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平成29年度国際調査支援を受けた本学大学院生がポスター発表を行いました

2019年12月12日更新

平成29年度グローバル協力センター「途上国開発・国際協力分野国際調査支援」を受けた山口紀子さん(大学院人間文化創成科学研究科比較社会文化学専攻)が、キルギスでの調査結果をもとに2018年12月1日~2日に開催された第39回日本生涯教育学会研究大会において展示発表を行いました。
本研究は、お茶の水女子大学「アフガニスタン・開発途上国女子教育支援事業野々山基金」による支援で実施されました。

題目 孤立環境キルギスにおける日本語学習/教育の意味とは何か ―教師21人への半構造化インタビューの結果から―」
抄録  キルギス共和国は、中央アジアに位置する旧ソビエト連邦の構成国の一つであり、1991年の独立以降外国語教育が普及する中で日本語教育も開始され、2017年9月現在、31機関で1,501人が日本語を学んでいる(『キルギス日本語教師会報』46号)。キルギス人の多くはロシア語とキルギス語のバイリンガルであり、キルギス語と語順が似た日本語は学習しやすいと考えられている。しかし日本との人的・経済的交流は少なく、留学や就職など実利的な目的が達成されにくい「日本語孤立環境」(福島・イヴァノヴァ2006)であることから、日本語学習の継続困難と日本語教育の意義への懐疑(入山 2010)が問題とされてきた。
 2016年に報告者がキルギスの生涯教育機関の日本語学習者を対象に実施した学習動機づけに関するインタビュー調査では、学習継続を支える要因として「学習をめぐる楽しさ」と「学習中に感じる異文化世界への没入感」が観察された。時間的感覚の喪失や没入感・満足感・集中などを伴う心理的に楽しい体験は「フロー体験」(Nakamura&Csikszentmihalyi 2002)と呼ばれ、外国語の教室活動中にも見られることが報告されている(Egbert 2003)。そこで本研究は、2017年9月、キルギス最大の日本語生涯教育機関に所属する全コース生75人を対象に、「学習の楽しさ」と「授業中のフロー体験」に焦点をあて、授業中に①どのような「学習の楽しさ」を感じているか、②どのような主観的体験(フロー体験含む)をしているか、③「学習の楽しさ」と「フロー体験」が学習継続意志にどのような影響を与えているかについて、質問紙調査を実施し計量的な分析を試みた。なお、回答に欠測値のなかった56人を分析対象とした。
 ①「学習の楽しさ」について、2016年のインタビュー調査の結果などから16の質問項目を作成し6件法で回答を求め、因子分析を行った結果、〈知る楽しさ〉(α=.885)、〈新しい世界との交流の楽しさ〉(α=.874)、〈学習環境の楽しさ〉(α=.768)、〈知識の実用性の楽しさ〉(α=.787)の4因子が抽出された。
 ②「授業中のフロー体験」について、浅川(2011)が用いたExperience Sampling Method調査紙を基に質問紙を作成し、各クラス2回の授業終了直後に配布して9件法で回答を求め、延べ112件の有効回答を得た。この調査紙では、授業中に感じた難しさ、自分の能力のレベル、授業中の楽しさ、充実感などを測定した。フロー理論では、取り組む課題の難しさ(挑戦)と自己の能力レベルが高次につりあった場合を「フロー状態」、挑戦レベルが自己の能力を下回る場合を「リラックス状態」と定義する。本調査では「リラックス状態」の授業において、授業中の楽しさ・充実感といった肯定感情が高いという結果が示された。
 ③学習継続意志への影響について、新入生を除く32人を分析対象に、フロー体験の強度を示す「フロースコア」と学習継続意志のスコアとの相関をみたところ、有意であった(r=.381*)。次に「学習の楽しさ」と「フロースコア」「学習継続意志」の関係を重回帰分析でみたところ、〈知る楽しさ〉(β=.40*)〈新しい世界との交流の楽しさ〉(β=.52**)が継続意志に正の影響を与えていることが明らかになった。
 以上の結果から、キルギスの日本語生涯学習を教室で支援するために、1)学習者の能力に比して解決が比較的容易な課題を与え学習中の肯定的な感情を高めること、2)新しい知識を獲得したという実感を与え、また学習者同士の交流を促す活動を取り入れて楽しさを味わわせることが有効だという示唆を得た。
 ※本研究はお茶の水女子大学「アフガニスタン・開発途上国女子教育支援事業野々山基金」助成を受けた。

右矢印 大会プログラムはこちらをご覧ください。

また、2019年10月26日に開催された第55回お茶の水女子大学日本言語文化学研究会にてポスター発表を行い、佐々木嘉則(佐々貴義式)賞を受賞しました。

題目 「孤立環境キルギスにおける日本語学習/教育の意味とは何か ―教師21人への半構造化インタビューの結果から―」

右矢印 佐々木嘉則(佐々貴義式)賞についてはこちらをご覧ください。

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