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スタディツアー実施報告(ベトナム)

2012年9月6日更新

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お寺の孤児院

2012年8月31日~9月6日、グローバル協力センターの「共に生きる」スタディグループ活動の一環として、学部2年生から博士後期課程院生を含めた11名と引率の教職員2名によるベトナムスタディツアーが実施された。
ホーチミン医科薬科大学副学長Tuan先生、国際協力課のHoang女史の多大なるご協力の下、ベトナム南部に位置する最大都市ホーチミン市と、ベトナムの穀倉と称されるメコン・デルタ地域に位置するカントー市へ赴くことができた。

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孤児院でお話を伺う

渡航前は参加者の調査テーマに合わせて「子ども」・「栄養」・「社会政策」の3班を編成。全体および各班で事前勉強会を実施し、調査準備を進めた。

1986年の第6回共産党大会よりドイモイ政策へ路線転換を果たしたベトナムでは、共産党一党支配による社会主義体制を維持しつつ市場経済化をすすめており、世銀の経済発展展望報告書によると、今後2年間のGDP成長率は世界第22位に入るまでに急成長している。人口に占める30歳以下の割合は50%※1、成人の識字率は93%(15歳から24歳の識字率では97%)※2と高く、勤勉な国民性ゆえに益々の成長が期待される。ツアーに同行通訳をしてくれた27歳の青年は、貧しい環境下で大学に進学、現在は英語講師をしているとのことだった。語学力のみならずベトナム観光大使かと思われる豊富な知識量に、ベトナムの若者の能力の高さを感じた。

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メコンデルタ流域集落

ツアーでは、格差問題、公的イデオロギー教育、「共に生きる」社会モデルについてなど、各人のテーマに迫るべく、ホーチミン市ではTuan先生とNhi先生の講義、女性史博物館と戦争博物館の見学、ホーチミン医科薬科大学の訪問、カントー市では保育園・孤児院・病院各2カ所、メコン・デルタ流域の村を訪問、インタビュー調査を行った。
教育の現状としては、2005年に改正された教育法の下、知識を教え込む教育から、子どもの主体性や自律性を重視した教育へと転換している。訪問園では情操教育や自由保育を実施していたが、そのような教育は浸透しているわけではなく、また「自由」であるがゆえの教師の葛藤や困難さも見受けられた。

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保育園の様子

孤児院は、孤児、障害児、HIV感染児の養育や、貧困層を対象とした学校機能を持っていた。衛生・栄養状態は必ずしも良いとは言えず、それは病院にも通じるものがあった。地域病院では設備や医師の不足なども相まって、患者2人に対して病床1つという状況も珍しくないようだ。

本ツアーは短期間であるがゆえ、ベトナムの「実」社会に迫ることはできなかったかもしれない。しかし、訪問する先々で温かい歓迎を頂戴し、ベトナム人の温かい国民性を知るに充分であった。それは帰国した今でも忘れ得ない。改めて、御礼申し上げたい。今回のツアーを通し、現地に赴き五感を働かせて調査することで、ベトナムの現状を知り、問題の理解を深めることができた。日本にも共通する問題があると気がついたことも、大きな収穫である。今後の「共に生きる」社会を考えることに生かす手がかりとなった。

※1 Dr.Tuan講義より。(参考:VNGSO 2010、0-15歳 24.5%)
※2 出典 United Nations,2012: Statistics Division Social indicators, Education

(人間文化創成科学研究科 人間発達科学専攻 D3 吉野 さやか)

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