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2025年10月16日更新
2024年9月15日から24日にかけて、2025年度「国際共生社会論実習」におけるブータンでの現地調査(スタディツター)を実施しました。
現地調査に先立ち、6月初旬から、ブータンの歴史や社会の現状についての事前学習を行い、各自で研究課題を設定しました。今年度の参加学生2名はそれぞれ「ブータンの若者の人生観と職業選択についての調査」、「ブータンの民族衣装をめぐる産業とアイデンティティ―若年層の着こなしと意識に着目して―」をテーマに挙げ、調査計画書やインタビュー項目を作成し、現地調査に向けた準備を進めました。
現地調査は、首都・ティンプーに3泊、遠隔地・ガサに2泊、国際空港があるパロに2泊する計7泊8日の行程で実施しました。
ティンプーでは、ブータン日本語学校およびJICAブータン事務所を訪問したほか、織物博物館(Royal Textile Museum)、著名な織り手が経営する織物販売店Kelzang Handicraft、モティタン高等学校(Motithang Higher Secondary School)、株式会社ブータンオーバーシーズ人材(Bhutan Overseas Jinzai Private Limited)、内務省文化・ゾンカ開発局言語研究・振興課(Language Research & Promotion Division, Department of Culture and Dzongkha Development, Ministry of Home Affairs)、モデル・タレント事務所でファッション誌を刊行予定のProject Dragon事務所を訪問し、それぞれでインタビュー調査を行いました。ティンプーに訪問先が集中していましたが、その合間には、タシチョ・ゾンやブータン屈指のローカルマーケットなどに赴き、チベット仏教への深い信仰や現地の人々の生活に触れる機会を得ることができました。
ティンプーから車で約7時間をかけて到着したガサでは、農家のご家庭で2泊ホームステイをさせていただきました。ブータンの家庭料理を振る舞っていただいたほか、飼育されている牛の搾乳体験などを通して、農村地域の生活を間近に感じることができました。また、ガサ温泉やガサ市内の商店へ赴き、現地の人々との交流を楽しみました。
続いて訪れたパロでは、私立大学ノルブリン・ライター・カレッジ(Norbuling Rigter College)を訪問し、学内を案内してもらうとともに、学生へのインタビュー調査を実施しました。また、ガサからパロに向かう途中に私立小学校の学芸発表会を見学し、初等教育の現場に直接触れることができました。
設定した訪問先以外でも、現地で出会った人々にインタビューを依頼したり、会話のなかで関連する話題を聞いたりするなど、各自の研究課題に関する意見を幅広く収集しました。
ブータンで過ごした濃密な一週間は、現地で実際に触れる情報量が、日本で学ぶそれとは比べ物にならないことを教えてくれました。何より、その国に抱く親近感や気持ちの入りようが全く違いました。現地で目にしたブータンの人々の笑顔や、温かさ、そして文化や国内事情の面白さに触れ、今ではすっかりブータンファンの1人になってしまいました。
研修中、引率の先生方に「異文化理解に必要なことは何か」と尋ねました。先生方は、「世界中に友達を作ること」「違いを楽しむこと」と答えてくださいました。ブータンでの経験を終えてみて、私たちはこれらの言葉に深く共感しました。コミュニケーションの仕方や文化に多少の違いがあって驚きましたが、ブータンで出会ったたくさんの人々の笑顔や親切を思い出すと今も心が温かくなります。実際にブータンに行ったからこそ、ブータンを少しでも理解し、好きになれたのだと思います。
今回の経験から、異文化理解における「知りたい」という気持ちの重要性を再確認することができました。私たちは研修前からブータンに多少の興味があったために、知りたいという気持ちを持って現地に渡航することができました。しかし、興味が強くない場合、どうすれば相手を知りたいと思う気持ちを育てられるのでしょうか。
ブータンで出会った多くの人々は、ブータンに興味を持って積極的に文化を理解しようとする外国人を歓迎しているようでした。 しかし、異文化理解は常に双方向で、簡単ではないことも学びました。現地の人との会話で、ブータン人が隣国のインド人に対して「行儀が悪い」「指示に従わない」といった不満を漏らす場面にも遭遇しました。
近年、日本でも外国籍の住民が増え、街中で多様な人々を見かけるようになりました。移民に関する問題が言及されることも増えましたが、私たちは、すれ違いの原因かもしれない「違い」を知ろうとすることができているでしょうか。
今回の研修は、ブータンと日本の比較を通して、私たち自身の、異文化理解への姿勢を深く見つめ直すきっかけとなりました。今後も、今回の研修で得た学びを胸に、身の回りの様々な文化や価値観を理解する努力を続けていきたいと考えています。
(生活科学部4年 鮫島さくら子、皆川響)