安全管理体制 RI関連規程集 施設紹介

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安全管理体制―兼任職員

お茶の水女子大学 ラジオアイソトープ実験センター 副センター長、講師:古田悦子

担当講義:放射線基礎講義 →シラバス

女子大だからでしょうか、放射線を扱っていて一番良くある質問が「先生は、放射線って怖くないですか?」というものです。そんな時に話すのが、「包丁」の話です。

自宅の台所でりんごと包丁を持っている家族を見て、恐怖心を覚える人は殆どいないはずです。一方、街中で包丁を片手に奇声を発している人を見たら怖いと思うのではないでしょうか?これは、包丁は実は人を傷付ける凶器となり得ることを誰もが知っている一方で、包丁の安全な使い方というものをも、また皆が知っているために起こる反応です。

放射性同位元素や放射線も、使い方を知らないで使ったり、或いは正常な使い方を極端に逸脱して使ったりすれば、勿論怖いものになりえます。しかし、その一方で放射線は安全に使用できるものでもあります。そして、私たちの生活に大いに役立てる事ができるものでもあるのです。
例えば、癌の治療、難病の検出などの医学・薬学や、殺菌、品種改良などなど…。活用例を挙げていくと、時間がいくらあっても足りないくらいです。

では、どうしたら放射性同位元素や放射線を安全に使う事ができるのでしょうか? それには、使用対象である放射性同位元素を知ることが一番の近道でしょう。
その為、大学内外で行なっている講義では、放射性同位元素の他、一般の化学物質なども含め、安全管理学をとりあげています。

研究概要

放射性コンシューマプロダクト


放射性同位元素を含む日用品の事を放射性コンシューマプロダクト(以下放射性CP)といいます。
日用品が放射性?と不思議に感じるかもしれません。放射性CPの定義は主に以下の3つに分けられます。

1) 放射線を出すことを利用した商品

工業的に利用されているものが多く、本当の意味での日用品にはほとんどないとされています。

2) 放射性同位元素を含むことを利用した商品  

ガスランタンマントル
ガスランタンマントル

広く知られているのが、写真のガスランタンマントルです。これは、ウェルズバッハ(Carl Auer von Welsbach)が1885年に特許化した、放射性トリウム(Th)の存在により出る白熱光を利用した登山、キャンプ用ランプの芯です。
2005年現在も日本では購入可能です。(英国などでは販売不許可になっています。)
これ以外にも、遠赤外効果などと謳った商品の一部には、放射性同位元素が含まれているものもあります。
 

3) ある元素を利用する為、天然の放射性同位元素を含んでしまった商品

身の回りに多いのが、この3)の例です。
代表は、カリウム(K)を含む商品と考えられます。~カリウムという試薬瓶に、放射線を測定するためのサーベイメータを近づければ、はっきり反応します。
 
日本では、放射線=原爆のイメージが強いためか、放射性CPである事を隠して売る傾向が強いようです。また、放射性CPに関する研究はあまり盛んとはいません。
しかし、欧米などでは政府機関が研究を進めており、国による規制が厳しく行われています。例えば、幼児が口に含む可能性のある玩具などの放射性CPは一切認めていません。日本では、そこまでの明確な規制がなされていません。私たちの身の回りに沢山ある放射性CPの1つ1つについて、放射性である必要があるのか、放射性であるための被ばく線量を評価することを研究にしてきています。
 
放射性同位元素を含むメリットが、被ばくの危険性というデメリットを上回るもののみが、商品として許されるものと考えています。

関連論文(一部)
  1. 放射性CPの一例-ある七宝焼き釉薬、Radioisotopes43(3)、142、1994
  2. 放射性CPの線量評価-光学顕微鏡、Radioisotopes47(12)、920、1998
  3. 放射性CPの線量評価-枕、Radioisotopes48(2)、107、1999
  4. Comparison between radioactive and non-radioactive gas lantern mantles、J. Radiological Protection20, 423, (2000)
  5. ミッシュメタル含有放射性核種からの線量評価、日本放射線安全管理学会誌2(1)、26、2003

放射線計測

放射性同位元素を利用した研究は各教育研究機関において行われています。使用者は、使用している放射性同位元素を、必ず何らかの形で測定しています。放射線を測定する機器はいく種類もあり、それぞれに使用に際して注意しなければならない特徴があります。
この際、測定機器の使い方を誤ると、一見測定結果が出ているものの、実は放射線量に見合った正しい結果が得られない場合が出てきます。特に低エネルギーのベータ線のみを放出する核種の測定は難しい場合があります。
測定機器の特徴と正しい使い方を、管理者はもちろん、使用者自身が身につけることが、放射性同位元素の有効利用につながると考えられます。

1) 管理者側の問題

利用している機器は、標準試料に対し測定器として正常な値を示すようなメンテナンスが行われているか。

2) 使用者側の問題

原理は勿論のこと、それぞれの機器特有の使用条件を把握しているか。
 
測定結果の数値が出れば良いというものではありません。
正しい結果を得るための知識を、放射線利用者として身につけるべきであると考え、その普及に努めています。

関連論文(一部)
  1. Floating radioluminography, Radioisotopes 45, 161, 1996
  2. Usefulness of floating radioluminography, Appl. Radiat. Isot. 48, 1133, 1997
  3. Crosstalk correction in radioluminography, Appl. Radiat. Isot. 50、397、1999

低エネルギーベータ線の弁別

ライフサイエンス系の非密封放射性同位元素使用施設において一番多く使われている放射性同位元素は、3Hや14Cに代表される低エネルギーベータ線放出核種です。
これらのベータ線は最大エネルギーが小さいため、空気中での飛程(移動距離のこと)が短く、外部被ばく(放射線源が体の外部にあって、そこから出る放射線のみにあたること)の危険性は、ほとんどありません。これは、同時に、汚染(放射性同位元素による汚れのこと)などがあった場合に、サーベイメータなどの放射線検出器では見つけにくいということにもなります。
 
また、極端に飛散しやすい化合形があり、内部被ばく(放射線源が体の内部にあること)の原因になります。管理区域内での使用であっても、実験施設内の汚染は極力少なくし、これを的確に見つけ出せる体制をとる必要があります。
 そこで、低エネルギーベータ線を簡単に弁別できる方法の開発を行っています。

関連論文(一部)
  1. IPによる粗表面汚染密度測定、Radioisotopes, 46, 912, 1997
  2. Monitoring of 3H surface contamination by noncontact radioluminography, Health Phys. 78, 90, 2000
  3. Discrimination between 14C and 35S using by a GM counter and thin absorbers, Appl. Radiat. Isot. In contribution, 2005