人間発達科学研究(GCOE後継)部門
2007年(平成19年)に、本学大学院人間文化創成科学研究科人間発達科学専攻から申請したグローバルCOEプログラム「格差センシティブな人間発達科学の創成」が採択されました。グローバルCOEプログラムは、世界的水準の研究基盤の下で世界をリードする創造的な人材育成を図るため、国際的に卓越した教育研究拠点の形成を重点的に支援し、国際競争力のある大学づくりを推進することを目的としておこなわれた文部科学省の事業です。人間発達科学専攻は、21世紀COEプログラム「誕生から死までの人間発達科学」に引き続き2011年度(平成23年度)まで5年間にわたって「社会的公正に敏感な」女性研究者を育成し、国際的にも通用する教育研究拠点を構築するために、さまざまな教育プログラムや研究プロジェクトを遂行してきました。
本部門では、その事業の一部を引き継ぎ、以下の4つを事業目的としています。
格差センシティブな女性の育成
グローバルCOE期間中の教育と研究の成果を学生に還元するための授業をおこないます。“社会的格差と人間発達”をテーマとし、前期科目として“子どもの発達にみる格差:地域・学校・家庭”(全15回)、後期科目として“ジェンダーをめぐる格差の形成と構造”(全15回)を学部学生を対象として実施し、人間の発達過程における社会的格差の問題に対してセンシティブな視点を有する女性の育成をめざします。
【前期科目:「子どもの発達にみる格差:地域・学校・家庭」の講義内容】
- ガイダンス(担当講師全員)
- 青少年有害情報対策から読み解く「子どもとメディア」-日韓米比較(猪股富美子)
- 地域格差と多文化・多言語環境に生きる子どもの言語教育(李美静)
- 子どもの言語発達における家庭と学校の影響要因(李美静)
- 養育環境の心理学的検討:環境心理学の視点から(松本聡子)
- 養育環境における格差と子ども発達(松本聡子)
- GCOE学校調査に見る中高生の格差(I):統計的に差を捉えるとはどういうことか(室橋弘人)
- GCOE学校調査に見る中高生の格差(II):個人差と学校間差を分離する(室橋弘人)
- GCOE学校調査に見る中高生の格差(III):QOLの時系列的な変化の差を捉える(室橋弘人)
- 進路選択と格差の形成(王傑)
- 子どもの健康とメディアリテラシー-「格差」に基づく事例研究(猪股富美子)
- モバイル社会における“ネットいじめ”の現状と教育的介入の課題(猪股富美子)
- 学部生の進路選択-キャリア指導の役割を考える(王傑)
- シンポジウム:格差と子どもの発達(前期授業の総括:菅原ますみ)
- シンポジウムと全体に関するディスカッション(担当講師全員)
【後期科目:「ジェンダーをめぐる格差の形成と構造」の講義内容】
- ガイダンス(担当講師全員)
- 職業生活と家庭生活:養育者をとりまく環境(松本聡子)
- 子育てをめぐるジェンダーの問題(菅原ますみ)
- ジェンダー・開発・エンパワーメント(瀧田修一)
- ジェンダーと経済学(瀧田修一)
- 途上国における女子教育(瀧田修一)
- 教育機会とジェンダー-中国教育の発展と現状から-(王傑)
- 日本の近代化とジェンダー(河田敦子)
- 近世女性の日記にみる人間観・ジェンダー観(河田敦子)
- 近代日本の権力構造とジェンダー-公と私の関係をめぐって-(河田敦子)
- 高齢期のジェンダー格差-日独比較-(原葉子)
- 高齢期扶養の変遷とジェンダー(原葉子)
- 年金制度の構築-20世紀初頭のドイツ-(原葉子)
- シンポジウム「ジェンダーをめぐる格差解消への国際的・国内的努力(の足跡)」(原ひろ子)
- シンポジウムと全体に関するディスカッション(担当講師全員)
シンポジウムの開催
グローバルCOE中の研究成果(社会的格差と人間発達との関連性に関する国内外の調査研究)について、シンポジウムを通じて広く社会に発信します。
<GCOE後継事業学内シンポジウム>
タイトル | : | 「ジェンダーをめぐる格差解消への国際的・国内的努力(の足跡)」(仮題) |
開催日時 | : | 平成25年1月16日(水)15:00〜16:30 ※7,8限授業時間 |
場所 | : | お茶の水女子大学共通講義棟2号館101号室 |
基調講演者 | : | 原ひろ子先生(城西国際大学 客員教授:お茶の水女子大学 名誉教授) |
その他登壇者 | : | 菅原ますみ、瀧田修一、河田敦子、原葉子(お茶の水女子大学) |
タイトル | : | 「教育格差の社会学」 |
開催日時 | : | 平成25年7月17日(水)15:00~16:30 |
場所 | : | お茶の水女子大学共通講義棟2号館101号室 |
基調講演者 | : | 耳塚寛明先生(お茶の水女子大学副学長・理事) |
その他登壇者 | : | 菅原ますみ、王傑(本学非常勤講師:東京大学総合教育研究センター特別研究員) |
タイトル | : | 「日本の社会保障制度改革とジェンダー平等」 |
開催日時 | : | 平成26年1月22日(水)15:00~16:30 |
場所 | : | お茶の水女子大学共通講義棟2号館102号室 |
基調講演者 | : | 平岡公一先生(お茶の水女子大学教授) |
その他登壇者 | : | 菅原ますみ、後期担当講師 |
タイトル | : | 「世界の子ども・子育て格差」 |
開催日時 | : | 平成26年7月23日(水)15:00~16:30 |
場所 | : | お茶の水女子大学共通講義棟2号館102号室 |
基調講演者 | : | 浜野 隆先生(お茶の水女子大学准教授) |
その他登壇者 | : | 菅原ますみ、前期担当講師 |
タイトル | : | ワークライフバランスの日米比較 |
開催日時 | : | 平成27年1月21日(水)15:00~16:30 |
場所 | : | お茶の水女子大学共通講義棟2号館102号室 |
基調講演者 | : | 永瀬 伸子先生(お茶の水女子大学教授) |
その他登壇者 | : | 菅原 ますみ、後期担当講師 |
人間発達と社会的格差との関連に関する研究の展開
21世紀COE「誕生から死までの人間発達科学」およびグローバルCOEプログラム「格差センシティブな人間発達科学の創成」での実績と成果をふまえて、引き続き人間発達と社会的格差との関連とその再生産構造の解明、解決のための道筋を探究します(図1)。
図1 GCOE後継部門の構成
第1の国際的格差領域では、グローバリゼーション下における国際的格差の構造に着目し、国際的格差構造の解明とその是正のための教育支援のあり方を発達の各ステージに即して解明します。第2の教育・社会的格差領域では、教育や職業を通して現れる格差のメカニズムを明らかにすることを課題としています。主に教育学的、社会学的視点から、学力格差の構造、トランジッション(移行期)における格差、老年期における格差等を扱います。第3の養育環境格差領域では、養育過程における家庭や保育・教育施設の中での環境と個人との時系列的な相互作用に着目し、人間の発達に沿ったケア・クォリティやQOL(クォリティオブライフ)に現れる格差について、主に発達心理学的視点からその解明をめざしています。