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【開催報告】「国際協力の現場を知る」連続セミナー:「質の高い教育をみんなに」(2025年11月6日)

2025年11月18日更新

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講師の池田さん

2025年11月6日(水曜日)、国際協力機構(JICA)緒方貞子平和開発研究所の池田亜美さんを講師にお招きし、SDGsセミナー「質の高い教育をみんなに」が開催されました。最初に、キャリアをはじめとした自己紹介をしていただき、その後は近年の世界の教育課題について、そして課題を解決するための協力方針に基づき、池田さんが関わられたミャンマーの初等教育カリキュラム改定プロジェクトについて詳しくお話いただきました。

池田さんは、国ごとの5歳未満児死亡率のデータより、生まれる国により生き残れるかどうかが変わることに心を痛め、中学生の頃から国際協力へ関心を持っていたそうです。大学院からは短期青年海外協力隊としてホンジュラス活動されたり、ボリビアでJICAのインターンシップに参加したりとJICAを通して途上国へ足を運ばれました。

教育分野では、2015年までのMDGsで「初等教育の完全普及の達成」が目標として掲げられ成果もあげられましたが、質も重要視されるようになり、2015年からのSDGsでは「質の高い教育をみんなに」という新しい目標になりました。しかし、現状は学校・社会の問題や貧困の連鎖により学校へ通うことができない子どもも多くいます。また、基礎的な読み書きの能力が身につけられていない子どもも、世界全体、特にサブサハラアフリカに多く、学びの危機とも言われています。私が衝撃を受けたのは、中南米の中学生と教員が行った算数のテストの正答率についてでした。内容は、四則計算や分数など基本的な計算ですが、4問のうち正答率が50%に達する問題はなく、分数の正答率は12%と低くなっていました。教員でさえ、小数の割り算の正答率が約27%にとどまっており、受講者からも驚きの声が聞かれました。

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グループワークの様子

こうした現状に対して、JICAでは4つの協力方針を打ち出しています。協力方針1の「教科書や教材を開発し、学びを改善」では、ミャンマーの初等教育カリキュラム改定プロジェクトをご紹介いただきました。このプロジェクトは、小学校のカリキュラムや教科書・教師用指導書・試験問題を開発したり、教員養成課程を改善したりすることを通して、カリキュラムに則った教育活動の導入を目標としています。7年間のプロジェクトでは、日本からもミャンマーからも多くの教育専門家たちが参加しました。算数では、日本では馴染みのある10のかたまりで計算していくやり方が取り入れられ、こうした教科書はプログラム終了後も使われていたそうです。また、ミャンマーから老朽化した教員養成校の改修依頼があった事例をもとに、日本とミャンマーは準備・建築中・完成後の各段階においてどのような情報とその検討が必要かというグループワークにも取り組みました。受講生からは老朽度のアセスメントや予算、建築中の講義宿泊室の整備などが挙げられましたが、池田さんは今後どれほどの教員数を養成するかによって部屋の数や大きさ、設備が変わるという、受講生にはなかった視点を共有していただきました。

今回のお話を聞き、プロジェクトには多くの人がそれぞれの知見を生かして携わっていることと、その実施には先を見通した入念な検討があることが分かりました。JICAは信頼で世界をつなぐというビジョンを掲げていますが、日本の教育専門家の派遣やこの大規模で長期的なプロジェクトの実施はまさに信頼が鍵になると感じます。私自身も将来は国際教育協力を行いたいと思っているため、現場を経験された池田さんのお話は大変貴重でした。ありがとうございました。

(文教育学部人間社会科学科3年 片倉心響)

【関連リンク】
JICAグローバル・アジェンダ>No.8>教育

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