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学内公開講座「カンボジアにおける平和構築」報告

2016年7月23日更新

2016年7月23日(土曜日)、JICA国際協力専門員である小向絵理さんをゲスト講師としてお招きし、学内公開講座「カンボジアにおける平和構築~紛争による負の影響からの脱却~」を開催しました。
平和構築を目的として活動している組織には様々なものがありますが、JICAは「開発援助」を通じた「平和構築」を行っています。途上国で被災者個々人に対する緊急の医療サービスや食糧の提供を行う国連機関やNGOなどの「人道支援」に対し、JICAの「開発援助」は、紛争の発生を予防すること、和平合意後に紛争を再発させないためのコミュニティー作りを目的とした、国家レベルの活動です。現地での活動では、対立していた特定の集団に偏った支援をすると、コミュニティー内の対立を助長することになるので、そのようなことにならないよう慎重に配慮しながら行われています。

講師の小向絵理氏
講師の小向絵理氏

カンボジアでは過去に20年に渡る紛争が起こり、1991年にパリ和平合意が締結された後も、負の影響を強く残すこととなりました。その一つが、地雷です。パリ和平合意の後も局地的な紛争は止まず、10年後の2000年にようやくわかった全国の実態は、国土の46%、人口の45.3%が地雷・不発弾の危険にさらされている可能性があるというものでした。紛争が終結し、それまでタイの難民キャンプに逃れていた人々がそれぞれの故郷に帰還する際に被災し、帰還のピーク時には被災者が年間4,320人に上りました。
紛争終結後、国連カンボジア先遣隊(UNAMIC)は、動員解除された元戦闘員からなる地雷除去訓練ユニットを設立しました。UNAMICはその後、国連カンボジア暫定機構(UNTAC)を経て、1993年からはカンボジア政府組織、カンボジア地雷対策センター(CMAC)として独立し、今日に至ります。JICAはCMACに対して、除去作業の効率化のための機材の導入や、情報通信、組織運営などの分野で専門家の派遣を行ってきました。1998年に本格的な活動が始動され、現在では年間除去面積が大幅に増え、年間被災者数はピーク時の約30分の1に減少しました。

講義の様子
講義の様子

今回のご講演で最も印象的だったのは「南南協力」の取り組みです。CMACは今、支援される側から教える側へと変化してきています。これは、地雷・不発弾の影響を受けている他の国々に、カンボジアの地雷除去の知見を伝える研修や会合を開く取り組みで、これまでにコロンビア、ラオス、アンゴラに対して行われてきました。日本が支援する場合には得られない、同じ問題を抱える国どうしだからこそ共有できるものがあり、双方のモチベーションが上がるといった効果が見られます。初めコロンビアなどの国々はJICAに直接協力の依頼をしたのですが、JICAがそれをCMACが代わって行えるよう仲立ちしたことで、こうした活動が生まれました。このお話を聞いてこれまでの国際協力のイメージが変わり、直接的で目に見えやすい協力だけでなく、下支えとなって国どうしの協力の機会を提供するパイプ的な活動もあるということを知りました。あくまで主役は相手国の人々であり、その国が主体的に問題解決に取り組んでいけるよう長いスパンで淡々と支援を行う姿勢が心に残りました。8月末の現地訪問では、直に現場を見て、本当に意味のある国際協力のあり方はどのようなものなのか、肌で感じてきたいと思います。
小向さん、貴重なお話ありがとうございました。

(文教育学部言語文化学科1年 若槻 由衣)

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