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第26回SDGsセミナー「コオロギが地球を救う?:地球と生命を健やかに。コオロギで創るサステナブルな食の未来」実施報告

2023年2月2日更新

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講師の葦苅晟也氏

2023年1月30日、株式会社エコロギー代表の葦苅晟矢様をお招きし、第26回持続可能な開発目標(SDGs)セミナー「コオロギが地球を救う?地球と生命を健やかに。コオロギで創るサステナブルな食の未来」を開催いたしました。葦苅様は、2017 年、早稲田大学大学院先進理工学研究科在学中に株式会社エコロギー設立され、2019 年にカンボジアに移住しコオロギ研究・量産体制を確立。同年 「Forbes 30 Under 30 Japan」に選出され、現在はカンボジアと日本を往復しながら、カンボジアでの研究・ 生産拠点体制の強化と日本でのブランディング強化・認知度向上施策を同時並行で統括されています。昆虫食としてのコオロギの魅力や会社設立のきっかけ、カンボジアでの事業の様子をご講演いただきました。

人口増加による食料危機が危惧される中、環境負荷が小さくエコな代替タンパク質として昆虫食が注目されています。昆虫食としてのコオロギは、良質なタンパク源、CO2排出量の少なさ、生産効率の良さが特徴です。葦苅様は大学在学時にコオロギに可能性を見出され、まずは自宅で、そして規模が大きくなると日本でレンタルスペースを借りてコオロギの飼育を始められました。冬季は気温の低い日本では数を増やすことに限界があり、より暖かい候補地を模索された結果選ばれたのがカンボジアでした。カンボジアでは虫が日常的に食べられていて、街中にはコオロギの銅像があり、農家の副業としてコオロギが育てられているなど、コオロギを育てるには理想的な環境でした。

カンボジアでのコオロギ生産では、コオロギのエサには食品工場でのフードロスを活用し、現地の農家が副業として育てたコオロギを買い取っています。コオロギは商品化までに45日しか要さないため、年に8回の現金収入の機会が得られます。実際に、葦苅様が関わっておられる農家では、コオロギを育て始めたことで収入が増え、子どもが継続的に学校に通えるようになるなどの変化があった、とおっしゃっていました。現在は主に他のASEAN諸国への事業展開を進められたり、病院食の文化がないカンボジアの妊婦の栄養改善に取り組んだりしていらっしゃいます。食料危機の解決のみならず、フードロスや所得格差、栄養状態といった現地の社会問題にも貢献するビジネスモデルに非常に心惹かれました。

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会場の様子

昆虫食への抵抗感が強い日本では、お菓子に粉末状の昆虫を混ぜた製品を販売することで、昆虫食のハードルを下げる試みがなされています。しかし、代替タンパク質として食事に取り入れるまでには浸透しておらず、このままでは一過性のブームで終わってしまうのではないか、と想定されています。昆虫食が日常の食事の選択肢の1つとして選択されるようになるには未だ課題があります。

社会問題に貢献する方法として、社会起業家に興味があります。市場のニーズに対応する「モノ」や「サービス」を提供することで、お金を循環させながらより良い社会を築く持続的な社会貢献ができると考えています。信頼関係をどのように築くのか、誰もやったことがない新しい道をどのように切り開くのか。社会起業家として活躍されている葦苅様の理念や困難を直接お聞きして、非常に貴重な時間を過ごすことができました。

(文教育学部人間社会科学科1年 リップル アメリ)

【関係リンク】
株式会社エコロギーのビジョン

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