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2022年3月17日更新
今回のブータン連続セミナーでは、Real Royalty 制作の『Asia’s Monarchies』「The Magnificent History Of Bhutan’s Royal Family」を視聴しました。タイトルの通り映像はブータンの王室、君主制に関するものでしたが、特にその「裏」の部分に焦点を当てた珍しい内容でした。
セミナー前半では、歴代国王の功績を辿りながら、今まであまり語られてこなかった政策の背景や、彼らを取り巻く陰謀・権力闘争について、研究者やブータンにおいて重要なポストにつく方々のインタビューと共に明かされていきました。
歴代の国王がブータンの人々の心を掴み、これまで統治を続けてこられた理由のひとつに、仏教信仰の利用があったそうです。映像の中では、自分自身を仏と結びつけることによって「国王は崇拝の対象」という概念を人々の心に植え付け、従うように仕向けた…といったお話や、国民の敬愛を集めるために、ブータンの建国の父を連想させるワタリガラスを王冠にあしらった…といったお話も出てきました。
また、国を統治していく上で障壁となるものは容赦無く排除していったそうです。「幸せの国」として名高いブータンですが、実は、幸せとは程遠い陰謀や権力闘争が渦巻いていたのかもしれません。ブータンの裏側に迫った珍しい映像資料は、様々な犠牲の上に「幸せの国」があることを教えてくれました。
セミナー後半には、コメンテーターの平山雄大先生から、イギリスのブータンに関する資料や初代国王の写真から読み取れる王室の情報についてご解説いただきました。
平山先生によると、ブータン王室の成り立ちを知るためには、初代国王ウゲン・ワンチュクの父親であるジグメ・ナムゲルについて理解する必要があります。ジグメ・ナムゲルについて触れられている150年以上前の資料からは彼とイギリスの友好関係が読み取れ、彼が国内随一の実力者となっていく背景を考察することができるとのことでした。
また、歴史の真実を明らかにする資料の収集に熱心な先生は、遠い昔に撮影された初代国王の写真の撮影場所を、時代背景や背後に写っている壁の細かな特徴から特定されていました。正確な撮影場所を明らかにするためにワンデュチョリン・ゾンと呼ばれる建物の内壁を一日中調査していたこともあるそうで、研究熱心な先生の興味深いお話が聞けました。
ブータンの裏側や知られざるエピソードに触れられた貴重な回となりました。
(文教育学部言語文化学科1年 山本 愛理)