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第23回SDGsセミナー「国際協力と開発を考える―ブータンの開発課題と日本の協力を通じて―」実施報告

2022年12月16日更新

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講師の須藤伸氏

12月15日(木曜日)15時〜16時30分、本学のグローバル協力センターが主催する第23回持続可能な開発目標(SDGs)セミナーが開かれました。今回のセミナーでは、JICAブータン事務所企画調査員の須藤さんを講師にお招きし、ブータンの開発課題から、ブータンに対する日本の協力の現状やブータンの発展について理解を深めました。

まず、日本とブータンの関係を中心にお話を伺いました。ブータンは国民総幸福量(GNH)という尺度を用いて国全体の方向性を決定しています。GNHはSDGsの尺度と似ている側面を持っており、4つの柱・9つの項目をバランスよく達成する事を目指しています。日本はOECDに加盟する二国間援助国の中で最大のパートナーで、ブータンに様々な協力をしています。JICAは農業・インフラ整備・保健の3つの柱に重点を置いて協力をしており、王室からの名称授与を受けた王立感染症センター建設計画もJICAが協力しています。このように、日本とブータンは国際協力という側面で多くの関わりのある国であるということがわかりました。

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ブータンの開発課題とSDGs

次にブータンの開発課題についてお話を伺いました。ブータンではGNHの達成を軸に政策の方向性が決定されていますが、現在若年層の失業率向上や都市と農村の格差拡大が進んでおり、若者の間で社会の閉塞感があるそうです。都市は若者にとってチャンスのある場所でしたが、実際に都市で働いている若者は多くの困難に直面しています。一方で、都市部よりも貧困率の高い農村の若者は今の生活に満足しているそうです。仕事の充実感やコミュニティ内での若者の居場所があることに加え、農村部での道路の開通がより生活の満足感を高めています。都市部の方が貧困率が低く識字率が高い、農村部の方が貧困率が高く識字率が低いという調査結果だけでは、人々が心豊かな生活を送っているか、生活に満足し充実感を持っているかという実態は把握できないことがわかります。

これらのことを踏まえ、発展を捉える多面性について考えました。GNHの理念に沿って開発を促進し、高い経済成長を達成したものの、若者の生活への満足感や失業者問題は改善されているとは言えない現状です。SDGsやGNHのような多面性のある指標だけでは見えない生活への満足感や心豊かな生活の実態があるということがわかりました。ブータンにこれからどのような協力が必要なのか、発展とは何か、深く考えさせられる講演会でした。本当に貴重なお話をありがとうございました。

(文教育学部人間社会科学科グローバル文化学環3年 石田 優花)

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