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第40回SDGsセミナー「世界の栄養問題:地球も人々も健康になる食事の実現に向けて」実施報告

2024年5月22日更新

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世界の栄養問題についてご自身の
経験を踏まえお話しする野村さん

5月15日、独立行政法人国際協力機構(JICA)国際協力専門員の野村真利香さんをお招きし、第40回持続可能な開発目標(SDGs)セミナー「世界の栄養問題:地球も人々も健康になる食事の実現に向けて」が開催されました。栄養不良とは何かという基本的な知識から、低中所得国の課題と取り組み、環境に配慮した食事の最新報告まで、広く深い学びを得ることができました。

始めに見た、重度急性栄養不良になってしまったイエメンの7ヶ月の女の子の写真はとても衝撃的でした。母乳をあげていたお母さんが暗い時間に水くみに行き、崖から転落して亡くなってしまったそうです。このことから、栄養問題は十分な栄養を与えるだけで解決できるものではなく、女性が毎日の水くみや暗い時間の移動をしなければならないといった、背景にある複雑で根本的な課題にも目を向けなければならないと感じました。

次に、栄養不良とは何かについて学びました。SDGsのゴール2ターゲット2には、「2030年までにあらゆる形態の栄養不良を終わらせる」とあります。この「栄養不良」とはエネルギーや栄養を摂取する際の不足、過剰、不均衡のことで、栄養が足りない低栄養と栄養を取り過ぎた過栄養の両方が含まれます。さらに低栄養の中にも様々な症状や原因があることが分かりました。

最も興味深かったのは、ソロモン諸島の「ヘルシービレッジ推進プロジェクト」についてのお話です。このプロジェクトは、健康推進ボランティアを育成し、低栄養と過栄養、マラリア、水と衛生の問題の解決を目指すものです。ソロモン諸島では新鮮な野菜などよりも保存の利くツナ缶やカップ麺、米やお菓子が普及しており、飲み物は水より安い炭酸飲料が好まれているそうです。そこでまず、野菜を食事に取り入れることができるよう、家庭菜園の支援を行いました。こうした取り組みを経て、子どもの野菜摂取量が増加したとのことです。そして食べた後に食品の袋や缶を放置することでゴミが川にたまりマラリア蚊の発生要因となっていたため、清掃活動も行いました。食べることに関する行為も改善することが、他の衛生問題の解決にもつながるのが驚きでした。健康的な食事ができるようにするための根本的な施策を考える点や、現地の人が健康の大切さを学び自ら主体的に活動し現地で広めることができるようにする点が、持続可能な取り組みにつながると感じました。

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活発な質疑応答の様子

最後に、地球環境に配慮しつつ健康を守る食事をする「プラネタリーヘルス」の考え方を学びました。地域により差はあるものの肉類や卵、じゃがいもなどの消費量は地球に悪影響を及ぼしうる生産量の目安をはるかに超えていることが、資料のグラフから分かりました。特に先進国で赤身肉の摂取を減らし野菜や豆類等の摂取を増やした食事に改める必要があるのは環境のためでもありますが、私たちが将来も健康を保つことができるようにするためなのだと感じました。

今回のお話を聞き、食べ物の不足や偏りの背景にさらに社会的な問題があり、根本的な課題に対処すべきであること、栄養問題は途上国だけではなく先進国も含めた地球全体の問題であることが分かりました。食は人間に身近で環境や健康に直結する重要なもので、生活者ひとりひとりが意識と行動を変えていく必要があると感じました。参加者からの多くの質問にも丁寧にお答えくださり、学びの多い充実したセミナーとなりました。

(生活科学部人間生活学科生活文化学講座3年 山田有紗)

【関連リンク】
右矢印JICAグローバルアジェンダ「栄養改善」
右矢印【JICA広報誌mundi 2020年1月号 「栄養改善 食の不均衡に、みんなで挑む」】
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