平成20年度 現代GP講義
キャリアプランニングI(食品メーカー:唐澤昌彦先生)
最近益々話題となっている食の問題。食品添加物は体に悪いのではないかと思う方々も多いと思います。今回は、2009年1月14(水)から3週に渡り、味の素株式会社の唐沢昌彦先生(品質保証部製品評価グループ専任部長)にお越しいただき、うま味や、食品添加物のリスク評価について学びながら、物事には裏表がある事を理解した上で、自分自身で判断する事の大切さを教えていただきました。
世界共通の国際語、うま味 “UMAMI”
「うま味」は甘味、酸味、塩味、苦味と共に科学的に認められている5つの基本味の1つです。日本人の池田菊苗博士により発見され、代表的な物質に、グルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸があります。
うま味成分は天然に多く存在します。赤ちゃんの飲む母乳の中にも多く含まれており、人間が初めて味わう物 = うま味 と考えて良いのかもしれませんね。
そんなうま味であるグルタミン酸のナトリウム塩を調味料として眼につけ、商品化したのが味の素株式会社だったのです。現在では さとうきびや、タピオカ澱粉などに含まれる糖を原料とし、発酵法を用いて作られているそうです。
風評被害から始まるリスク対応
どの時代においても風評被害は起こるものですね。味の素株式会社も例外ではなく、1920年頃に 「味の素」 の原料は 「蛇」 だという 「原料蛇説」 が大衆の間に広まりました。全く根拠の無い話ですが、この様な風評に対応していくのが、サイエンスの知見に基づいたリスク対応です。
一方で、新しく開発した製品(食品添加物等)についてはリスク評価が関ります。
リスク評価とは、健康影響を及ぼす障害の種類を明らかにし、健康影響の大きさを判断することをいいます。動物試験でのデータに基づき、あらかじめ容認できるリスクの大きさを決め、許容 1日摂取量(ADI:mg/kgで示される)が設定されるのです。
1987年、国連FAO/WHO合同食品添加物専門員会ではグルタミン酸ナトリウムの安全性を再評価し、「ADI notspecified(許容一日摂取量を定めない)」くらい安全で、さらに 「幼児への使用制限を撤廃」しました。
食品添加物は体に悪いものなのか?!
食品添加物とは、製造の過程において、又は食品の加工もしくは保存の目的で食品に添加、混和、湿潤、その他の方法によって使用するものをいいます。
そして重要なことは、天然のものと 化学的合成のものがあるということです。
リスク評価により、食品添加物は安全性と有効性を満たすものと確認されたもの(許可されたもの)が使用されています。天然だから安全で 化学合成品だから危険だということではなく、双方共、使用基準に従って適切に使えば安全性に変わりはないのです。
食品添加物は、冷蔵技術のみでは困難な食品保存、食物をより美味しくするために嗜好性の向上、栄養価の補填、強化といった役割を持っています。
古代エジプトでは食中毒を予防するために岩塩を使っていたように、保存料は昔から使われてきました。そして現代、一人暮らしやお年寄り、共働きの夫婦など様々あるライフスタイルの中で、食の多様性が求められるようになり、そのニーズに応えるべく、加工食品が登場し、食品添加物の研究も進んできたのです。私達の“食”はこのような変遷を経て支えられてきたわけです。
求められる個人の判断力
普通に食事をしていれば問題のない食品添加物ですが、食品添加物と、私達の健康が上手く付き合っていくためには個人の判断力が必要です。何も難しいことではなく、食品添加物にはADIが設定されているということを意識し、過剰な取り過ぎは避け、食事のバランスを考える力が重要です。
食事のバランスを考えることは、健康を考えることにつながり、自分の生活習慣を見直す良いきっかけにもなるのではないでしょうか。
“食”に関する講義と共に、唐沢先生は私達に向けて多くのメッセージを下さいました。
「自分の持っている可能性を大切に、きっかけを大切にして、興味を持ったものについてはとことん追求すること。そのように自分自身が行って身につくものが初めて勉強となる」 (唐澤先生)
学生である私達の身に強く沁みる言葉を頂きました。
3回の講義でしたが、“食” についてだけでなく、学生のあるべき姿をも学べた授業となりました。
文責 / 学生記者:茂木成美
受講者の声
- 食品会社に就職する、というよりは、就職に対しての意識のことも話してくださったため、ためになったと思う。
- 知らない、ということは、よくないことなのだと思った。今後は、正しい知識を得たうえで、物事にたいして、自分なりの判断をしていきたいと思う。
- 今まで、なんとなく有害だと思っていた添加物について正しい知識を得る機会となった。
- 視野を広げることができた。
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