センターについて センターの活動 SDGsの取組 刊行物 お問い合わせ・アクセス

ページの本文です。

第29回SDGsセミナー「地方創生の経験を国際協力に~課題先進国、海士町の挑戦~」実施報告

2023年6月14日更新

photo1
講師の森田瞳子さん

2023年6月6日、JICAから出向し、島根県の離島、隠岐諸島の海士町で国際協力コーディネーターとして活躍なさっている森田瞳子さんをお招きし、第29回持続可能な開発目標(SDGs)セミナー「地方創生の経験を国際協力に〜課題先進国、海士町の挑戦〜」を開催致しました。森田さんは、カナダのトレント大学で国際関係学を学ばれたのち、NPO法人関西国際交流団体協議会OWF事務局やJICAケニア事務所のボランティアコーディネーター(青年海外協力隊の活動支援)など、国際協力分野での「現場と人との架け橋となる仕事」で活躍してこられました。その後、コロナ禍の影響などもあり帰国され、ご家族と共に海士町に移住し、JICAの国際協力コーディネーターとしての仕事を始められました。今回のセミナーでは、海士町の地方創生事業や、それらを通した国際協力についてお話しいただきました。

海士町は後鳥羽上皇が流されたことで有名な隠岐諸島にある島の一つで、本土から船で60kmほどの位置にあり、約2300人が暮らしています。加工食品等は本土から船で輸送しなければなりませんが、農業、漁業、畜産業が盛んで、島の生活は実質自給自足とのことです。海が荒れて船が出航できないと、パンや牛乳がなくなってきて買いだめをする、とお話しされていましたが、便利さではない豊かさに溢れた海士町の様子を聞き、東京の豊かさについて非常に考えさせられます。

しかし、そんな海士町は、「課題先進国」と言われており、人口流出、それに伴う少子高齢化や財政危機という問題を抱えていました。そこで海士町の方々は「ないものはない」をモットーに地方創生に取り組みました。このモットーには、①便利さはない、しかし②食や人とのつながり等、生きるために必要なものの全てがある という二重の意味がこめられています。これを軸にして、財政破綻により政府の援助を受け、自治の自由が奪われることを防ぐべく、町長を筆頭に役場職員の自発的な給料カットをはじめとし、地元の団体等も一丸となって島全体で財政を立て直そうと動き出しました。

photo2
海士町で研修中の若者とオンライン交流

その後、島の外部から“よそ者”を招き交流することで、内部の目では気が付かなかった島の魅力を発見し、例えばサザエカレーの商品化等、海士町の良さを生かした創生事業が行われました。また、島内の「高校魅力化プロジェクト」として、生徒主体のフィールドワークの探求授業を取り入れ特色を出し、生徒数を30人から180人に伸ばしたり、病気になったときの島外の病院への移動や助産師さんを呼ぶ費用を自治体が負担するなどし、子育て支援を充実させたりしました。その結果、海士町は人口流出を食い止め、地方創生に成功しました。そんな海士町は、JICAと連携協定を結んでおり、国づくりを担う開発途上国の人材の育成研修、JICA海外協力隊の研修としてのグローカルプログラム、ブータンと海士町の高校などが行う草の根技術協力を行っています。今回のセミナーでは、グローカルプログラムの実習生とオンラインでつながり、お話を伺うことができました。

今回のSDGsセミナーを通して、人とのつながりと地域の特色を活かすことがどれほどその場所の活性化につながるかが理解できました。隣に頼れる人がいて、地域全体で一つの目標に向かって団結できること。そこにあるもの、歴史や文化、土地性や人柄を発見して売りにして活用すること。こうしたことはお金やモノや人が足りなくても可能であり、国際協力の国づくりの現場にも大いに通じることがあります。一見つながりがなさそうでも他のことから吸収できることを私自身も見つけていきたいと感じました。そして、いつか海士町を訪れてみたいと思います。

(文教育学部言語文化学科1年 鈴木 小春)

  •  
  • このエントリーをはてなブックマークに追加