平成20年度 現代GP講義
キャリアプランニングT(知的財産:川本和弥先生)


川本和弥先生

2008年4月30日(水)と 5月7日(水)、今回は 弁理士としてご活躍中の川本和弥先生をお招きし、「知的財産業界の現況と求められる専門家人材」について話してい ただきました。川本先生は、日本で弁理士として働きながら、ジョージワシントン大学ロースクールをこの5月に卒業されました。米国NIHでのライセンス契約関連のイン ターンや米国法律事務所でのインターン(予定)を経験されるなど、弁理士資格取得後もグローバルに働く為に必要なスキルを精力的に研鑽されています。


知的財産とは?

『知的財産』は、発明、意匠、著作物など、人間の創造的活動により生み出された無形の業績を指します。これらの功績に係る権利を保証するのが『知的財産権』です。

知的財産法

知的財産を守る法律には、次のようなものがあります 。

特許法 「技術的思想」の創作を保護
意匠法 「美観を引き起こさせる物品の外形」の創作を保護
商標法 「商標」の使用をするものの業務上の信用を保護

これらの権利を得るためには、国への申請が必要になります。

著作権法 「著作物」(思想または感情を創作的に表現したもので、文芸、学術・芸術、音楽の範囲に属する)の保護
不正競争防止法 周知表示混同惹起行為、商品形態模倣行為、営業秘密不正行為などの不正競争行為の取締り

これらの権利は、国への申請が要りません。

弁理士の業務は専門及び所属する職場によって異なります。多くの弁理士は『特許』を専門に取り扱い、そのうち『特許』の権利化を図ることが主業務です。そこで 今回は、知的財産業界の中でも特に『特許』に関する業務と、そこで求められるスキルについて学びました。

特許権の取得

何かを発明し特許権を得るには、国(特許庁)の許可が必要です。各種文書を提出し、特許庁とのやりとりが必要になります。これには法律の専門知識が不可欠であり、通常、専門家(弁理士)を代理人として依頼します。

弁理士の仕事

他の法律系資格と異なり、弁理士は日本法を理解しているのみならず、諸外国の法制度についてもある程度の知識が求められます(法律の知識)。また、発明内容の本質を理解し、その発明が既存技術に対していかに優れているか、客観的に技術的長所を見出す力も必要になります(技術の知識)

近年の技術の高度化、業務の国際化に伴い、弁理士に要求される知識は極めて高度なものとなっています。また、日本企業および外国企業の両方がクライアントになるため、英語でのコミュニケーションは極めて重要です。

弁理士の世界では、多くの女性が活躍しています。取得した専門性はいつでもどこでも生かすことが可能であることから、一定のキャリアを有している場合は在宅業務も可能となります。

合格率は平成19年の時点で約7%、弁理士数は2006年の時点で約7000人です。

弁理士になるには

弁理士になるためには、学部または修士卒業後、企業などの研究機関で働き、専門知識を身につけながら弁理士の試験を受けるのが一般的です。なお弁護士は弁理士試験を要せずに弁理士になれます。

特許戦略立案

企業での発明・新案において、特許を取ることの最も重要な意義は、他の企業の参入を最小限に食い止めることです。そのためには、どのような特許をとるべき か戦略を練り、今後の製品開発の計画を決めなければなりません。特にベンチャー企業においては、知財戦略=経営戦略を意味します。

広くて強い特許

関連特許の取得(多面的多層的な権利の確保)

ライフサイクル戦略

基本特許の期間延長(通常20年のところを25年まで延長)

専門家人材の発展プロセス

弁理士は専門知識を生かし、「異なるバックグラウンドの人」が抱える問題を、その人が理解可能な形で専門的見地の解決案を提示しなければなりません。そのような実践が、自分の知識をより深めることに繋がります。

また、実践経験を積んでいくにあたり、新たな専門知識の獲得も必要になります。他分野の知識の吸収に伴ってインターフェース(異なる分野を結びつけるときの共用部分)が拡大し、こうした中で 真の専門家としての能力 (情報収集・提示能力や問題分析・解決能力)を獲得していきます。視野の拡大はモチベーションの向上に繋がり、仕事内容も益々拡大・発展していきます。

専門家の発展プロセス

このように、弁理士という大変やりがいのある仕事の一端を垣間見ることができました。


文責 / 学生記者:薄井加奈

受講者の声

  • 知的財産という言葉は知っていたけれど、詳しくはよくわかっていませんでした。授業のまえよりも理解が深まったと思います。 理系出身でも弁理士になることもできることもわかったので、将来の選択肢が増えました。
  • 弁理士という職業が、他の職業経験があるほうが優位という見方が新鮮だった。
    どちらかといえば、就職は自分のやりたいことをとことん突き詰めていくイメージがあったが、弁理士のような特定のことにとらわれない、モノの見方を身につけることが求められる業種もあるのだなと感じた。
  • 専門家としての発展プロセスが自分の今なりたい職業にも当てはめて考えることができた。
  • ただ特許をとればいいという場合だけではないことがわかったのは就職した後も役に立つ知識だと思いました。
  • 一通り詳しい知識が分かって仕事のイメージがもてた。
    弁理士の仕事を理解するには知的財産の基礎知識は必要だから授業の組み立ては適切だったと思う。

次回は中村まゆり先生をお呼びし、金融分野についてお話していただきます。

お楽しみに。