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「難民アシスタント養成講座」参加報告

2019年10月15日更新

「難民問題。それは難民自身の問題ではなく、難民を受け入れる側の問題であり、私たちの問題である。」
今回の講座で印象に残った数々の言葉の一つです。

2019年9月21-22日、明治大学リバティタワーで開催された難民支援協会(Japan Association for Refugees:以下 JAR)が主催する難民アシスタント養成講座<40期>に参加させていただきました。3連休中ながら、約90名もの学生や社会人が参加しており、関心の高さがうかがえました。2日間に渡る講義では、JAR理事長、理事、スタッフ、弁護士の方などの専門家の方々や難民の方から直接ご講義いただきました。トピックは、日本の難民支援の現状について生活支援から法的支援、日本の移民政策、海外での受け入れ事例とトレンド、そして私たちに何ができるのか、など多岐に渡ります。

毎日のように現場と携わっている専門の方や当事者である難民の方のお話からは、過酷な現場の様子が語られました。あまり知られていませんが、難民申請中の難民は、親戚や知り合いがいない限り、住むところもなく、働くこともできず、食べることもできないホームレスの状態に陥ります。難民申請は長くて10年かかることも。また認定されるには、書類を山ほど準備して、なおかつ全てに日本語訳をつける必要があります。翻訳はボランティアで協力してくれる人を見つけない限り、かなりのお金がかかります。それでもなお、無事に認定される可能性は1%以下。先の見えない不安を何年も何年も抱え続ける彼らの苦悩は計り知れません。
特に、弁護士の方がお話された収容所の現状は衝撃そのものでした。収容所とは、VISAや在留資格を持たない外国人やオーバーステイしてしまった外国人が収容される施設です。ほとんどの方が無期限収容で、そこでは医療が行き届かず、精神的にも参ってしまい、自ら命を落とそうとする人もいます。難民は必要な書類を持たないで入ったのではなく「持てない」状況で命からがら母国を逃げてきたことを忘れてはいけません。
一方で、難民の受け入れに成功している国の例も紹介されました。難民を社会統合の視点から考え、社会の負担ではなく社会に大切な人材として語学や職業訓練、定住支援を行う国もあります。その他、メンターを養成し難民の方を全面にサポートするような制度を実施している国も紹介されました。日本も応用できるような良い事例が沢山あることも新しい発見でした。

昨年日本で受け入れられた難民は、たった24人。しかし、世界には7,080万人もの難民がいます。さらにその半数以上が子どもや女性です。もちろん多くの難民を受け入れることは簡単なことではありませんし、解決しなければいけない難しい問題がまだまだ残っています。しかし私たち市民レベルでできることもたくさんあります。

まずは、彼らのストーリーに耳を傾けてみませんか?日本で生活していると、難民問題は自分とかけ離れているように思われるかもしれませんが、JARが公開しているウェブマガジン「ニッポン複雑紀行」には日本に住むたくさんの難民の声が寄せられています。厳しい現状だけでなく、日本で受け入れられたことで幸せに暮らせるようになった、日本に感謝している、などのポジティブな言葉も並んでいます。読んで現状を知るだけでも、難民問題を少しだけ、自分に寄せて考えてみる機会になると思います。

今回の講座で、私自身もともと難民問題に関心はあったものの初めて知る事実が多く、心揺さぶられるようなお話を最先端で活動されている方から伺うことができたのは大変有意義な時間になりました。また2日目の最後のディスカッションでは、関西から夜行バスでやってきた同学年の学生をはじめ、無料低額診療事業に携わるお医者さんなど、様々な年齢層や背景をもつ方と意見を交換することができたのも良い経験になりました。
難民問題にますますの危機感を感じたとともに、日本でもより多くの人が認知し、自分ごととしても問題意識をもつ必要があると強く感じています。また、本講座で自分が見聞きしたことを周りの人にも共有するとともに、翻訳のお手伝いをはじめ自分にできることから行動に移していこうと思います。
貴重な機会をいただいたこと、この場を借りて改めて感謝申し上げます。

(文教育学部言語文化学科グローバル文化学環3年 大山 可乃)

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