平成20年度 現代GP講義
キャリアプランニングT(商社:濱崎則子先生)

2008年7月2日(水)から3回にわたり、三菱商事株式会社より濱崎則子先生を講師にお迎えして、「商社の仕事」についてお話しいただきました。

濱崎先生は本学家政学部(現・生活科学部)食物学科のご出身です。大学卒業後 三菱商事に入社し、鉄鋼、環境(含む、環境省への出向)、広報などの業務に携わり、現在は三菱商事の人事部門分社である ヒューマンリンク株式会社人材開発事業部に出向されています。幅広い産業を事業領域としてビジネス展開している三菱商事。そこで活き活きと働く大先輩のキャリアパスに、学生の興味が集まります。

商社ってどんな仕事をするところ?

まずは ひとつのロールモデルとして、濱崎先生ご自身の「わたしの履歴書」を話してくださいました。

「学生の頃、ご近所付き合いしている方の影響もあり、漠然と「商社」というものに憧れを感じていました。私が学生の時は、卒業研究の指導教員の推薦で、関連企業に縁故就職する人がほとんどでしたが、この頃の私は海外で仕事をすることに憧れ、三菱商事に入社しました。それまでの研究テーマとはまったく接点のない職種への就職に、指導教官が『大丈夫なの?』とご心配されたことも、今では微笑ましい思い出です」(濱崎先生)

はじめに配属されたのは鉄鋼、自動車用鋼材の部署です。当時、“商社不要論”が世の中で浮かんでは消えており、その中で「なぜ商社が鉄鋼取引に必要なのか?」という社会気風に立ち向かう力が必要でした。そこで、商社にしかできない仕事、例えば情報収集・提供、また海外プラント進出の支援といった付加価値を武器に、鉄鋼貿易業界への貢献を目指してきました。

「当時はこういった業界はまだまだ男性主体の世の中で、『女性は商社に入ると、アシスタント』というのが一般的でしたが、ポストに関係なく仕事は楽しくて、やりがいを持って関わってきました」(濱崎先生)

やがて人事制度が変わり、資格転換試験が導入されました。濱崎先生もこの試験に合格し、自動車・部品メーカーの海外進出支援や、環境関連の取組、コーポレートブランディングといった、様々な部署に関わることになります。幅広い事業展開を担う三菱商事の懐の広さを体感すると同時に、たくさんの人と関わることが魅力でした。

「仕事は、多くの人が支えあって取り組んでいくもの。どの仕事も 人と人との繋がりだなぁ、と実感しています」(濱崎先生)

10年前に、「環境への取り組み」という大きなテーマに出会います。

「今でこそ、どこの企業もエコロジーに配慮していますが、当時は社内で環境対応を推進するのはそれなりに苦心しました」(濱崎先生)

会社としてISO14001(※1)の認証取得するために、環境マネジメントシステムの構築に携わり、後にはISO 14001事務局のリーダーを務めました。

2004年から2年間は官民交流のために環境省へ出向し、自動車環境対策課に配属。

「自動車の材料と環境対応に関わってきた自分が、偶然にも今度は自動車環境対策に関わるということに、不思議な縁を感じました」(濱崎先生)

2005年の愛知万博では、環境省主催の『環境と交通に関する世界会議』の企画運営を担当しました。

その後、三菱商事に戻って、広報部でコーポレートブランディングの業務に携わりました。企業の理念や価値観(=コーポレートブランド)を社内外に伝えるために、企業広告、CM、社内報、社内TV、会社案内ビデオ等、各種発行物を作る仕事です。三菱商事では、「地球環境」に配慮して様々なCSR活動(※2)を行っています。こうした取り組みを社会に伝えることも、社会的責任のひとつ。

「読売新聞社とタイアップして企画し、高校生に海外の事業投資先を体験してもらったり、世界各地でCSR活動に参加する社員の姿を、朝刊の広告で伝えてきました。“三菱商事らしさ”というブランドイメージが社会に浸透していくには、どうすれば効果的か? ということを考えて企業広告を作っていくのも楽しい仕事でした」(濱崎先生)

現在は三菱商事 人事部の機能分社であるヒューマンリンク株式会社(三菱商事100%出資)に出向し、三菱商事との兼任で、内定者、新入社員研修から社員全般にわたる人材育成の仕事をしています。

※1:ISO14001 /企業が、自らの企業活動に伴う環境負荷をできるだけ低減することについて、社会責任として自発的に取り組むための規格。社員のひとりひとりが自分の業務と環境との関わりを考える事により、会社全体として環境への対応能力を高めていくことを目標としています。

※2:CSR活動 / Corporate Social Responsibility、「企業の社会的責任」。企業が利益を追求するのみならず、企業の経営活動が社会へ与える影響に責任を持ち、あらゆるステークホルダー(利害関係者)の視点を考慮しつつ、企業自らの永続性を実現し、持続可能な社会の構築に向けて貢献するための自発的な取り組み。

三菱商事ってどんなところ?

