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第38回SDGsセミナー「紛争地域の現場で起こっていることを伝える」実施報告

2024年4月23日更新

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多くの写真と映像でお話しくださる堀潤さん

2024年4月22日国際交流留学生プラザ2階多目的ホールにて、ジャーナリストの堀潤さんをお招きし、第38回持続可能な開発目標(SDGs)セミナー「紛争地域の現場で起こっていることを伝える」が開催されました。

セミナーでは、堀さんが代表を務める市民ニュースサイト「8bitNews」やインターナルコミュニケーションの実践に焦点を当てた「わたしをことばにする研究所」のご紹介とともに、ジャーナリズムに対する堀さんご自身の哲学を語っていただきました。さらに、セミナー終盤の質疑応答の時間には参加者からのたくさんの質問があり、それら一つひとつに丁寧にお答えいただきました。

また、堀さんご自身で監督・出演・制作を行った映画『わたしは分断を許さない』の映像の一部を視聴しました。堀さんが長年取材をされる中で浮かび上がってきたのが、どうしようもない分断、大きい分断が生まれるという構造であったとおっしゃいます。映画の中に映るのは、福島や香港、シリア、パレスチナといった土地に生きる/生きた人々です。取材を通して当事者の方々の生の声を丁寧に掬い上げていく堀さんの姿が見受けられました。

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会場からは多くの質問が出された

ここ数年の間に、「分断」というたった2文字が持つ意味はますます重層性を増したように思います。この言葉が、政治的・文化的な軋轢や思想の対立、特定の人々の孤立の意味を含む言葉として世界を形容するようになりました。そこではときに、私と同じこの世界に生きる誰かの血や涙や叫びが、強大なインパクトとともに語られ、ソーシャルメディアやジャーナリズムの海に瞬く間に広がっていきます。では、一人ひとりが言葉の担い手となる今日の時代に、私たちはどのようにして「分断」のその先の未来を信じることができるのでしょうか。堀さんは、「分断を生み出すのは『誰』か」という問いを立てた上で、大きい主語よりも小さい主語を使うことが大切であるとおっしゃいました。例えば、震災後の報道において「被災地では多くの人が苦しんでいる」と語られることがありますが、堀さんは、それは誤ったレッテル貼りであると指摘します。「被災者」といった大きい主語で語ることはときに線引きをする装置になることがあります。そこで、個人名の主語まで落とし込み、一人ひとりの語りに焦点を当てることができれば、分断を防ぐことができるとおっしゃいました。

不条理な現実や分かり合えない他者との対立、災禍の記憶を「分断」という漢字2文字で表現するのはとても簡単です。しかし、この言葉を使用して出来事を形容すること自体に当事者の方々に向けてある種の暴力性が伴うこと、そして当事者一人ひとりの心の内にある言葉にならない感情や想いこそが真実であることを何度も思い返したいと感じます。

(文教育学部人文科学科3年 平子七海)

【関連リンク】
右矢印8bitNews

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