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2023年6月16日更新
2023年6月12日、任意団体comarch理事の石川歩さんをお招きし、第30回持続可能な開発目標(SDGs)セミナー「ひと、いばしょ、対話、地域、福祉―「共に生きる」ことをみつめて―」が開催されました。ご講演頂いた石川様は、大学院卒業後に三重県の保育園で勤務されたのち、認定NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワークにてスタッフとして従事、現在は宮城県と東京都の二拠点生活をしながら、任意団体comarchの理事を務められています。今回は、石川さんのこれまでのご活動を紹介頂くと共に、学生に向けて様々な「問い」をご示唆いただきました。
講義のはじめに、「自分の感情と向き合う」ことをテーマに簡単なワークショップを行いました。石川さんによると、自らの感情を言語化すること以外にも、例えば画材を用いて象徴的に自分の心を絵で表わすことで、普段なかなか言葉にすることができない感情を伝え、そして見つめ直すきっかけになるそうです。実際に、直感的に自分の心を色で表わしてみると、普段は気が付かない自分の心の感情バランスを捉えることができました。
石川さんのこれまでのご活動については、①野川のえんがわこまち、②認定NPO法人豊島子どもWAKUWAKUネットワーク、③あわいろ、の3団体をご紹介頂きました。特に、野川のえんがわこまちは、0歳から高齢者まで幅広い年齢層を対象としており、日常の中で「自分を落ち着けることが出来る」憩いの場として機能することを目指しているそうです。石川さんは、活動を通して「支援」というよりも人に寄り添えるようなサポートを大切にしているとお話しになり、そうした寄り添いの精神が、そこに集う人々の心を落ち着け、自己理解に繋がる空間を生み出しているのではないかと感じました。
講演の終盤には、これまで石川さんが子ども達との関わりを通して抱かれた問い―「寄り添う」とは何か、「支援」とは何か、「豊かさ」とは何か?―について思いを馳せられ、本来人間が持っているはずの感性や生きる力を、どのように保ち、育んでいく必要があるのか考えさせられました。すぐに解を見つけることは難しいですが、講義の主題である「感情に向き合う」ことと相まって、何か人間の精神的な優しさ、豊かさ、思いやりが、人と人との確たる繋がりを生み出してくれるのではないかと感じているところです。また、こうした社会の本質を突くような問いに向き合っておられる石川さんだからこそ、NPOの活動をキャリアとして選択する困難にも多く直面されたといいます。「誰かのために寄り添い、支援を続けたいという想いの一方、いかに自己犠牲に陥らず自分の生活もマネジメントしていく必要があるのか。」今後自らのキャリアを選択していく参加者にとって、現場の生の声を伺うことができる貴重な機会になりました。
(文教育学部人文科学科 比較歴史学コース3年 安藤承子 )