ページの本文です。
2020年2月28日更新
11月9日、徽音祭学術企画として、国際共生社会論実習カンボジアスタディツアーの報告を行いました。報告は、調査テーマ別に、以下の2つのグループに分かれて行いました。
「子供の暮らし・教育・職業選択と貧困」
「保健・農業・情報・政治と貧困」
2つのグループとも、貧困を横断的なテーマに据え、各自の調査テーマに沿ってフィールドで調査したこと、これに基づく考察を発表しました。
子供の暮らし・教育・職業選択と貧困のグループからは、農村部の教育について、以下のような報告がありました。
・現在、農村や貧困地域にも学校はあり、授業料は無料なので、貧困層であっても、学校に通える環境は整備されている。実際、就学率も上がっている。一方で、中学校の途中段階でドロップアウトする生徒が少なくない。
・その背景として、試験に合格するためには補習を受ける必要があり、これにお金がかかること、教員の給与が低く、教育の質に問題があることがある。また、がんばって中学を卒業しても、農村では、農業、工場で働く、出稼ぎ、といった相対的に収入が低い職につくことしかできないと考えられており、そうであれば、がんばって中学を卒業する意味がないという考え方がある。
事前学習の段階で考えていた、教育を受けて貧困から抜けだす、という図式が、カンボジアの農村や貧困層については成り立たないのではないか、という理解が得られました。こうした中、子供たちは、将来に希望を持てないという大きな問題も指摘されました。
一方、保健・農業・情報・政治と貧困のグループからは、以下のような報告がありました。
・貧困層への医療費免除の仕組みとして、「ID Poor」という制度があるが、実際にID Poorの資格を示すカードをもらえるかどうかは村長の判断によるため、貧困なのにもらえない、またその逆のケースもある。
・公立病院やヘルスセンター(保健所)の医師や看護師は、個人のクリニックも経営していて、公立病院やヘルスセンターに来た患者を、個人のクリニックで有料で診ることもある。このことは、医師や看護師が、有料の個人のクリニックでの診療を優先するという形で、ID Poor カードによる医療費免除を受ける患者は、十分な受診を受けられないことにつながる。
2つのグループの報告から、貧困層を支える「制度」はあるものの、その運用や機能には問題があり、貧困層への十分な支援とはなっていないことがあることがわかりました。また、教師や医師の給与を支える税収の不足も大きな問題です。
こうした状況を改善するには、人々の声を政治に反映していくことが重要ですが、現在カンボジアは、最大野党が解党され、与党独裁の状態にあること、こうした状況を批判する立場にある新聞も廃刊に追い込まれるという厳しい状況にあります。
今回のスタディツアーでは、このような厳しい現実を含めて、文献からは学べない、多くのことを学ぶことができました。徽音祭での報告は、こうした現状と問題認識について、多くの方々と共有する機会となりました。