センターについて センターの活動 SDGsの取組 刊行物 お問い合わせ・アクセス

ページの本文です。

第44回SDGsセミナー「ブータンの開発課題と日本の国際協力」実施報告

2024年7月16日更新

photo1
講師の須藤氏

7月10日(水曜日)13時20分〜14時50分、本学のグローバル協力センターが主催する第44回持続可能な開発目標(SDGs)セミナーが開かれました。今回のセミナーでは、JICAブータン事務所企画調査員の須藤さんを講師にお招きし、ブータンの開発課題と日本の国際協力の現状について伺い、ブータンの発展について理解を深めました。

まず、ブータンの国柄についてお話を伺いました。チベット仏教が国に広く根付いており、建物や民族衣装などユニークな点が多いのも魅力です。また、ブータンは国民総幸福量(GNH)という国民全体の幸福度を示す指標を用いた開発指針を提唱しており、インタビューの手法を用いたGNH調査の結果は、政策立案や予算配分にも利用されています。

次に、ブータンの現状や開発課題に関して、現地の人々の声も交えた多面的な視点から伺いました。ブータンはGDPの大幅な成長、貧困率の減少、平均寿命の増加など急速な成長を遂げています。現地の人も、特にインフラ整備によって移動時間が短縮されたことで生活水準の向上を実感しているようです。しかし課題もあり、その最たるものは都市と地方の格差の拡大だと言います。農村部は都市部に比べて貧困率が極度に高い状態になっているそうです。より良い経済機会、教育、医療環境を求めて農村から都市への移住が増加しており、都市では地価の高騰、地方では過疎化が進んでいます。しかし、最新のGNH調査から読み取れる幸福度では、前回の調査に比べ全体は3.3%、農村部も5.6%上昇しましたが、都市部は1.8%減少しており、都市に出た人が多くの困難に直面していることが読み取れます。また、この幸福度の変化はコロナの影響もあるといいます。ブータン政府はコロナ対応として厳格なロックダウンと水際対策、迅速なワクチン接種を行っており、死者数は21名に抑えました。この対応が国際社会で高い評価を受ける一方で都市では深刻な経済の停滞をもたらし、若者の失業率をはね上げ、それに伴ってロックダウン後から若者の海外流失が後を絶たず、それがブータンの深刻な社会課題のひとつになっています。

photo2
セミナーの様子

最後に、日本のブータン協力についてお話を伺いました。日本は「農村と都市のバランスの取れた自立的かつ持続可能な国づくりの支援」を基本方針に掲げ、農業・インフラ整備・保健について様々な支援を行っています。特に日本製の橋はその高品質性に高い評価を受けており、今まで26の橋梁を整備しています。このように、日本からブータンへ国家間・国民間の友好関係の基盤となるような様々な支援が行われていることが分かりました。

今回の講義を踏まえて、GNHの理念に基づいた政策運営や急速な経済成長の一方で、都市と農村の格差や若者の海外流出などの課題が浮き彫りになり、数値だけでは測れない満足度や幸福度があることが分かりました。これからのブータンにどのような発展・支援が必要なのか深く考えさせられました。貴重なご講演ありがとうございました。

(共創工学部人間環境工学科1年 小山舞桜)

  •  
  • このエントリーをはてなブックマークに追加