ページの本文です。
2025年6月26日更新
2025年6月19日(木曜日)、独立行政法人国際協力機構(JICA)横浜センターの国際協力推進である谷口友理さんをお招きし、第51回持続可能な開発目標(SDGs)セミナー「現場から考える多文化共生の今」が開催されました。
講演では谷口友理さんのアルゼンチンでの長期専門家やドミニカ共和国でのJICA海外協力隊としての経験について、またJICA横浜の国際協力推進員として現在共に活動されているNPO法人ABCジャパンについて中心にお話を伺うことができました。
谷口さんが最初に協力隊として派遣されたドミニカ共和国では、日系日本語教師として全国の日本語学校を巡回し、若手日本語教師の育成や日系子弟への継承教育などに携わっていらっしゃったそうです。現地の日本語学校の年間行事では、スイカ割りや盆踊りなど日本の伝統的行事を取り入れた活動が行われていて、日本とは遠く離れた文化も言語も異なるような土地で子供たちが日本の文化を楽しんでいる様子がとても印象的でした。このように、自国の文化とは異なる文化を受け入れ違いを楽しむことは多文化共生の在り方としてとても大切なものなのではないかと思います。
このような経験を経て、谷口さんは現在JICA横浜の国際協力推進員としてABCジャパンというNPO法人と共に、外国につながりがある子供たちの支援に従事されています。ABCジャパンは、設立者である安富祖代表自身もブラジル出身の日系人であり自身が経験された苦労から、同じ思いをする外国にルーツを持つ人々を支援するために立ち上げられました。
安富祖代表のご経験に関するお話の中で、「国籍でラベリングするのではなく、その人個人への理解を深めること」「ルーツではなくルートを知ること」という言葉がありましたが、これらの言葉は多文化共生だけでなく一人一人の尊厳を大切にする人間の安全保障の概念にもつながるものだと思います。私たちは普段日本で生活する中で、無意識のうちに「日本人」と「外国人」という線引きをしてしまいがちです。日本での外国人人口が増えている今、このように国籍という大きなくくりで人々を分類するのではなく、個人個人に目を向け互いに理解し尊重し合っていく必要性を改めて感じました。
ABCジャパンでは、子供の教育保障・継承語教育・心のサポートの分野で主に活動が行われています。このような分野はどれも行政からの支援では手が届かないような部分を埋めていくもので、日本に来た人々が日本で暮らし日本人と関わる中で個々のアイデンティティを維持していくために、すなわち「共生」を実現するためになくてはならないものだと思います。
このセミナーを受けて、「多文化共生」という言葉の背後にはたくさんの課題と努力があるということ、そして今後ますます積極的なアクションが必要とされる分野であることが分かりました。私は一学生として・個人として、まずは身近なところから、相手の立場に立ち違いを受け入れ、互いに尊重し合う意識を持つことで多文化共生というテーマに向き合っていきたいと思います。
(文教育学部言語文化学科1年 石井 花)
【関連リンク】
JICA横浜センター
NPO法人ABCジャパン