平成20年度 現代GP講義
キャリアプランニングI(電器メーカー:籔ゆき子先生)

2008年12月10日(水)から2週にわたり、
籔ゆき子先生(株式会社パナソニック ホームアプライアンス社技術本部くらし研究所LivLa所属)を講師に迎え、キャリアプランニングT(電器メーカー)の講義が行われました。

籔先生は1981年に お茶の水女子大学家政学部被服学科(現在の生活科学部の前身にあたる学部)を卒業。松下電器に入社、洗濯機の技術開発部門に配属となりました。そして5年後商品企画部門に異動し現在に至ります。籔先生は今までに、洗濯機のコース(標準コース・おしゃれ着洗いコース・ウールの洗える洗濯コース・毛布コース)を選べるような技術を日本で初めて開発しました。商品開発部においては縦型洗濯乾燥機、斜めドラム型洗濯機などの商品企画開発を担当しました。



<12月10日:講義1日目>

パナソニックの概要

パナソニックは1918(大正7)年に松下電器産業株式会社として創業し、今年で創業90周年を迎えます。2008年10月からNational、Panasonicの二種類であったブランドをPanasonicに統一し、社名もPanasonic株式会社となりました。

パナソニックの創業者・松下幸之助は、「会社で一番大切なことは明確な経営理念があるということである」という姿勢を示していました。会社にはとても沢山の従業員が働いており、その全員が一つの目標に向かって仕事をするためには、しっかりとした経営理念が必要で、それが無い会社は存続が難しいと思います。パナソニックの経営理念は、エレクトロニクス事業を通じて、お客様の生活や世界文化の進展に貢献するということです。


ダイバーシティの取り組み

お客様の生活や世界文化の進展に貢献するにはダイバーシティ推進が不可欠と考えます。ダイバーシティとは、以下の考え方を指します。

性 別 国籍・年齢に関係なく、多様な人材が活躍できる組織風土づくり
女 性 意欲ある女性の積極登用、経営参画の推進
若 手 経営幹部への早期登用の推進
外国人 主要ポストへの登用、現地化のさらなる加速

⇒ 一人ひとりの能力を最大限に引き出す登用推進

Panasonicはまだまだ男性の多い会社ではありますが、女性の力の活用に力を入れている日本の会社では最先端をいっています。女性役付者推移は2000年726人だったのが現在2008年には倍以上の1820人に増えました。また、女性管理職者数も2000年24人だったのが現在2008年には169人に上っています。参考までに現在どのような管理職に女性が就いているかの例をあげますね。

  • パナソニックテレコム(株)取締役
  • ショウルーム戦略企画室パナソニックセンター東京所長
  • クッキング機器ビジネスユニット長(お茶の水女子大学食物栄養学科出身)
  • 製品安全統括センター所長
  • 情報セキュリティー本部長
  • パナソニックアメリカ副社長

PanasonicにはE-workという取り組みがあります。IT技術を駆使した、フレキシブルな働きかたです。子どもが出来ても在宅勤務をすることにより会社を辞めないで働き続けられるシステムもあります。私も子どもが二人おりますが、産休・育児休暇中はファックスを使って在宅業務を行っていました。在宅勤務を生かして「生活の現場」で商品を使用し、お客様の視点から評価することは生活家電を扱う我が社にとって大きなメリットです。


くらし研究からの価値創造 〜 グローバルくらし研究 〜

私が所属するくらし研究所は、日本以外にも生活研究所を設置し、グローバルに価値を創造しています。例として中国生活研究センターが行った活動を紹介しますね。中国では日本でよく売れるエアコンがまったく人気がありません。現地の調査員が家庭訪問を行い消費者のニーズを把握し、冷蔵庫より少し小ぶりくらいの据え置き型大型エアコンを企画。これを販売したところとてもよく売れました。中国の方は立派なエアコンを持つということが一種のステータスであり、それをお客さんに見せることにより、「家にはこんなに立派なエアコンがあるんだ」とアピールするので、エアコンは大きいほうが好まれるのです。

