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国際交流基金日本語パートナーズ事業参加報告

2015年4月7日更新

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ムクダハン県

国際交流基金アジアセンターが実施する「日本語パートナーズ事業」は、幅広い世代の人材をASEAN諸国の主として中等教育機関に派遣し、現地日本語教師と学習者の日本語学習のパートナーとして、授業のアシスタントや会話の相手役といった活動をするとともに、教室内外での日本語・日本文化紹介活動等を行い、ASEAN諸国の日本語教育を支援するプログラムです。第一期のパートナーとしてタイに派遣され先日帰国した文教育学部4年丸山栞さんに現地での体験を報告していただきました。

「まるせんせい」と呼ばれて

東南アジアで日本語教育に携わりたい。そんな漠然とした願いが、運よく叶った。昨年4月に国際交流基金の「日本語パートナーズ事業」に応募し、9月から今年の3月まで半年間、タイ東北部ムクダハンの中学高校で日本語を教える機会に恵まれた。

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中学1年生の生徒と

派遣先では日本語がちょうど開講されたばかりで、一緒にチーム・ティーチングをするタイ人の先生も大学を卒業したばかり。何もかも初めての中、手探りでの授業が始まった。担当するのは中1、高1、高2、高3の授業、及び、週1回の日本語クラブでの文化体験。日本のスーパー・サイエンス・ハイスクールを見習いたいという学校方針もあり、190人近くの生徒が日本語を学ぶことになった。「タイ人の先生も私も若いからこそ、柔軟に工夫しながら教えることができる」と考えていたが、実際は十分に打ち合わせができないままに授業が進んでいってしまうことも多く、当初はもどかしい思いもした。ただ、生徒たちは学習に意欲的で吸収も速く、私の心配とは裏腹に、なんだかんだ楽しく勉強できているようだった。全くの初心者だった生徒が、ひらがなを読み書きできるようになり、簡単な会話をできるようになり、少しずつ日本語を使うことに自信をつけていく過程を見るのは、興味深くもあり、感慨深くもあった。

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杵で餅をつく男子生徒たち

毎週木曜日の日本語クラブでは、高校生に文化体験をしてもらった。所属する15人のうち、ほぼ毎回欠かさず参加していた8人は男子生徒。日本のアイドルやアニメが好きで、日頃インターネットを通じてサブカルチャーには触れていたものの、浴衣や折り紙などの日本文化には触れたことがなかった。寮暮らしをしている生徒たちは料理を作る際も大変手際がよく、理系が強い学校ということもあって調理中もまるで実験中かのように、楽しそうに参加してくれた。正月になり、生徒に餅を食べてもらおうと考えた私は、1週間前から「カオニャオ(タイ語で「もち米」の意)を蒸してほしい」とペアを組むタイ人の先生に頼んでおいた。ほかのタイ人の先生たちに餅について聞かれるたびに彼女が、「餅は大福とよく似たデザートだ」と説明していることが少しひっかかっていたが、当日になって、予感した通り言語の壁が取り違いを引き起こしていたことが発覚。なんと、もち米とタイ語で発音が似ている白玉粉が誤って用意されていたのだ。そこで急遽、炊いてパックされているもち米を食堂で購入し、湯煎してからソムタㇺ(青パパイヤのサラダ)用の杵でついた。タイでは、こうしたアクシデントは日常茶飯事だが、さすがにこれにはかなり驚かされた。

様々な制約がある中でも、どうすれば生徒のためになるコンテンツを提供できるか、自問自答しながらの半年間だったが、生徒たちの素直さ、優しさ、勤勉さに絶えず支えられ、教師として、また、日本人として貴重な経験を得ることができた。本当に、ありがとう!

(文教育学部言語文化学科グローバル文化学環4年 丸山 栞)


 

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