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【開催報告】第47回SDGsセミナー「平和と開発-JICAのミンダナオ和平支援-」(2024年12月4日)

2024年12月10日更新

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紛争後の和平合意の維持の難しさを語る落合さん

12月4日(水曜日)、JICA(独立行政法人国際協力機構)に所属されている落合直之さんをお招きし、第47回持続可能な開発目標(SDGs)セミナー「平和と開発-JICAのミンダナオ和平支援-」が開催されました。落合さんが長年関わってこられたフィリピンの南方に位置するミンダナオ島で半世紀以上続いた紛争の平和構築支援に関して、JICAの役割や「人間の安全保障」を中心に詳しくお話しいただきました。

冒頭で提示された「43.6%」という数値、これは紛争の勃発後に和平合意に至ったにもかかわらずその後紛争が再発してしまう確率ということでした。およそ2件に1件が再発してしまうということを聞き非常に衝撃的でした。JICAが関係する国際平和協力の経済・社会的枠組みにおいて、開発援助を通じて紛争の再発防止に努めることの重要性を感じました。

JICAの平和構築の中で最も重要とされていることの一つに「紛争要因を助長しない(Do No Harm)」が存在し、その中でも「特定の民族やグループに偏らない」という部分が印象的でした。平時の開発協力とは異なり、善意で行ったことが一方のグループへの偏りに捉えられる可能性があるという点が平和協力の難しさを物語っていると思いました。

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「平和は(援助機関ではなく)自ら(当事者間)で
作るもの」と強調する落合さん

最も印象的であったのがミンダナオ和平プロセスのなかでの武装解除に関するお話でした。武装・動員解除の中で武器の取り上げは不可欠ですが、現地では武器と兵士の間には強い関係があり、自己の一部となっていることが多いことから武器の破壊が自分の一部の破壊として受け取られてしまうため、破壊するのではなくコンテナに保管して武器そのものを使用できないようにするという方法が興味深かったです。破壊よりもコンテナへの保管の方法が時間を要するということでしたが、現地の兵士の精神面にも配慮した和平プロセスが行われることで、段階的ながらも紛争の再発防止に寄与できているのではないかと思いました。

最後に、ファミリー間の抗争によって右腕を失ってしまった男性のお話がありました。その方は自分自身が被害に遭っても「やられたらやり返す」といった考え方では事態の収拾はつかないと考え、「やり返さないために」という考えのもと公民館設置や農業組合での共働のなかでどうにか和解しようと模索していたとのことでした。自分が抗争の被害に遭っても次世代に被害が及ばないよう社会を良くする方向に動く人が増えてきたという点に希望を見出すことができ、ミンダナオの人々が相手との対話の中で和平を進めることができるようにJICA含めた第三者の視点から対話の場所や機会を提供することがいかに重要であるかを感じました。

今回、ミンダナオで行われているJICAの和平支援を通して平和構築のあり方を学ぶとともに最前線で活躍された落合さんの経験を具体的なエピソードを交えた形でお聞きすることができ、多くの知見を得ることができました。貴重なご講演ありがとうございました。

(文教育学部言語文化学科グローバル文化学環2年 齊藤美月 )

【関連リンク】
緒方貞子元JICA理事長が実践した「人間の安全保障」~フィリピン・ミンダナオ~(Youtube)
JICA緒方貞子平和開発研究所・プロジェクト・ヒストリーシリーズ『フィリピン・ミンダナオ平和と開発—信頼がつなぐ和平の道程』落合直之著(ISBN 978-4-910089-01-0)
JICAグローバルアジェンダ「平和構築」

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