センターについて センターの活動 SDGsの取組 刊行物 お問い合わせ・アクセス

ページの本文です。

ブータンスタディツアー実施報告

2023年2月17日更新

2023年2月7日から16日にかけて、2022年度「国際共生社会論実習」・「国際共生社会論フィールド実習」のブータン現地調査(スタディツアー)を実施しました。

photo1
ブータン到着直後の履修生たち

現地調査前には、11月から本格的にはじまった事前学習において、資料の購読・発表や外部有識者による講演を通してブータンの歴史・政治経済・社会等に関する理解を深めました。また、7名の履修生がそれぞれの興味関心・問題意識に則した研究課題(「ごみの不法投棄と国民の衛生意識」、「伝統芸術における性別分業とジェンダーアイデンティティ」、「言語とナショナルアイデンティティ」、「LGBTQ+への寛容度」、「交通網が食に及ぼす影響」等)を設定し、訪問先の検討やアンケートの作成を行いました。

現地調査中に訪れたのは、西部から南部にかけての4都市(首都ティンプー、古都プナカ、インドとの国境に位置するプンツォリン、ブータン唯一の国際空港があるパロ)で、主な訪問先はティンプー:JICA(独立行政法人国際協力機構)ブータン事務所、ゾンカ開発委員会、ティンプー市役所、伝統技芸院、ブータン日本語学校、キリスト教の教会、プナカ:プナカ・ゾン(城)、プンツォリン:ファブラボCST(王立ブータン大学科学技術カレッジ)、シク教の寺院、パロ:西岡ミュージアム(農業機械公社/農業機械化センター)、王立ブータン大学パロ教育カレッジ、タクツァン僧院、国立博物館です。合間に市内散策を繰り返し行い、道行く人にインタビューをしたりアンケートに答えてもらったり、雑貨屋やスーパーマーケットで市場調査をしたりしながら、各々の研究課題を遂行していきました。また、パロでは農家にホームステイをさせていただき、ホストファミリーの皆さんと交流をしました。

photo2
ブータン日本語学校の皆さんとの交流会

ブータンは小さい国ながら多様性に富んでおり、例えば都市部と農村部、西部と東部、標高の高い内陸と標高の低いインドとの国境近辺、自動車道路に面した場所とそうでない場所で大きく様相を異にしています。また、「国民総幸福(Gross National Happiness: GNH)の最大化」という独自の開発目標が注目され「世界一幸せな国」等ともてはやされることも多いですが、当然のことながら近代化に伴う問題も数多く内包しており、あるべき姿を模索し大きく揺れ動いている国でもあります。10日間の日程の中で、履修生はブータンに根づく文化・価値観・生活様式に触れ、それぞれの視点から課題を学び、多くの気づきを得ました。以下に、彼女たちが調査報告書に記した所感を抜粋します。

  • バンコクでのトランジットで宣言した目標は「自分の価値観をガラッと変えてくれるような経験をすること」だったが、ブータンでの日々はまさに人生が変わるような経験だった。毎日が新しい発見で、調査項目のナショナルアイデンティティや宗教に対してのイメージがガラッと変わり、豊かさとは何か、伝統とは何か、幸福とは何か、といったさまざまな問いが今でも頭の中をぐるぐると渦巻いている。
  • 自分の専門分野、地域、時代を超えて、全く新しい経験を積むことが出来たことに大きな達成感を覚えている。研究内容については、やっとはじめの第一歩を踏み出すための、助走レーンが完成したような場所にいることを痛感しているが、10日間の実習を経て、資料だけでは分からない現地調査の重要性に改めて気づかされた。
  • ブータンの文化に身を置き様々な人と交流できたこと、自分の日常を問いなおす契機になったことが、スタディツアーに参加した大きな意義だと考えている。
  • 「伝統工芸における性別分業」という、非常に限定的なテーマで調査に臨んだが、自分が想像していたものとは全く異なる結果が得られ、調査を進めていくうちに他のテーマとの関連性を多く見つけることができた。特に、宗教伝統とジェンダーの関係は、これから時間をかけて研究したいと思えるとても複雑で深いテーマだと気づくことができた。(中略)人間にとって絶対的な存在になり得る「宗教」と、人間の本質である「ジェンダー」が共生していくためにはどうしたらいいのか。一生かけて考えていく価値のある問いをブータンで与えられた気がした。
  • 私は、今回の実習で「自分の将来のヒントを見つける」という目標を立てていた。学問においてもそれ以外でも、この目標は達成されたと思う。初めて降り立ったブータンは、私の心を魅了し続け、自分の中の新たな世界の扉を開け放してくれた。
  • ブータン人が仏教や伝統文化を大切にし、日常生活の中にも取り入れていることは事実であるが、それと同時に日本に暮らす私たちと生活スタイルが変わらない部分も多く、事前調査段階では必要以上にブータンという地を遠いものとして捉えていたことを実感した。この気づきは実際に現地に行って、ホームステイをしたり現地の人に話を聞いたりすることが出来たから得られたものであり、ただの旅行では得られなかったものである。今後も研究を行う時にはフィールドワークやインタビューといった手法を用いながら、より深い考察が行える研究を目指したい。
  • 自分の中にあった先入観や偏見を改めることができ、人生観や世界の見え方も変わった。
  • 今回の調査に参加して、自分の流暢ではない言語でインタビューすることの難しさを感じた。しかし、日本から研究のために来たことや調査内容を伝えると快くインタビューに回答していただくことができて、インタビューをすることに自信がついた。
  • 私はこれまで資料や文献でしかレポートを書いたことがなかったため、今回の調査が私にとって初めての現地調査だった。自分でテーマを考え、仮説を立てた上で、仮説を実証するために調査を進めるおもしろさを感じられた。(中略)また、他の人の研究に同行することで、自分の研究以外の分野の知識を深めることができたり、自分では思いつかないような体験をしたりすることができたのはとても良い経験だった。
  • 「国際協力を専門として学ぶ者として、学生のうちに一度は途上国を見に行こう」という思いの下でこのスタディツアーに参加したのだが、ブータンを見れば見るほど「途上国ってなんだろう」「国際協力は必ずしも必要なものではないのかもしれない」と思うようになってしまったという点で、自分がこれまで正しいと思っていたものを見失ってしまったように感じる。しかし、このような感情を持つことができるようになったのも、(中略)この実習で得ることができた良い学びの1つだと感じる。途上国とは何か、国際協力の意義とは何か、についてはすぐに答えの出る問いではなく、一生かけても見つからないものなのかもしれないが、これから先の授業や日々の生活の中で絶えず探し続けていきたいと思った。
  • 渡航前に立てた「言葉が通じなくても積極的に話しかけて意思疎通を図る」という目標はある程度達成できたと感じている。(中略)とはいえ、自分の語学力はまだまだ改善すべきだと感じたため、今後も語学学習に力を入れていきたい。

今回の現地調査を通してお世話になった皆さま、後方から支援・協力をしてくださった関係各所の皆さまに感謝申し上げます。どうもありがとうございました。

  • photo3スーパーマーケットでの市場調査
  • photo4ホストファミリーに話を聞
  •  
  • このエントリーをはてなブックマークに追加