現地の消費者のニーズを知るということが非常に大切なんですね。住んでいる場所、人が違うだけで同じ商品でもこんなに需要が異なってくることがこの仕事のとても面白いところだといえます。それがグローバルくらし研究の仕事です。


商品企画:携帯電話

さて、実際にみなさんに商品企画について考えていただきましょう。まず、商品企画とはどういうことでしょうか?これは一文字ごとに考えていくと

売り買いして利益を得ること、『あきない』
商う『しな』、商品
それを『くわだてる』、何かを願って計画する
『はかる』、はかりごと

商品(商売の品物)を企画(もくろみ、くわだてる)すること

ということを意味しています。そこで今回は皆さんに、携帯電話の商品企画を考えていただきたいと思います。

<課題>

若者向けの携帯電話の商品企画提案

  1. 需要動向
  2. 市場調査:量販店店頭、
    1. 商品のベンチマーク
    2. 最強のライバル社
    3. お客様のニーズ等
  3. 商品コンセプト(特徴 i.ii.iii.)、ネーミング、価格、デザイン等
  4. 企画台数、販売チャネル、販売地域等

これらのポイントを押さえて下の企画書に実際に自分の企画する携帯電話について記入してみてください。ここで参考までに、実際に商品企画をする際の基本視点についてお話しますね。


商品企画の基本視点は、右の図に集約されます。中心にある円錐は「プロダクトコーン」を参考に組み立ててください。みなさん自分なりに携帯電話の企画書を書いて次回の授業で発表出来るようにしてきてくださいね。



<12月17日:講義2日目>

商品企画提案・討議

それではさっそく皆さんに考えてきていただいた企画書を発表していただきましょう。

<受講者の企画書抜粋>

■機能を選べる携帯

  • 友人にアンケートをとり、その結果を踏まえて携帯電話を考えた。
  • アンケート結果
    • これ以上機能はいらない
    • 充電がもっと長持ちするといい
    • 安い値段が良い
  • コンセプト: 必要な機能をアプリのようにダウンロードできる、又は
    機能を凍結出来るように(例:メール機能を凍結)する携帯電話。
    自家発電できる携帯(振動によって充電できるようにする)。

  • 発売価格:50,000円程度
  • 大きさ:二つ折りでカードサイズ(PASMO,SUICAくらいの大きさ)

◆先生のコメント:

カードサイズということですが、本体の大きさを小さくすることにより画面が小さくなりますよね。日本語は一文字に意味があるので、メールを見るとき画面の大きさが重要になってくるんです。アメリカの携帯はとても画面が小さいのですが、英語は26文字の記号で、特に一つ一つに意味があるというわけではありません。そのあたりの文化の違いによって、需要も変わってくるんですよ。携帯電話を作るとなると、ケースの金型を作るだけで数億円かかります。売れる仕組みも考えてみてください。

みなさんおもしろい意見を沢山ありがとうございました。現在日本では8,000万台の携帯電話が普及していて、年間3,000万台が買い換えられています。この3,000万台の需要を各社で取り合っている状況なんですね。どこが自分の会社の強みであり、どのように差別化していくかを考える必要があるのです。


まとめ

パナソニックでは、企画だから技術のことを知らなくてもいいかというとそうではなく、技術だからといって企画のことを知らなくてもいいということもありません。幅広い視野を持ってもらうために、入社して半年間は海外の工場に派遣されて現地で勉強します。そして次に国内の量販店やパナソニックショップなどで実際に店頭に立ち、販売実習をします。1年ほどの研修を通して広い視野を養うのです。皆さんもまだまだお若いので、今のうちに様々な経験をつんでおくことを強くおすすめします。


記者の感想

ヒット商品を作り上げることは、利益や需要を考え、多くの工程を経るなどとても大変なことです。松下幸之助さんの言葉に、「成功するまでやり続ける」というものがありますが、この言葉どおり成功するまで努力し続けるということが成功する秘訣だと感じました





文責 / 学生記者:坂下あい



受講者の声

  • 商品開発は利益にならないといけなかったり、いろいろと事情があることがわかり、勉強になりました。貴重なお話ありがとうございました。
  • 商品の企画開発についての話を聞くことができ、勉強になった。