平成21年度 現代GP講義
サイエンス・ライティング入門(サイエンスライター:青山聖子先生)

青山先生のご紹介

2009年度後期のサイエンス・ライティングでは、サイエンスライターの青山聖子先生から、科学的な視点からのエッセイの書き方を学びました。青山先生はお茶大化学科の卒業生で、現在はサイエンスライターとして活動する一方、主に理系分野でのライティングについて大学で講師をしています。科学雑誌の編集室で勤務をしていたこともあり、今回はその経験をもとに、私たちの書いたエッセイを添削して下さいました。


科学的な視点でものを見ること

「みなさんは化粧品を買う時にどこを見て買っていますか?」

初回の授業で、青山先生からこんな質問が投げかけられました。受講生の中からは、「インターネットのサイトで口コミを見ている。その中でも数が少なかったり、同じ意見が重なっているものは信じない。」、という答えが出ました。たしかに、口コミはメーカーによる宣伝ではない個人の体験談なので、信頼できるように思えます。しかし、実はアルバイトとしてお金をもらって口コミを書いている人もいるようです。また、もし本当に体験談であったとしても個人の経験なので、その化粧品が自分に合うかはまた別問題でしょう。
 このように世の中に溢れている情報には、隠されている側面が存在しています。身の周りのものを注意深く見る必要があります。最近流行っている「エコ関連商品」ですが、それらのCMを見ると、いかにもクリーンで地球に優しいような印象を受けます。たとえば、エコカーに乗り換えることを勧めるCMをよく見かけますが、今まで乗っていた車が処分に出されることを考えると、地球に優しいかどうか、簡単に判断はできません。さらには、車に乗らないほうが地球に優しいのではという考え方もできます。
 人間の脳は簡単に因果関係をつけてしまいがちですが、情報を鵜呑みにするのではなく、科学的な視点にたち、それらにツッコミを入れて欲しい!というのが青山先生の願いです。このような科学的な視点を定着させ、それをもとにエッセイを書いてみる、というが今回の授業の狙いです。


授業で書いたエッセイのトピック

今回の授業では4つのトピックについて情報を集め、授業内の時間を使ってエッセイを書きました。書きあがったエッセイは全員で読んで、先生からコメントをいただき、受講生同士でも評価しあいました。


トピック1:「八角」の紹介エッセイ

目的 : 「八角」を描写して、実物を見たことがない読者にイメージを湧かせる。(400字程度)
条件 : 20〜30代の若い女性に向けたフリーペーパーに載せる記事を想定。

八角というのは、トウシキミの果実を乾燥させたもので、中華料理などに使われる香辛料のことです。八つの角があり、星に似たかたちをしていることから、八角やスターアニスと呼ばれています。みなさんはご存知でしたか?なんと今回は、「八角」をもともと知っている受講生がほとんどでしたが(!)、私はこの授業を受けるまで知りませんでした。
 どんな文章にも目的と伝えたいことがあり、相手がいることを意識して書くこと。また、体言止めや口語調、問いかけ文を入れると読者にフレンドリーな感じを与えることができる、といったテクニックや、ネットの情報を引用するときは、どこの情報であるかを明示するためにURLを載せること、などマナーも学びました。


トピック2:お茶大の紹介エッセイ

目的 : お茶大を大学受験生に紹介する。(800字程度)
条件 : 公式パンフレットに載っているような情報は省き、内部にいる者だからこそわかるような話をこっ そり教えちゃおう。

雑誌に載っている大学評価ランキングを引用したり、高校生に親しみやすいように若者らしい口語調の表現を使ったりと、読んでいて楽しいエッセイがたくさんできました。同じ大学について書いているのに、捉え方と書き方によって全く異なった印象になるのがおもしろいところ。
 ここでは、説得力を出すためには、自分の具体的な体験を紹介するとよいことや、つかみの一文が肝心なので印象づける言葉を使うことなどを教えていただきました。


トピック3:素材の紹介エッセイ

目的 : 身近な素材に隠れている科学を紹介する。(800字程度)
条件 : 20〜30代の若い女性に向けたフリーペーパーに載せる記事を想定。科学的な仕組みをわかりやすい言葉で説明する。

科学的な仕組みを理解することも骨ですが(私は文系なので特に)、それを噛み砕いてわかりやすい言葉にするのがとても難しい。また、まずエッセイで紹介できるような素材を見つけるところが最初の難関でした。特定企業の商品になっているものは技術が特許事項になっているので、詳細が公開されていない場合が多いのです。私は、爪に優しいと噂の新しいネイル素材について調べようと思ったのですが、有料の講習を受けないと教えてもらえないことがわかって敢え無く挫折・・・。
 某文具メーカーの、書いた文字がこすって消せるボールペンについては、ホームページで開発した人が詳しく説明しています。目からウロコなので、オススメです。皆さんも、是非探してご覧になってみてください。


トピック4:冬休みの課題エッセイ

目的 : 科学にまつわるニュースやトピックについて論じてみよう。(2000字程度)
条件 : 身近なことを科学的な視点から観察して、科学雑誌に載せるエッセイのような感じで書く。

各自、携帯電話について問題視するエッセイや、若者の教養離れについてのエッセイ、宇宙エレベーターの紹介エッセイ、など思い思いのトピックに取り組みました。2000字程のボリュームになると難しいのは、自分の主張と文章の構成を最初に決めておかないと、途中で空中分解してしまうこと。「いろいろ書きたいことがあるが、どう絞ってオチをつけるか」、と悩んでいる人、「難しい技術をかみ砕いて、どう説明しようか」と苦心している人、と各自課題は様々でした。同じお茶大に通う仲間がどのような問題意識を持っているのか、その一端を垣間見ることができ、知的刺激を受けました。


全体の感想

内容が同じであっても語尾や口調を変えるだけで違う文章のように見えたり、副詞を一つ入れるだけで印象が柔らかくなったり、と文章の奥深さをしみじみと感じました。
 また、授業ではエッセイを書く以外にも、先生や受講生の間で情報・意見を交換する時間がたくさんありました。例えば、若者がマニュアル化しているといわれていることについてや、イギリスと日本の教育の違いについて、など様々な話題が出ました。ディスカッションを目的とした授業ではないため、より自然な雰囲気で話が弾みました。毎回新たな発見と学びがある、そんな楽しい授業でした



文責 / 学生記者 : 小高 麻里子



受講者の声

  • 半年間ありがとうございました。今期で一番好きな授業でした。自分の文章に対して自信を 失っていたので、ここで良い点悪い点を指摘して頂いて、自信を取り戻せました。文章を書 くことは楽しいと改めて思いました。
  • 今まで文章を書くときは何となく書いていたのですが、この授業を受け、丁寧にチェックして いくことが大切だと思いました。「わかりやすく書く」ということのむずかしさがよくわかりました。短い間でしたがお世話になりました。ありがとうございました。
  • 文章には自分のキャラクターがあらわれるものですが、どうしてこの文でこういう印象になる のか、といったことは自分ではわからないので、今回の授業はとても勉強になりました。ありがとうございます。