センターについて センターの活動 SDGsの取組 刊行物 お問い合わせ・アクセス

ページの本文です。

第24回SDGsセミナー「海外の日系社会・日系社会支援」実施報告

2023年1月10日更新

photo1
講師の石森和磨氏

2022年12月20日(火曜日)、アリストテレスの窓代表の石森和磨氏をお招きし、第24回持続可能な開発目標(SDGs)セミナー「海外の日系社会・日系社会支援」が開催されました。石森氏はJICA(独立行政法人国際協力機構)の海外協力隊(日系社会ボランティア)としてブラジルで活動したご経験を持ち、現地で異文化と出会って対話を重ねる中で得た生き方の新たな視点をお話いただきました。

ブラジルは、中南米で最大の人口・面積を有する国として、また日本を除いた国の中では最も日系人が多く住む国として知られています。日系人の祖先は日本から渡った日本人であるので、私は、日系人は日本人と文化もよく似ており、日本人の魂が色濃く残っているという偏見をもっていました。しかし、石森氏のお話や、後日授業の一環で訪れたJICA海外移住資料館での学びを経て、日系人は日本人と同じルーツを持つが全く異なる文化を持つ、一つの「人種」に近いのだということを感じました。その背景には、第二次世界大戦によって日本文化が断絶されたことのみならず、ブラジルの人種の多様性や移住時の日本政府の介入の希薄さがあり、独自の文化を形づくっているのだ、と考えます。

「日本のパラレルワールド」ブラジルで石森氏が感じた最大の日本との違いは、今を生きるか、未来を生きるか、でした。先を見通し未来を案じる日本人は、経済的な問題を不安視したり、知識や成功ばかりに囚われたりして、自身の幸せの機会を逃している。しかし、一寸先は闇の現代、経験こそ財産であり、中でも「異質」と出会って対話することは自身の視点を大きく変化させる、そしてその先に調和をうむ。石森氏のお話は私たちにとっての「異質」との出会いであったと共に、言葉だけの出会いで満足せず「今」感じたことを大切に、まずは経験へとつなげる、という意識をうみました。「成果」と呼べるものを追い求めるあまりに踏み出せていない、自分自身の中に眠る一歩を見つめる機会となりました。

photo2
会場の様子

JICA海外移住資料館の視察とも合わせ、日系人に関して得た気づきは、私にとって日系人と言う存在は「近くても遠かった」ということです。先述の通り、私にとって日系人は、そのルーツ故、日本人にほど近い存在だ、と思い込んでおり、また意識の中では過去の出来事でした。しかし、日系人は「日本人」と並ぶようなある種の人種と捉えた方が認識としては近いものがあり、また現在も変化しながら続いている、独自の文化をもつ存在でした。また、現在は他国の問題として、また不幸な印象を持たれがちな「移民」は、日本人にも密接なかかわりのあるものでした。これら2つの出来事を関連させて考えたことは今までの私にはなく、また注目されることも多い現在の移民問題については関心を持っていましたが、日本も密接に関連した過去の移民問題について考えることはほとんどありませんでした。これらを関連させ、今一度考えてみると、解決を図られるべきは移民そのものではなく、やむを得ず祖国を抜け出さなければならなかった事情そのものであるのだ、と学びました。また、移民を他国の惨状として見るのではなく、1つの文化として向き合い、対話を重ねながら双方を尊重していくことが必要であること、メディアなどの情報は第三者の目線を介しており、自分自身の五感で経験し感じることに勝ることはないのだ、ということも学びました。

これまでは、知識を取り入れることが多かったように感じますが、大学という自ら機会を探し求め得ることのできる環境で、これまで以上に“今ここ”で“感”じている自分自身を大切に、物怖じせず経験を積んでいこう、と改めて思いました。

(生活科学部心理学科2年 小川祐奈)

【関係リンク】
JICA海外協力隊について
JICA海外移住資料館について

  •  
  • このエントリーをはてなブックマークに追加