総合商社の特徴は、なんと言ってもその幅広い事業領域です。グローバルな総合事業会社として、常に変化する全世界の動きをとらえ、社会と共に成長していくことが必要です。企業体として営利を求めながらも、日本だけでなく世界の産業の発展に寄与していくことを目指します。
 たとえば80年代後半、日本全体の景気が冷え込んでいた時に、資源・エネルギー産業に膨大な設備投資をする新規事業の計画がありました。豪州の石炭事業で、現在の三菱商事の収益のひとつとなっています。

「経営が大変な時期、こういった事業にGOサインを出したトップの決断力は素晴らしいと思います」(濱崎先生)

また、ビジネスを通じた環境への貢献など、CSRへの取組を強化し、社会の要請に応えていくことも必要です。

濱崎先生が広報部で作成した会社案内ビデオを見せて戴きました。LNG液化天然ガス事業をテーマに、私たちの暮らしとエネルギーを繋ぐバリューチェーン(※3)についてわかりやすく伝える映像もあります。グローバルな事業展開を行っている三菱商事の魅力を感じ取ることができました。

※3:バリューチェーン / 原材料から商品になるまでの各プロセスごとに関わる事業が、それぞれに付加価値を蓄積し、顧客に向けた最終的な価値を生み出すまでの連鎖過程。

女性が働く社会〜友人達のロールモデル

「『わたしの履歴書』というテーマでお話をするにあたって、折角なので同級生に連絡を取って、『それぞれの履歴書』をたずねてみました」(濱崎先生)

多くの場合は、結婚・出産で退職し、しばらく子育てに専念しますが、『社会との関わりを持ちたい』という思いから、子供の成長と共に社会に復帰して、高校の非常勤講師や、消費者生活アドバイザーなどの仕事に就くケースが目立ちました。

「女性が仕事をしていくには、資格も大切かもしれません。教員免許なども役に立っている方が多いようです。」

現在では産休や育休の利用や、夫との協力によって、会社を辞めることなく働き続ける女性が増えています。


身近な製品の流通を通して商社の仕事を体験しよう(演習)

実際、商社ではどんな業務をしているのか--。キャリアカフェでグループセッションが行われました。

コンビニエンスストア・ローソンやケンタッキーフライドチキン・・・私たちの身近なところにも三菱商事の関連会社があります。ここでは実際に「ローソンで販売されているメロンパン」を例に、原材料から製品となって私たちの手元に届くまでのプロセスを題材に、商社のバリューチェーンについて考えます。

では演習に取り掛かりましょう!

グループセッションでは、それぞれのグループを「商品ができるまで」の各過程の業務内容をポストイットに書き出します。原材料の生産からはじまり、輸入、製造、物流、企画、マーケティング、販売、お客様相談室の設置など、幅広い領域での商品開発の提案に、議論は盛り上がりました。プレゼンテーションでは、3つのグループとも、それぞれに工夫されたバランスの良い事業を展開し、消費者のニーズにこたえるものづくりに取り組んでいました。

 

1回目の授業で学んだ商社の仕事について体感する機会となり、バリューチェーンの仕組みを理解することができました。



三菱商事会社見学

3週目は、東京・丸の内にある三菱商事本社を案内していただきました。強固なセキュリティに守られた大企業の仕事現場を見せていただけるのは、実は非常に貴重な体験です。この日は、濱崎先生が以前所属していた広報部を見学。コミュニケーションに配慮されたデスク配置、世界の情勢をリアルタイムで察知するよう設けられた株価/為替モニター、報道関係者に情報を提供するためのプレスルームなど、目に映るものひとつひとつが学生には新鮮に感じたようでした。


文責 / 現代GP:阿部純子

受講者の感想

  • 商事会社の仕事の幅広さを知る機会となり、入社してからも色んな経験ができる魅力的な仕事だと思いました。そのような場で活躍されている先生に刺激を受けました。
  • 実際に会社を見られたことで「大きな会社で働きたい」という憧れをもちました。就職のことを考えるのに憧れや自分の将来への期待の気持ちも大切だと思います。就職というと、つらいもののイメージがあるけれど、今回の授業でプラスの気持ちを持てた事がよかったと思います。
  • 就活でもなかなか入ることのできない会社の中の様子を見学できたのは、とてもよい刺激になりました。
  • 実はとても身近な生活部分に三菱商事が関わっていることを知り、驚きました。それだけ幅広い分野をカバーしている仕事場だということでしょう。社会勉強になりました。