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「2021年度第2回NPO活動紹介セミナー」実施報告

2021年7月7日更新

2021年6月29日に開催された第2回NPO活動紹介セミナーで、島根県にある離島・海士町の公営塾「隠岐國学習センター」の日常、そして生徒たちと一緒に取り組んでいる活動について、同センターで教務スタッフをされている塚越優さんと、お茶の水女子大学生で、現在同センターで長期インターンをされている水越日向子さんからお話を伺いました。

「星を見たり、海を見たり、緑を見たり」する離島の生活は、大陸の真ん中(ロシア)で生まれ育った私にとって理想的にしか見えませんでした。海士町には夜中まで営業しているレストランはありませんが、そのおかげで東京では想像できないほど美しい星空が見えます。チェーン店もないし、コンビニもありません。完全に都会っ子になっている私にとっては想像しにくい場所ですが、塚越さんと水越さんがおっしゃっていた通り、海士町は「ないものはない」ところです。「ないものはいっぱいあるが、それは全部なくてもいいものばっかり。ただ、快適な生活に必要なものはなんでもある」という意味で、これが海士町を最もよく表している言葉だそうです。

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画面1:高校と地域の関係性について

「ないものはない」離島の存続に直結する、どうしてもなくてはいけないものは学校です。海士町は人口がピーク時の3分の1に減少し、海士町(を含む島前地域)にある唯一の高校である島根県立隠岐島前高等学校へ入学する生徒は30人もいない状態になっていました。その唯一の高校の存続が危ぶまれていましたが、教育魅力化プロジェクトが発足し、平成20年からは入学する生徒が増えています。少子高齢化や都市化をはじめとした日本のいろいろな事情を考えると、かなり稀な展開かと思います。

そこで、島における教育の難しさが表面化しました。高校が一校しかない中、背景、学力、興味・関心、目指したい進路の違う生徒が集まってくることによる難しさです。教員が少なく民間教育に頼る選択肢もない中で多様な生徒への対応が求められ、その解決策のひとつとして公営塾「隠岐國学習センター」が設立されました。

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画面2:ゲストによる活動紹介

公立の塾というのは珍しい存在ですが、隠岐國学習センターは島の高校生に快適な学習スペースと学習機会、そして自立学習をキーとする指導を提供し、生徒が自ら学ぶ力を育成することを目的としています。島の高校生をそれぞれの夢につなげるのが隠岐國学習センターのコンセプトで、「つながるまなびや」を標榜しています。

水越さんが紹介してくださった生徒と一緒に自由に考えていく活動に加え、肉じゃがを作るゼミの話が印象的でした。生徒の中で流行っていることをもとにして、生徒に自己肯定感を与えるとともに、改めて自己像について考えさせます。新しいアプローチを受け入れる土台があり、塚越さんや水越さんのような若い専門家にとっても、離島の問題に取り組みながら自己実現できる場になっているんだなと感じました。
追加で2時間くらい延長したい、大変有用なセミナーでした。

(生活科学部心理学科4年 ワブーリニク・マリヤ)

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