ページの本文です。
2019年9月1日更新
2019年8月25日(日曜日)から9月1日(日曜日)の8日間、「国際共生社会論実習」・「グローバル文化学実習I」ネパールスタディツアーが実施され、学部生8名、教員2名の計10名が参加しました。
参加者は6回の事前学習を通して「ネパールの歴史」「ネパールの民族・宗教・社会」「ネパールのジェンダー課題」「ネパールにおける再生可能エネルギーの社会経済的インパクト」というテーマのもと文献購読・議論を行いネパールに関する知識を得ました。また、事前学習や文献調査を通して個別に調査テーマを決定し、各自調査の準備を行いました。
現地では首都カトマンズを中心に3ヶ所を訪問しました。まず、ジェンダー専門家のお話、お茶の水女子大学OGとの会食、在ネパール日本大使館、JICAネパール事務所、AEPC(代替エネルギー促進センター)本部、NGOサルタックでは事業の説明やネパールの現状をうかがい、多岐にわたる視点でネパールに対する理解を深めました。また、JICA事業地の公立学校、NGOサルタックの学校での活動、農村部のラメチャップ郡とカブレパランチョーク郡のAEPC事業地を訪問し、現地の方の生活を肌で感じました。さらにAITM(Asian Institute of Technology & Management)では同年代の学生と相互プレゼン・グループ交流を行い、若者目線でのネパールの現状についての意見を聞く機会を得ました。
現在カトマンズでは多くの子どもが大学進学を見据えて教育を受けています。その一方で、農村には中学以上のクラスがなく、子どもが教育を受けるために農村部からカトマンズに出てくるという問題が存在するそうです。JICA事業地の公立学校では通う生徒の多くが貧困層で、農村部の親元から離れて、裕福な家に住み込み、朝晩は働き、昼間は学校に行くような生活をしているという説明がありました。また、働く家の主人は良い人とは限らず、手伝いをしていたときにコップを割ってしまっただけで実家に帰されてしまったという事例も紹介していただきました。お話を聞いた生徒のなかには、自分の村には小学校しかないため、村の子のほとんどがカトマンズに来て勉強すると答えてくれた子もいました。このように、多くの子どもや親、地域が教育を受けることの重要性を感じている現在も、都市部と農村部の間に教育格差が生じてしまっていることを学びました。
AEPC事業地の2つの農村ではソーラー発電、バイオガス、小型水力発電の事業サイトや受益者の家の様子を見学させていただきました。ソーラー発電は川からの水を引き上げるために使っており、水が貯水槽からパイプを通じて各家庭の蛇口から出てくる様子を見学することができました。また、ソーラー発電は1つの婦人会が運営・管理しているという説明があり、女性が社会のなかである程度の地位を確立していることが推察できました。双方の村の住民が、エネルギーの普及により家事以外のことに費やす時間が増えて子どももより長時間勉強できるようになった、と仰っていました。現金収入の獲得につながる事例も伺いました。このように、エネルギーへのアクセスの拡大は、ただ電気を使うことにより生活水準が向上する効果があるだけでなく、ジェンダー格差や経済的格差のような諸問題を改善するきっかけにもなっていることが分かりました。
このスタディツアーでは、毎日が新たな学びと感動の連続で非常に充実していました。都市部と農村部の双方の生活に触れ、現地の様々な立場の方からお話を伺うことは、座学や文献調査だけでは知り得ないことを学ぶことができる有意義な経験でした。それだけでなく、共に参加するメンバーと意見を共有することも多くあり、自分とは異なる見方をしている人からも気づきを得ることができました。このような貴重な機会に恵まれたことに感謝し、このスタディツアーを通して得た経験や感じたことを今後の学習に生かしていきたいです。
(生活科学部心理学科1年 今西 凜花)