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第25回SDGsセミナー「JICAの教育支援」実施報告

2023年1月10日更新

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講師の太田美穂氏

2022年12月20日(火曜日)、第25回持続可能な開発目標(SDGs)セミナー「JICAの教育支援」では、株式会社コーエイリサーチ&コンサルティングの主席コンサルタントでいらっしゃる太田美穂氏が講師を務めて下さいました。

今回のセミナーでは、モザンビークにおけるJICAの教育分野協力プロジェクトとはどのようなものか、そしてそのプロジェクトにおけるコンサルタントの役割とは何かについて学ぶことができました。

私はまず、モザンビークの教育に関して、中等教育の純就学率、総就学率の低さに衝撃を受けました。その要因は様々ですが、学校に行けない、行くことのできる学校がないといった要因だけでなく、質の低い教育による中退率の高さも深く関わっているようでした。教育の場を提供し、教材を提供する支援に加え、教育や教員の質の向上を視野に入れた支援を行うことの重要性に改めて気付かされました。

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JICAの教育分野の取り組みについてお話を伺う

本セミナーで伺ったJICAの教育分野協力プロジェクト(略称PRICEP)は、この教育や教員の質の向上につながるものであり、教育カリキュラムから学習教材、授業、学力測定という学習における一連の流れをプロジェクトデザインに取り入れた総合的なアプローチです。このモザンビークにおける初等算数・理科の学びの改善を目指すPRICEPは、モザンビークの教育人間開発省と連携し、2021年3月から2027年2月まで実施されています。プロジェクトの流れとしては、まず日本の学習指導要領を参考にし、モザンビークにおける教育カリキュラム・プログラムを改訂します。その後、改訂したカリキュラムやプログラムに準拠し、初等算数・理科の教科書と教員用の指導書を改訂します。そして、この改訂された新しい教科書で授業が行えるよう、現職の教員や初等教員養成校学生を研修し、指導力の向上を目指します。最後に、適切な学力測定・評価が行えるよう、初等算数・理科の試験問題の作成や採点方法のガイドラインを作成します。こうして、学習における一連の流れ(①カリキュラム ②教科書・学習教材 ③授業 ④学力測定・評価)を根底に支援を行い、更なる教育の質の向上を目指して、このサイクルを回り続けるのです。

今回のセミナーでは、現行版の算数の教科書と改訂版の教科書を実際に比較して見せていただき、その違いが特に興味深かったです。現行版は、段階を踏んで理解を深めるというよりも、多くの問題を解くことに重点を置いているようでした。そのため、一度つまずいてしまうと授業についていけなくなるだけでなく、教員にとっても、この教科書で分かりやすい授業を行うことは難しいように思えました。しかし、改訂版は、教科書を読んだだけでも理解ができるよう、丁寧に計算の手順や例題が示されており、難しい問題でも自力で解くことが可能となっていました。これまで私は、教材が揃っていればよい、とばかり考えていましたが、教科書の比較をすることで、教科書の内容も教育や教員の質を向上させる上で重要な役割を果たしていることに気づかされ、PRICEPのような教科書を見直し、改善していく支援の重要性を痛感しました。

今回のセミナーを通して、自身の「当たり前」を見直し、広い視野で教育支援のあり方を考えてみることができました。また、コンサルタントといった教育分野の支援に関わる様々なアクターについて学ぶことができ、興味深かったです。貴重なお話をありがとうございました。

(文教育学部人文科学科2年 古瀬桜子 )

【関係リンク】
モザンビーク・新しい学校教育制度に対応したカリキュラム普及プロジェクト

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