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学内公開講座「ネパールにおける学校教育」報告

2016年6月23日更新

講師のディヌ氏
講師のディヌ氏

2016年6月23日(木曜日)、お茶の水女子大学の人間発達科学専攻博士後期課程3年生ディヌ・バズラチャルヤ(Dinu Bajracharya)さんを講師としてお招きし、学内公開講座「ネパールにおける学校教育」を開催しました。全学共通科目「国際共生社会論実習」(スタディツアー)の事前学習の一環として行われた講座なので、ネパールの概況、文化についての紹介に続いて、日本と比較しながらネパールの教育についてお話しいただきました。

ネパールはインドと中国に接する細長い国で、ネパールの8割以上の人々が農業を主な職業としています。ディヌさんによるとネパールの教育制度は5年(初等教育)-3年(前期中等教育)-2年(中等教育)-2年(後期中等教育)-3年(大学)-2年(修士)-3年(博士)であり、初等教育の総就学率(GER)は130.1%にのぼるものの、5年生までの残存率は82.8%まで下がっています。また、留年し再度同じ学年をやり直す学生の割合を示すリピーター率は19.9%となります。ネパールの教育の歴史を1950年代に遡ってみると、当時のネパールは大学が2校、専門学校がわずか1校で全国の学校総数は310校しかありませんでした。なぜかというと、その時期までネパールは独裁ラナ家による専制時代でした。この時代、主に学校はラナ家とその一族のために作られ、普通の人は教育を受ける機会が限られていました。1846年から1951年までの100年は教育の停滞の時期と言われており、いまもネパール人に影響していて、教育制度も国の発展とともに模索しながら定着に向かって前進しています。

講演の様子
講演の様子

ネパール教育のもう一つの特徴は公立学校と私立学校の間に目に見えるくらい激しい格差が存在していることです。私立の学校はきれいな校舎と高級な設備、また優秀な教師が集まっています。しかし、一部を除き、公立学校の生徒は暗い教室の中で、揃っていない机と椅子、そして無断欠勤をする教師とともに勉強することしかできません。また、私立学校は主に英語で授業をしていて、生徒たちは将来海外留学できるように英語を身に着けることに集中しているそうです。また、ネパールの教育制度の問題のもう一つの例として、ディヌさんは自分自身の経験を持ち出し、3年制のネパールの大学から4年制の日本へ留学するに当たり、学部から入り直さざるをえず時間の無駄があったと説明しました。

講義の後半、ディヌさんは自分の研究――ネパールにおける中退リスクの規定要因を話しました。それは経済と政治に深く関連しているテーマであり、ディヌさんは学校を辞めたいがまだやめていない子どものためにフィールドワークを実施して研究しています。今回の勉強会はネパールの教育事情に関心のある学生にとってとてもわかりやすくて収穫が豊富な機会になりました。また、9月の現地調査にとっても非常に役立つ事前勉強になりました。ディヌさん、ありがとうございました。

(人間発達科学専攻M1 黄 薇嘉)

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