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第21回SDGsセミナー「国際協力の現場から:JICAとUNICEFでの教育、保健分野の協力について」実施報告

2022年12月7日更新

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講師の小島路生氏

2022年12月6日(火曜日)の第21回SDGsセミナー「国際協力の現場から:JICAとUNICEFでの教育、保健分野の協力について」では、国際協力専門家であり、NGO事務局長や金沢大学非常勤講師も務めていらっしゃる小島路生さんにお話を伺いました。小島さんは、ご自身の学生時代の経験も含め、国際協力の現場のお話を詳しく語ってくださいました。

小島さんは、これまでJICA(独立行政法人国際協力機構)やUNICEF(国際連合児童基金)を通して国際協力の現場で多く活躍されてきましたが、大学時代は法学部に所属し、国際的なことに関心はありつつも“国際協力”には興味がなかったそうです。しかし、阪神淡路大震災の復興ボランティアに参加した際の無力感、学生時代にフィリピン学生と行ったワークキャンプ、ネパールでの国際交流事業といった“現場”での活動を行っていく中で感じた“貧困なのにも関わらず総じて途上国の人が幸せで楽しそうだ”というギャップなどがきっかけとなり、国際協力の道を目指すようになりました。

大学卒業後はアメリカの大学院へ留学。英語に苦労しながら国際協力に関する学びを深め、インドネシア・ジャカルタのユネスコ事務所でインターンを行うなど、忙しい毎日を過ごしました。その後、JICAの青年海外協力隊として中米・グアテマラで教育支援に携わりました。ここでは、小学校教員向けの算数研修や図書館の設立・改善に取り組みましたが、スペイン語という語学の壁は大きかったそうです。

グアテマラでの活動の後、JICAの国際協力専門家として中米・ホンジュラスに赴任し、貧困地域・貧困層のみが罹患し苦しんでいるシャーガス病対策のプロジェクトに携わりました。ここでも、コミュニティ住民や他の援助機関など様々な関係者とのコミュニケーションが求められるなかで語学の壁というものがあり、さらにJICA専門家としては“日本語”での文章作成能力も必要なのだ、と実感したそうです。

JICA専門家としての活動を終えた後は、JPOとなり、UNICEFのインドネシア教育担当官として、インドネシアで2年ほど勤務しました。限られた環境の中で一生懸命に学ぶ姿を見せる子供たちを支えるため、特にインドネシアで問題となっている中途退学問題を解決するECD(Early Childhood Development Program)という貧困地域のコミュニティ型就学前教育プログラムに取り組みました。また、インドネシアの中でも開発が遅れているパプア州でも、“すべての子供”がよい教育を受けられることを目指す支援EFA(Education for All in Papua Province)を進めました。さらに、インドネシアで発生した震災時には、被害を受けた現地小学校の復興支援などにも携わるなど、様々な分野で貢献されました。UNICEFでの活動を通して、自分が国連職員として働き続けたいのかどうか、自分の強みは何か、そして、自分が本当にしたいことは何か、といったことについて考えを深めることができた小島さん。「途上国支援の仕事も大切だが、日本人として日本に向き合う時なのでは」と感じ、富山県立山町で地域おこし協力隊になり、3年間、過疎地域の活性化に取組みました。そして今、一般社団法人Think Locally Act Globally (TLAG) を設立し、北陸を拠点とした地方の視点からの国際協力と「日本の地方と途上国双方の生日合い」による地域づくりに取り組んでいます。

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質疑応答の様子

このように国内外、様々な地域で”現場“を中心に活動された小島さんは、最後に重要なことを二点提示してくださいました。

一つ目は”自分一人では何もできなくても誰かと繋がればできることがある“ということ、二つ目は”international(国際)はlocal(地方)の集合体“だ、ということです。国際協力というのはその地域のローカルな部分に焦点を当てているわけで、しかし国際的な視点があるからこそそのローカルな部分に気付くことができる、つまり双方は密接に関係している、ということです。どちらかだけに着目するのではなく、どちらにも目を向けながら国際協力について考えていくことが求められているということです。

小島さんのように色々な“経験”を積むということは、簡単なことではありません。しかし、その“経験”からのみわかること、もたくさんあるでしょう。小島さんの「学生時代は本気で悩み、考えるよりも体感を。いろいろな経験(寄り道)をするのも大事」という言葉を胸に、学生時代にたくさん悩み、たくさん挑戦してみたいと思いました。

(文教育学部人文科学科2年 村上 桃菜)

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