ひきこもり支援に関する研究部門

 平成22年の内閣府によるひきこもり実態調査によれば、わが国のひきこもりの子どもや若者は約70万人に上ります。また30歳代のひきこもりが長期化するケースが多くあり、問題が深刻化しています。厚生労働省も、平成21年に「ひきこもり対策推進事業」を創設し、ひきこもりに特化した第一次相談窓口としての機能を有する「ひきこもり地域支援センター」の整備を行っています。
 当センターでは、平成24年4月より、東京都の委託事業として、ひきこもりの状態にある方やその家族、関係者等に対する支援を行うため、「東京都ひきこもりサポートネット」(以下、ひきこもりサポートネットとする)の運営を開始しました。

 ひきこもりサポートネットは、主に次の2つを事業目的としています。

1. 相談事業

 ひきこもりの状態にある本人やその家族、友人等からの相談に応じるとともに、相談者の状況に応じて適切な相談・支援機関の紹介を行います。

 

(1)ホームページの運営

 インターネット上に、サポートネットのホームページ(http://www.hikikomori-tokyo.jp/)を開設し、メール相談の窓口とするとともに、事業内容や各相談機関の連絡先、ひきこもり状態にある本人やその家族に有益な情報等を掲載しています。

(2)相談業務

 ひきこもりの状態にあるご本人からの相談には、心理的援助を中心とした包括的な支援を行います。ご本人やご家族等に、適切な相談・支援機関を紹介し、ご本人の社会参加の一助となるよう、支援していきます。また、既に支援を行っている関係者の方々のコンサルテーションなどにも応じます。

相談業務は、二種類の方法で行われています。全ての相談は、臨床心理士などの専門資格の他、この相談業務に特化した研修を修めた相談員が対応しています。

ⅰ メール相談
 パソコン及び携帯電話用ホームページ上で、常時相談を受け付けています。
ⅱ 電話相談
 原則、週5日(月~金、但し祝日は除く)・1日7時間(午前10~午後17時)の電話相談窓口を設けています。

2. 調査研究

 現代社会におけるひきこもりの問題を、国内外の文献資料や調査データーなどから、実証的に検討し、支援システムの構築と支援の質の向上を図ります。
 また、ひきこもりに関する専門相談が可能な人材を育成することを重視しており、初心者から実務家までの幅広く対応できる研修プログラムの構築を目指したアクションリサーチを行います。

(1)ひきこもりに関する文献調査

ひきこもりに関する国内外の文献を収集し、歴史的、社会的、心理的背景を探っていきます。また、援助方法についても、広く情報を収集し、ひきこもり本人や家族への援助に活用しています。

(2)相談事例の分析によるひきこもりに至る要因等の検討

 サポートネットに寄せられた相談の蓄積をもとに、ひきこもりの要因、相談内容の動向、相談の経過などを検討します。

(3)ひきこもり相談に係る専門相談員の人材育成

 ひきこもり相談の専門家の育成のために、臨床心理士有資格者及び心理臨床家指定大学院に所属する学生や支援機関等の職員等を対象とした研修を実施します。

(4)関係機関とのネットワーク形成における課題の分析とシンポジウムの開催

 ひきこもりの状況にあるご本人や家族が、公的機関、東京都若者社会参加応援事業実施団体等の支援を受けることができるよう、他機関との効果的・具体的な連携方法を検討します。社会貢献として、相談・支援機関を対象にしたシンポジウムを開催します。