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2023年12月1日更新
11月22日(火曜日)16時30分〜18時10分、本学のグローバル教育センターが主催する第34回持続可能な開発目標(SDGs)セミナーが開かれました。今回のセミナーでは国際協力専門家、一般社団法人Think Locally Act Globally(TLAG)事務局長そしてトレイルランナーである小島路生さんを講師にお招きし、「国際協力の現場から:JICAとUNICEFでの教育、保健分野の協力について」というテーマで、10年間途上国に滞在し、20年間国際協力に携わってきたライフストーリーに沿ってお話を伺いました。
小島さんは大学時代に阪神淡路大震災のボランティア、フィリピン学生との交流、ネパールでの国際交流事業といった様々な経験を積んでいます。その経験から震災・途上国の貧困に何もできなかった自分の無力感と、不思議と幸せそうな途上国の人々のギャップを感じ、将来は社会貢献、途上国の子どもたちのために働きたいと考えるようになったそうです。その後、Stanford大学院での途上国の教育問題の専攻、インドネシアでのストリートチルドレン問題へのインターンを経て、小島さんは人生の転機となるJICA青年海外協力隊と出会います。国際協力のキャリアの第一歩として中米のグアテマラで教育に携わり、思いを持った人をつなげるという小島さんなりの国際協力への関わり方を見出します。
その後はJICA国際協力専門家としてホンジュラスに赴任し、貧困層が主に感染するシャーガス病の対策プロジェクトに、屋内への殺虫剤散布と住民教育からアプローチします。現地の保健省やカナダ援助庁をはじめ、多くのアクターと一緒にプロジェクトを行ったことで秀でた専門性を持つ人をつなげるマネジメントの楽しさに気づいたそうです。その後はUNICEFの教育担当官としてインドネシア事務所に出向かれ、貧困地域コミュニティ型就学前教育プログラムに従事し、2009年には西スマトラ地震緊急支援にも関わりました。
その後、海外から日本を見たことで、日本の課題を解決することに思いを寄せた小島さんは総務省の地域おこし協力隊として限界集落での高齢者の見守り活動を行い、途上国で見てきた支え合いの地域づくりが日本に求められていると気付いたそうです。現在はローカルな視点なしに国際的な仕事はできない、国際的な視点なしにローカルの課題には取り組めないとの気づきから、日本の地方が直面している少子高齢化や集落の持続性などの地域課題と、途上国の地方が直面している課題(貧困、環境、保健、教育等)について、日本と途上国の地域の人々が互いに学び合いながら、国際協力を通じて共に解決していくことができないかと金沢においてThink Locally Act Globallyの活動に取り組まれています。最近ではスリランカ民族共生と生計向上を目指した家庭菜園支援事業、ブータン脳卒中後遺症患者への農業リハビリテーション導入プロジェクトなどを行っているようです。
小島さんは一番大事なのは言語を超えた、人としてのコミュニケーション力だと述べます。そしてそのコミュニケーション力で多様な人といかに心ある信頼関係を構築できるかを大事にしているそうで、ご講演の中でも小島さんがコミュニケーションスキルを活かして「思いを持った人をつなげる」働き方をされ、国際協力、つまり国を超えた学び合いと支え合いを実践してきたことが伝わってきました。学生時代は自分のこころざしに本気で悩み、こころざしと想いに素直に生きてほしい、とのメッセージを最後に受け取りました。人生の選択ができることに感謝をし、自分の好奇心やこころざしを大事に、キャリアを形成していきたいです。この度は貴重なお話を本当にありがとうございました。
(文教育学部人間社会科学科2年 吉村紫織)
【関連リンク】
TLAGウェブサイト
【YouTube】【保健医療】人を変える技術協力 〜 中米シャーガス病対策の歩みから〜(Full ver.)