平成20年度 現代GP講義
キャリアプランニングI(コンサルティング:中村文子先生)
2008年11月19日(水)から3回にわたり、株式会社東京エネルギーリサーチより 中村文子先生を講師にお迎えし、「地球温暖化の現状と私たちにできること 」 として、エネルギーの側面から見たコンサルティングの実際についてお話しいただきました。
中村先生は本学家政学部(現・生活科学部)食物学科のご出身です。大学卒業後 東京電力株式会社に入社し、省エネルギー調査・広報、情報検索ソフト開発、電力データ分析等に従事されました。1996年にウェストミンスター大学大学院(イギリス)で修士号を取得。2000年6月には東京電力の支援を受け株式会社東京エネルギーリサーチを設立。以後 同社代表取締役社長を務められています。
エコロジー(以降「エコ」)について新聞やテレビなどで毎日のように報道されていますが、実際、電気をどのように使うことがエコに繋がるのでしょうか。コンサルティング会社とは何をする会社なのでしょうか。電力とエコを題材に、コンサルティングの手法について学んでいきました。
中村先生が現在の仕事につくまで
大学在学中、長く働くほどキャリアに繋がる仕事をしたいと考えていた中村先生は、東京電力が初めて大学卒の女性を採用し、企業と消費者のパイプ役であるHEIB(Home Economists In Business、ヒーブ)を育てるということに共感を持ち、就職しました。ほどなく結婚して、その10年後に出産。男性より1年遅れで管理職になっていました。東京電力では前例がなかったのですが、夫の海外勤務による休職制度を作ることを提案。夫のイギリス転勤についていきました。ただし、制度を作ってもらったからには、休職して戻った時にパワーアップしている必要がある、また 能力開発の貴重な機会だと考え、当時4歳だった長女の子育てをしながら、社会人留学としてウェストミンスター大学大学院で認知科学、及び 経営学を学び、修士号を取得しました。
「入社から今まで、女性が働く上で様々なハードルがありましたが、周囲の協力もあってひとつひとつクリアでき、後輩たちに先鞭をつけられたと思います」
(中村先生)
イギリスから帰国後、独占事業だった電力業界にも、電気事業の自由化の波が押し寄せます。市場競争が導入され、事業への考え方も社内の雰囲気も一変しました。ちょうどその頃、社内ベンチャー制度(2008年で制度終了)ができ、中村先生はエネルギーのマーケティングや省エネコンサルティングを行う会社の設立を提案しました。企画が通らないことを覚悟していましたが、社内審査会では 『 省エネが必要となる時代。君ができると思うならやってみなさい。しかし、やるからには自分ですべて責任をとるように 』 との結論が出て、制度の趣旨に沿って資本金の50%を東京電力が、30%以上を提案者である中村先生が出すことにより新会社を設立。それが現在の東京エネルギーリサーチです。
中村先生は常にアンテナを張り巡らし、電力事情がよくなるにはどうあるべきかを日頃から考え努力していたので、社内ベンチャーを募集した波に乗れたのだとお話しされていました。
東京エネルギーリサーチとは
東京エネルギーリサーチは、エネルギー問題解決のための調査・教育・コンサルティングを行う会社です。
「最近、毎日のようにテレビや新聞で地球温暖化の危機について報道されています。地球温暖化とエネルギー問題は密接に関わっています。エネルギー問題の解決を通して地球温暖化対策に貢献するのがわが社の使命です」
(中村先生)
温暖化の現状と対策
温暖化の原因であるといわれている温室効果とは、二酸化炭素などの温室効果ガスが、地球を覆い、赤外線(熱)の一部を再び地表に戻すことによります。温暖化対策としては、次のふたつが考えられます。
- 対処療法(温暖化により被害を受けた地域への支援・排出した二酸化炭素の回収)
- 根本療法として二酸化炭素の排出抑制
化石燃料を燃焼させてエネルギーを取り出す際に二酸化炭素を出さないよう、灯油・ガス・ガソリンを燃料とする製品を電化する。その電力消費は二酸化炭素を出さない自然エネルギーや原子力発電でまかなう。使用する電力をなるべく節約する省エネルギー。これらを実現する新しいライフスタイルが求められています。
実際にやってみよう
この講義の演習として、省エネルギーのために私たちが社会に対し何ができるのかを調査し、コンサルティングする課題が出されました。
「省エネは、個人として、地域住民として、企業で働く者として、立場ごとにできることが様々あります。みなさんはどれくらい省エネを実行していますか。私たちが実際に省エネとしてできることは何でしょうか。実際にどのような省エネ行動が個人と企業において考えられるか、プレゼンしてください」(中村先生)
プレゼンの開始
Uさん | : | 「企業の省エネということでコンビニ各社の省エネの取り組みを調べました。コンビニは各社ポイントカードのポイントをCO2排出権と交換したり、エコ物流、『緑の募金』による森林整備事業・緑化事業などに各社取り組んでいます。単に買い物をして満足するのではなく、消費活動以外にも生活全体において自分がどれだけエネルギーを浪費しているのか、どれだけCO2排出に関わっているかについて理解することが重要だと思いました」 |
先生 | : | 「なかなか興味深いです。各社かなり環境に力を入れているんですね。環境問題に協力できるか考えながらコンビニで買い物するのも楽しいでしょう」 |
Kさん | : | 「自宅での電気製品実態把握、分析、改善を行いました。ひとつひとつの電化製品に使用改善のポイントがあります。掃除機は長い時間かけていると満足感があるので必要以上に使ってしまいますが、雑巾がけも取り入れてみようと思います」 |
先生 | : | 「Kさんのように、今まで気が付かなかったことが みなさんもわかったと思います。特にエアコンは電力消費量が大きいので気を付けてみてください」 |
中村先生によるプレゼン総評
「みなさん今まで自分の検針表を見たり、とっておくことはなかったでしょうか。意識してみると季節に応じて使用量の変化があったり、省エネ行動が数字に反映されたりと参考になりますよ」(中村先生)
コンサルティング会社では、まず実態調査が基本業務です。このように身近なことから実態を把握することは、コンサルティングの第一歩に繋がります。実態調査から見えてくること、わかることを浮き彫りにし、それから何をすべきかを提案していきます。そして 『 省資源・循環型社会 』 の実現に寄与していくことが東京エネルギーリサーチの使命であると、中村先生は話してくださいました。
文責 / 現代GP:阿部純子
受講者の声
- この授業をきっかけに、省エネという言葉をキーワードに、もう一度自分の生活を改めたいと思った。
- 就職希望者むけの映像を見る機会や、どのような仕事があるのかを具体的に知る機会を得られた。
- 大学院まで行くかどうかや、会社に入ってからどういう人が求められるのかなどのお話も聞くことができてよかった。
- 発表準備は大変だったが、良い経験になった。
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