お茶の水女子大学名誉教授の内田伸子先生をお招きして指導力・カウンセリング理論講義「悩みを抱えた学生にどのように接したらよいか~女性研究者を育てた心理学教員の経験からの提案~」を2016年2月16日(火)にお茶の水女子大学にて開催しました。

女性研究者の抱える悩みとその克服についてまた学生に対する教員の接し方について関心のある教員・事務職員・学生など約20名が参加しました。内田伸子先生は表題のテーマについて5部構成でお話されました。その概要を以下紹介します。

第1部「理工系の女子学生・女子院生の悩みはどこに?」では、悩みを3つのないに整理され指摘されました。
(1)将来が見えない(大学や研究所などの研究機関に就職できるか?そもそも博士論文が書けるか?)
(2)ロールモデルは沢山いても、あんなふうになれる自信がない
(3)運よく大学や研究機関に就職できたとしてもライフイベント(子育て、介護など)に対処できる自信がない

第2部「大学院の設置の歴史を通して見えてきたこと」では、上記の悩み不安を深めている要因について話されました。大学院重点化政策により大学院生が急増する一方、企業や大学では博士修了者のポストが増えなかったこと、特に日本では企業における博士号取得者採用率が低いという現状があること、またライフキャリアデザインの指導について教員のあいだで共通認識が形成されていないという問題にも言及されました。

第3部「女子院生を育てる教員の意識改革を!女子学生と女子院生へのエール」では、女性研究者は最もクリエイティブな時期に結婚、出産、子育て、介護、更年期障害が重なるという厳しい現実を女子学生に早期に自覚させる必要があることを主張されました。そのような現実を示しながら、「修士課程・博士課程の過ごし方」についてオリエンテーションをしていたというご自身のご経験も紹介されました。

第4部「しつけと学習効果」では、「褒める」「励ます」「広げる」を重視した「共有型しつけ」のほうが指示的・トップダウン的な「強制型しつけ」よりも教育指導に有効であることを多くのデータを用いて論じられました。

第5部「博士号取得と就職」では、就職問題への心構えとして論文を多数発表するべきであること、就職のチャンスがあれば女子学生は大学・企業にかかわらず「受けて立つ」気概が必要であることを強調されました。

質疑応答では、「打たれ弱い学生にはどのように注意したらよいか?」という質問に対して、「本人も自分のミスについて落ち込んでいるはずなので、その場では注意せず、少し時間を置いてから学生と対話するとよい」とアドバイスをされていました。

参加者からは「内田先生の力強いご講演に非常に励まされました。学生支援に役立つヒントが多く伺えました」、「教員志望者として、生徒に対してどう働きかけるべきか、大変多くを学ばせていただきました」など多くの感想が寄せられました。

このような感想で示されたように、中身の濃い、そして明日からの学生、院生の指導に大変参考になる示唆に富んだ講演会となりました。

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内田伸子名誉教授による講義

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熱心に講義を聴く参加者たち