げることが可能になるという示唆である。

生活経済学およびジェンダー研究の専門家である斎藤氏は、これまでの研究では、生物学的な性差を認識してはいたものの、十分に追求してこなかったと述べた。ジェンダード・イノベーションでは、従来のジェンダー研究ではあまり議論されてこなかった生物学的な差異も受け入れて研究を進めていくことで、より多くの人のwell-beingに貢献できると指摘した。また、ジェンダー視点は研究者だけでなく、産業界の人々も有している必要があるとし、人々の意識のイノベーションはダイバーシティの追求によって達成されると提言した。

ファシリテーターを務めた石井所長は、ジェンダード・イノベーションの実現には産官学連携が不可欠であり、本研究所は産官学をつなぐブリッジとしての機能を担うことができると述べた。今日の議論は性差に着目しているが、ジェンダー以外の多様性も念頭に、女性だけでなく男性の参画も促し、ジェンダーを含めたダイバーシティ研究を進めていきたいということばでパネルディスカッションを締めくくった。

限られた時間ではあったが、シンポジウム全体を通して、産官学連携、ジェンダード・イノベーション研究への期待や可能性についての議論が深められた。

  • パネルディスカッション

記録担当:山本咲子(ジェンダード・イノベーション研究所特任リサーチフェロー)

*シンポジウム会場では、文中で紹介した基調講演者、パネリストのほかにも、産官学の各界からのご来賓からご挨拶や応援メッセージをいただきました。下の一覧(ご登壇順)と掲載の写真でご紹介させていただきます。

ご来賓挨拶

野田 聖子 氏 内閣府特命担当大臣

柿田 恭良 氏 文部科学省 大臣官房総括審議官

田中 哲也 氏 経済産業省 大臣官房審議官(産業技術環境局担当)

柄澤 康喜 氏 日本経済団体連合会 ダイバーシティ推進委員会委員長

大学からのメッセージ

相原 博昭 氏 東京大学 理事・副学長

梅原 出 氏 横浜国立大学 学長

大野 英男 氏 東北大学 総長

玉田 薫 氏 九州大学 副学長

仲谷 善雄 氏 立命館大学 学長

エリザベス・ブラッドレー 氏 米国ヴァッサー大学 学長【ビデオメッセージ】

アンネ・ボルグ 氏 ノルウェー科学技術大学 学長【ビデオメッセージ】

産業界からのメッセージ

安間 裕 氏 アバナード株式会社 代表取締役社長

小坂 達朗 氏 中外製薬株式会社 特別顧問、お茶の水女子大学経営協議会委員

坂野 真人 氏 株式会社ブリヂストン 執行役専務

道廣 剛太郎 氏 株式会社三井住友フィナンシャルグループ 上席顧問

宮 健司 氏 大日本印刷株式会社 代表取締役専務

宮地 純 氏 カルティエジャパン プレジデント兼CEO

     
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    関連リンク / Related Links

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